「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「事あるごとに、『て言うか、〇〇だよね』と言われてしまうんです」
これは、先日弊社が担当させていただいたコミュニケーション研修の際に、20代の受講者Aさんから相談をされたときの言葉です。
具体的に話を聴いてみたところ、AさんがB上司に業務の報告をすると、毎回冒頭のように言われてしまうのだそうです。Aさんとしては事実関係とそれについての考えを整理してきちんと報告しているつもりなので、「て言うか・・・」と連発されてしまうと自分を否定されているような気持になってしまい、話を続ける気持ちがすっかり失せてしまうとのことです。
この「て言うか・・・」は、元々は「と、言うか・・・」や「と言うよりは・・・」と表現するところを縮めた言い方だと考えられますが、相手の発言や提案を否定する意味合いを持っています。言っている本人は「そんなつもりはない…」と考えているのかもしれませんが、これを繰り返されると言われている方としては否定され続けているように感じられてしまいます。同時に話を続ける気持ちがだんだんと失せてしまい、やがては自信すら喪失してしまうことになりかねないことが心配されます。
これに関して、最近「マイクロアグレッション」という言葉を耳にするようになりました。マイクロアグレッションとは、「小さい」を意味する「micro(マイクロ)」と「他者への攻撃」を意味する「aggression(アグレッション)」を組み合わせた言葉で、直訳すると「小さな攻撃」と言えます。個人と個人の間のミクロな関係に注目した概念なのですが、B上司はAさんに対してまさにマイクロアグレッションをしていたのかもしれません。
このマイクロアグレッションの背景にあるのが、以前本ブログでも取り上げたことがある「アンコンシャスバイアス」(無意識の思い込みや偏見)です。これは無意識の思い込みや偏見によって、本人にはそのつもりはないけれども他者を傷つけてしまうということです。そのように考えると、冒頭のB上司からAさんへの発言は「アンコンシャスバイアスに基づいたマイクロアグレッション」(無意識の思い込み・偏見による小さな攻撃)に当たると言えるのかもしれません。たとえばBさんは自分よりも上の立場の人や顧客の発言に対しては「て言うか、〇〇だよね」と言うことはないはずです。
それでは相手の発言と自身の考えが異なる場合に、上記のような状況にならないようにするためには、どのように表現したらよいのでしょうか。
それには、相手の意見をいったん最後まで聴いたのちに、「Aさんは○○のように考えたんだね。私の考えはAさんとは少し異なっていて、△△のように考えるけれど・・・」などと言えば、相手が受ける印象は冒頭の例のような頭から否定されたようなものとは全く違ってくるのではないでしょうか。
B上司のように「て言うか、〇〇だよね」を連発している人は、それが自分の口癖なのだと考えるだけでなく、その根底には「無意識による小さな攻撃」があるのかもしれないということを認識することが大切です。
このブログでもこれまで何度も書いてきているように、人と人のコミュニケーションはとても大切なものですが、それゆえに難しいものでもあります。自身の言葉が相手への小さな攻撃になっていないかどうか、一度自身を振り返ってみてはいかがでしょうか。