「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「研修効果はもちろんあるほうが良いけれど、研修を1回やったからって、そんなにすぐ効果は出ないでしょう」
これは弊社が研修を担当させていただいている、ある企業の経営者A氏から言われた言葉です。
一般的には、経営者や研修部門の担当者も研修を行ったらすぐに効果が出ることを期待する人が多いです。研修の前と後で社員にどれくらいの変化があったか、どれくらい成長し、それが会社の売り上げや利益にどれくらい影響するのか、という点にのみ関心を持つ人が圧倒的に多い中で、この経営者はそういう意味では特別な人と言えるのかもしれません。
研修の成果はどれくらいあるのか、これは古くて新しい議論です。私が人材育成の仕事を始めた32年前には既に議論されていましたし、それ以降もずっと繰り返し議論されてきているものの、その答えはいまだに明確にはなっていないように思います。
しかしながら、できる限り研修の成果が発揮されるように発注者側(研修担当者)と研修を担う講師で議論を重ね、事前課題や事後課題を行ったりと、手を変え品を変え様々な工夫を重ねながら現在に至っているのです。
一方、私がこれまでに担当させていただいた企業の中には、たった一回の研修で社員が「変わらなかった」と言って、導入したばかりの研修を単年度で止めてしまったところもありました。一度の研修で「社員が見違えるように変わる」ことを期待したくなるという気持ちはわからなくはないのですが、特定の知識やテクニックなどを伝授するというようなケースを除けば、研修にはそこまでの即効性はないのも現実なのです。もし劇的な変化があったという場合には、その研修の中身はまさに劇薬のようなものかもしれませんし、そこで得られた効果も長続きが期待できるようなものではないのではないかと想像します。
多くの研修では、受講者自身が様々な気づきを得ること、自らが成長するきっかけとなることなどを目的に、そのためのものの見方や考え方、取り組み方などを学ぶことが一般的です。
まず、講師の講義や演習に複数人で取り組む中での受講者同士の意見交換や議論を通じ、異なる視点や経験に触れることによって、たくさんの気づきを得ることができるのです。そして、互いに触発したりされたりすることで学びあう場となり、それらを通じて自身を成長させるきっかけとなるのです。
冒頭でご紹介したA氏は、「研修は繰り返しやらなければ意味がない」とおっしゃっています。「1日や2日話を聞いたり、演習を行ったりするだけではだめで、やり続けることだ。コストはかかるけれど、社員を育てないで会社の成長があるわけがない。だから研修はやる。そうすることが社員へのメッセージになる。うちは教育を大切にし、やり続ける会社だ。それを受け入れられないのであれば、辞めてもらって構わない」とまでおっしゃっています。
これだけのことを社員に言い続けるA氏のような覚悟を持っている方がどれくらいいらっしゃるのかはわかりませんが、研修はやり続けることが大切だという言葉を担当させていただく者として改めてしっかり受け止めさせていただくとともに、そうした企業の研修を担当させていただく機会に恵まれることに感謝し、誠心誠意務めたいと考えています。