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まだまだ

 近い人が急に亡くなると、「いつ死ぬのか分からないから好きなことをしなくちゃ損だ」、という気になる。己を取り立てて欲の深いほうだとは思わないが、それでもあれこれしたいことが浮かんでくる。一つ一つ数え上げて箇条書きにしてみたら、面白いリストが出来上がるだろう。脳内メーカーなどと何の根拠もないことよりも、ずっと今の自分の姿が浮かんでくるようで、面白くもあり、恐ろしくもある。ここでそれを披露するのはあまりに露悪的すぎる。ただ「甘くておいしいものが思いっ切り食べたい」という小さな願いを記すだけにしておく。
 と言うのも、やっぱり私は甘い物が好きなんだ、と昨日改めて思ったからだ。
 
 塾の掃除をしていたら、チャイムが鳴って私を呼ぶ声がする。聞いたことのある声だな、と思いながら二階から玄関を覗いたら、私立中学を目指す塾生の母親の姿があった。「ああ、こんにちは」と私が声をかけながら下りていくと、「先生、もう娘のことで毎日やせる思いをしてるんですけど、私は甘いものが好きなので、これだけはやめられません。先生にも食べていただこうと思って買ってきました」と言って、包装された箱を私に渡した。「はあ、どうもすみません。ありがとうございます」と突然で何のことやらよく分からないながらも、受け取った。その塾生は最近伸び悩みが目立って、私も心配している生徒だが、「ここまで来たら、細かいことなど気にせず、絶対に受かるんだという強い気持ちが大切だ」とことあるごとに励ましている。お母さんの心労は手に取るように分かるが、「あまり過敏にならず、合格すればどこでもいいんだくらいの余裕を持っていてください」と先日の面談のときにアドバイスしておいた。それが功を奏したのか、昨日は大分明るい顔をされていたので、これなら生徒にもいい影響を与えるんじゃないかと、少しほっとした。
 何かもらい物をするとうれしい。お母さんが帰られると早速包みを開けてみた。中から出てきたのは、

 

 「ふるーつ大福」と書いてある。包み紙をはがしてみても普通の大福だ。説明書きが同封されていた。
   ふわふわなお餅の中に、
   いちご、ばなな、栗、つぶあん、
   ホイップクリームを入れてみました。
   和菓子のような洋菓子のような、
   とても不思議な大福です。
いちご大福というものはよく見かけるが、これはいちごだけでは飽き足らず、ばななと栗まで入っている。面白い。包丁で半分にして中の様子を見てみた。


 確かに所狭しと色んなものが入っている。おいしそうだ。どんな味がするんだろう・・・。食べてみた、説明書きの通りだ。外はまんじゅう、中はケーキというように、和と洋が見事なコラボレーションを果たしている。「よーく冷やして召し上がれ」とも書いてあるように、保冷剤で冷たいままになっているため、口当たりが非常にいい。おいしい!!
 この「ふるーつ大福」は岐阜にある養老軒という和菓子屋が1993年に開発・商品化したものらしいが、なかなかのアイデアである。栗が中に入っているだけあって、11月中旬から5月までの期間限定商品となっている。
 栗といえば、一昨日に食べたこの羊羹もおいしかった。


 上等な栗きんとんを羊羹で包み込んだもの、と言えばいいのだろうか、上品な味わいがあって、思わず1本丸ごと食べてしまいそうになった。

 こんなにおいしいものが世の中にはたくさんある。まだまだ簡単には死ねないぞ、という思いを新たにした。

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