「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「これはどのようにやればよいのですか」
弊社が研修を担当させていただく際には、テーマにかかわらず講義を行った後に必ず演習に取り組んでいただいています。その際、私としては演習の説明を丁寧に行ったつもりであっても、実際に演習が始まると既に説明をしたことであっても受講者から再度質問されたり、受講者によっては説明の中で指示したことと違うことを始めてしまったりすることがあります。そのようなときに受講者から言われるのが冒頭の質問です。私としては懇切丁寧に説明をしたつもりなのですが、このようなことがあると「伝えることの難しさ」を改めて感じることになるのです。
そうした中、先日今井むつみ氏の「『何回説明しても伝わらない』」はなぜ起こるのか?」という本を読む機会があったのですが、その中では「スキーマ」が取り上げられていました。スキーマとは、認知行動療法における特定の状況や事柄に対する個々人の認知の枠組みのことを言います。スキーマは過去の経験や育った環境などから形成されるものであり、自身の物事への捉え方や対人関係などの行動のパーターンに大きな影響を与えています。今井氏は本の中でスキーマを「当たり前」という言葉で説明していました。自分にとっての当たり前ということです。
これに関して、私たちが他者とコミュニケーションをとる際に、ある事柄について「自分にとっては当たり前のこと」として話をしてしまうと、相手にはきちんと伝わらなかったり、場合によっては誤解をされてしまったりということがありえます。これらのことから考えると、先述のとおりの私が担当する研修においても、幾人もいる受講者の中にこちらの意図が簡単には伝わらない人がいるということは、極々当たり前のことと言えるわけです。
では、このスキーマについて私たちが対人関係においてうまく活用していくためにはどうすればいいのでしょうか。そのためには、まずは自分のスキーマが具体的にどこにあるのかをきちんと認知することから始める必要があると思います。具体的には、自分自身を振り返って再認知するとともに、他者からのフィードバックを積極的に受け入れたり、ときには診断テストなどを受けてみたりするということも、その助けとなるのではないかと考えます。
同時に、他者とコミュニケーションをとる際には「うまく伝わる」ことを前提にするのではなく、そもそも簡単に伝わるものではないということを踏まえておくことが必要です。だからこそ相手にきちんと伝わるようにするためには、繰り返し伝えたり、様々な手段を駆使するとともに、思いがけない他者からの質問に対してはいらいらしたり慌てることなく、根気強く説明をしていくことが大切になります。
このようにスキーマをうまく使いこなすことができれば、他者とのコミュニケーションにおける有効な手段とすることができると思います。私自身、冒頭のような場面でいかに使っていくかを改めて考えているところです。