毎日いろんなことで頭を悩ましながらも、明日のために頑張ろうと自分を励ましています。
疲れるけど、頑張ろう!
爪
来月早々の退院に向けて、少しずつ体をならそうと、父は病院内の廊下を散歩するようになった。しかし、スリッパ履きでは歩きにくいのか、それとも2か月近くまともに歩いたことがなかったせいなのか、足指にマメができ、それが潰れて痛いと言った。靴下を脱いで見せてくれたが、確かに左の人差し指の右側にマメが潰れたような跡があって血が滲んでいた。
「薬塗っといたら」
と、肌荒れ用の軟膏を渡したら、大人しく塗っていた。その様子を横で見ていたら、親指の爪がえらく伸びてるのに気付いた。
「爪が指に当たって傷つけたんじゃないの?」
「俺もそうかと思った・・」
「じゃ、詰め切ったげるよ」
「ええわ、そんなもん」
「何言っとるの、切らんといかんよ」
そう言って、引き出しの中にある爪切りを取りだした。
「じゃ、切るよ」
と無理やり言ったものの、父の親指の爪は分厚くて、いかにも固そうだ。長年踏ん張り続けた職人の爪だ。先日コンビニで買ってきた爪切りでは刃の間が狭く、こんなにぶ厚い爪を挟むことは難しい。
「爪が厚いからな」
と、左足を投げ出して新聞を読んでいた父が、すまなさそうに言う。
「こんな安もんの爪切りじゃ役に立たんわ・・」
そう言いながらも何度かに分けて少しずつ切っていけばうまく行きそうだ、と分かった私は深爪にならないよう注意しながら、ゆっくり切り始めた。
今まで父の爪など切ったことがなかった。父どころか、自分以外の人の爪を切ったのは初めてだった。果たしてどこまで切っていいものやら分からず、半ば当てずっぽうで切って行ったが、父は文句一言言わず、じっと新聞を読んでいた。痛くなかっただろうか・・。親指から小指まで一応左足の爪は全部切った。これなら歩いても爪で皮膚を傷つけることはないだろうと安堵したら、右足の爪も切っておいた方がいいと思いついた。
「右も切るわ」
「まあええわ。右は切らんでも大丈夫」
何が大丈夫なのかよく分からなかったが、こうなると父も頑固だ。押し問答を繰り返しても仕方ないので、
「じゃあ、右はまた今度・・」
と私が折れることにした。まあ、左足の爪を大人なしく切らせてくれただけでも満足・・。
爪くらい自分で切って欲しいとは思うものの、私や妻がサポートしなければならないことが少しずつ増えて行くのも覚悟しなければならないだろう。父が家に戻ってきた日から新たな労苦が始まるのかもしれないが、そんなもの屁とも思わぬ度胸も忘れないようにしなければならない。
負けられないものね。
「薬塗っといたら」
と、肌荒れ用の軟膏を渡したら、大人しく塗っていた。その様子を横で見ていたら、親指の爪がえらく伸びてるのに気付いた。
「爪が指に当たって傷つけたんじゃないの?」
「俺もそうかと思った・・」
「じゃ、詰め切ったげるよ」
「ええわ、そんなもん」
「何言っとるの、切らんといかんよ」
そう言って、引き出しの中にある爪切りを取りだした。
「じゃ、切るよ」
と無理やり言ったものの、父の親指の爪は分厚くて、いかにも固そうだ。長年踏ん張り続けた職人の爪だ。先日コンビニで買ってきた爪切りでは刃の間が狭く、こんなにぶ厚い爪を挟むことは難しい。
「爪が厚いからな」
と、左足を投げ出して新聞を読んでいた父が、すまなさそうに言う。
「こんな安もんの爪切りじゃ役に立たんわ・・」
そう言いながらも何度かに分けて少しずつ切っていけばうまく行きそうだ、と分かった私は深爪にならないよう注意しながら、ゆっくり切り始めた。
今まで父の爪など切ったことがなかった。父どころか、自分以外の人の爪を切ったのは初めてだった。果たしてどこまで切っていいものやら分からず、半ば当てずっぽうで切って行ったが、父は文句一言言わず、じっと新聞を読んでいた。痛くなかっただろうか・・。親指から小指まで一応左足の爪は全部切った。これなら歩いても爪で皮膚を傷つけることはないだろうと安堵したら、右足の爪も切っておいた方がいいと思いついた。
「右も切るわ」
「まあええわ。右は切らんでも大丈夫」
何が大丈夫なのかよく分からなかったが、こうなると父も頑固だ。押し問答を繰り返しても仕方ないので、
「じゃあ、右はまた今度・・」
と私が折れることにした。まあ、左足の爪を大人なしく切らせてくれただけでも満足・・。
爪くらい自分で切って欲しいとは思うものの、私や妻がサポートしなければならないことが少しずつ増えて行くのも覚悟しなければならないだろう。父が家に戻ってきた日から新たな労苦が始まるのかもしれないが、そんなもの屁とも思わぬ度胸も忘れないようにしなければならない。
負けられないものね。
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