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ビアガーデン

 「ビアガーデン行こうぜ!!」
東京からの新幹線の車中でナイスな考えが浮かんだ。
「もう十分飲んだんじゃないの?」
車中でも缶を2本空けてしまったのだから妻の言葉も当然だ。
「だけどさ、こんなチャンスなかなかないよ。今日行かなきゃ後悔するよ」
毎年夏になるとビアガーデンに行きたくてたまらなくなる。が、私の住む市内にはそんな洒落たところは一軒もなく、どうしたって名古屋まで出かけなくちゃならない。いくら行きたいと言っても、わざわざ電車に乗って出かけ、帰りもまた電車で戻って来るというのはいかにも面倒だ。その手間を考えてしまうと、次第に意欲が萎んでいき、結局は行かずに終わってしまう・・、というのをここ何年も繰り返してきた。
 そんな私にとってはまさに千載一遇のチャンスだ。これを逃したら次はいつになるか分かったものじゃない。妻に頼んで検索してもらったら、栄の中日ビルの屋上にビアガーデンがあるのを見つけてくれた。
「じゃあ、行くぞ!!」
新幹線を降りたら、わき目も振らずに中日ビルに向かった。

 何十年かぶりにやっと念願のビアガーデンに着いたものの、なんだか料金システムが昔とは違っていた。
「大人3500円」
と書いてある。係の人に聞いたら、3500円で飲み放題・食べ放題なのだそうだ。ジョッキはすべて中ジョッキで、かつて憧れたピッチャーなどというものはないらいしい。ちょっと残念・・。
 しかし、とっぷり暮れた名古屋の街をビルの屋上から眺めるのは気持ちがいい。生暖かくても風も吹いてたし・・。

 

 食べ放題、飲み放題だと言われても、私にはもう余力はほとんど残っていなかった。それなら来るな、と言われそうだが、ただただこの場にいることを長い間恋い焦がれて来たのだから、望みの叶った私としては飲み食いなどしなくても十分だった。

 

 しかし、こんなきらびやかなネオンサインを目の前にして大人しくしていられるほど人間ができている私ではない。ささっと歩いていって1杯目を飲み、お代わり!を頼んだことまでは覚えているのだが・・。
 
 まあ、そんな心地よい酔いも一瞬にして覚めてしまう出来事が起こった。私の席の横を歩いていた若い女の子が突然崩れ落ちるように倒れたのだった。
「あっ!!」
と私が叫んだのに呼応して、妻が駆け寄って抱きかかえたところ、すぐに意識を取り戻したように見えたが、やおら起き上がって吐き始めた。あっけにとられて見守っていたら、駆けつけた店員さんがどこかに連れていった・・。短い間のことだったろうが、今でもコマ送りのように思いだせるのだから、かなり衝撃的な出来事であった。

 そんなハプニングも含めて、実に楽しい夜のひと時だった。



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