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北京オリンピック

 北京オリンピックが開幕した。チベット問題、四川大地震、食の安全、大気汚染・・などなど様々な問題が次々と起こって、果たして無事開催にこぎつけることができるかどうか、何度も心配になった。これだけ懸念材料が出てくると、オリンピックに対する心の高揚も今までの大会より少ないように思えてしまうが、それでも一旦開幕してしまえば、後は何事もなく競技が進行するうちに、いつものようににわかナショナリズムが発揚してきて、日本人選手に熱い声援を送ることになるだろう。
 開会式は、さすがに200を超える国と地域が参加しただけあって、入場行進がいつまでも終わらないのには驚いた。塾が終わって家に帰ってもまだ続いていたから、会場の雰囲気は味わうことができた。さすがに中国が国家の威信をかけた大イベントだけあって、凝った演出には目を見張るものがあった。それを見ながら、最終日まで災いが起こらず、無事に進行してくれればいいが、と祈りにも似た気持ちを持った人はきっと多かったことだろう。全力を尽くす選手に声援を送るよりも、そうした心配が先にたってしまうのは「平和の祭典」という冠に甚だ似つかわしくなく、残念なことではあるが・・。


 「中国はここ一ヶ月で急速に整形したようなものです」と中国の事情に詳しいジャーナリストがTVで話すのを聞いたが、オリンピックに向けて今の中国が「よそいき」の顔をしているのは明らかだろう。外国からメディアが多数入り込み、中国の現状を世界中に発信しようとするから、表面を取り繕おうとするのはごく自然な動きだと思う。しかし、一時的な付け焼き刃ではすぐに馬脚を現してしまいそうだ。それは、岡崎大五著「日本は世界で第何位?」(新潮新書)の中で取り上げられている各種ランキングで中国が上位にランクされている項目を見ていくと自ずと見えてくるように思う。この本は表題どおり、各分野の統計を集めて現代日本の姿を浮き彫りにしようという目論見でかかれたものだが、中国のランキングに注目していくと、中国の実情も見えてきてなかなか興味深い。
 例えば、「狂犬病死亡者数の多い国」では、中国はインド・パキスタンに次ぐ第3位で年間2009人が狂犬病で死んでいるという。また「交通事故死亡者の多い国」では、年間109381人が亡くなり世界で第1位となっている(日本は6871人で第10位)。もちろん国土が広く、人口が多い国なので単純に比べるのは無理があると思うが、それにしても日本と同じ感覚で道を歩いていると思わぬ危険が待っている国だと言えるかもしれない。さらに、悪名高い大気汚染に関しても(2000年のデータではあるが)、北京はアジア主要都市の中でワースト1であるため、どれだけオリンピック期間中の空気はきれいだと言われたとしても、にわかには信じられないし、オリンピックが終われば元通りになってしまうのだろうと思えば、悲しくなってしまう。(TVは、現地調査までしてかなりきれいになったと言っているが・・)
 軍事費は断トツのアメリカに次いで2位であり、死刑執行数は2005年で1000件以上行われたと見られている、という統計を読んでしまうと、軍事機密が優先され、国民の人権が十分に保障された国だとは言えないような気がする。オリンピック期間中には、中国国内でアクセスできるインターネットのサイトは制限されているという報道もあったから、まだまだ自由で開かれた国であるとは言えないようだ。
 このように、中国は改善すべき課題を多く持った国だとは言えようが、日本人の旅行先として中国は第2位の333万人が訪れる国であり、世界の人々が年間4176万人も訪れる国であるから、このオリンピックを絶好のチャンスとして、もっともっと自由で開かれた国となって欲しいと思うし、いつ誰が訪れても安全な国家になることが急務であるとも思う。

 開会式の熱狂が競技期間中ずっと続き、選手一人一人が持てる力を存分に発揮できるようなオリンピックとなって欲しい。私も微力ながら、できる限り声援を送りたいと思っている。
 


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