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美田

 チュニジアで23年間続いたベンアリ独裁政権が崩壊したのを皮きりに、エジプトを約30年にわたって統治してきたムバラク大統領が辞任し、さらには41年間もリビアに君臨してきたカダフィ大佐も政権の座から追われようとしている。この一連の動乱に大きな役割を果たしたのが、Facebook であり、Twitter であると言われているが、どちらとも縁のない私では、その影響力の大きさを実感するのは難しい。ただ、リアルタイムで情報のやり取りができるツールが世界を動かす原動力になりうるということはきちんと理解し、決してデマゴーグのために使われることがないよう、注意を怠らないようにすることが大切だとは思っている。
 
 独裁政権が崩壊し、民主化への道を模索するのは時代の趨勢なのかもしれないが、次のような報道に接すると、言葉を失ってしまう・。 

 『スイス・メディアによるとスイス政府は11日、エジプト大統領を辞任したムバラク氏とその家族のスイス国内の銀行口座を凍結した。金額などは明らかになっていない。
 エジプトでは、ムバラク氏と家族が保有する資産は700億ドル(約5兆8400億円)に上るとの推測があり、国外の秘密口座に大半を隠し持っているとされる。
 スイス政府はチュニジアから国外逃亡したベンアリ前大統領とその家族の口座も凍結。隠し資産を調査している。
 スイスの法律には、銀行の顧客情報の秘密保持が厳しく規定されているため、各国要人や経済界の大物などが秘密資金をスイスの銀行に保有しているとされる』(2011/2/12 共同)

 独裁政権が崩壊すると必ず明らかになるのが、彼らの法外な蓄財である。かつてはフィリピンのマルコス大統領の巨万の富が大きく報道されたが、独裁政権が長期続くと、どうしても各所に淀みが生じ、醜怪さを晒さざるを得なくなるのだろう。国民が日々の生活の糧を得るのに汲々としている時にせっせと蓄財に励んでいれば、国民が離反するのも当然だ。独裁者はその歪みをどう隠すかに心を砕いた挙句、情報を統制し、強権で抑え込もうとするのが常であるようだ。報道によれば、上記の三人も同じ轍を踏んできたようだ・・。
 しかし、そんな恐怖政治を続けていけば、独裁者が信じられる者はごくわずかな取り巻きと家族だけになってしまい、裸の王様状態になってしまう。それこそが現在のカダフィ大佐の置かれた状況であろうが、その末路は歴史を辿れば一目瞭然だ。そんなもの少しでも歴史を学んだ者なら分かりそうなものだが、現代でもその愚が相も変わらず繰り返されるのは不思議で仕方がない。それだけ権力の座は甘美なのだろう・・。

『児孫のために美田を買わず』
これは、西郷隆盛の言葉で、『子孫のために財産を残してもためにならないから、財産を殖やすようなことはしない』という意味である。今更ながら、この言葉をベンアリ、ムバラク、カダフィに送りたいと思う。まあ、自分たちのやってきたことに後悔はないだろうし、日本語も読めないだろうから、まるで意味のないことかもしれないが・・。


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