じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

恩田陸「ノスタルジア」

2025-02-18 15:54:43 | Weblog

★ 京都府公立高校の前期試験が終わった。難易度は例年並みということだが、塾生たちは力を出し切れたであろうか。合格発表は25日、火曜日。そして、3月7日の中期入試で今年の戦いは終わる。

★ この時期何が忙しいかといえば、高校入試、中学1・2年生の学年末テスト、確定申告がドッと押し寄せることだ。これに新年度生募集のチラシづくり。どれも手が抜けない。

★ この中で一番生産性がないのが確定申告だ。面倒だが仕方がない。1年間の所得税、市府民税、個人事業税、健康保険料がこれで決まる。高校無償化、給食無償化など耳障りの良い政策が目白押し。その一方で、税・社会保険料の負担感はずっしりと重い。

★ 昨夜は映画「茲山魚譜 チャサンオボ」(2021年)を観た。何気なく観始めたが、なかなか良かった。19世紀初頭の韓国が舞台。身分ある家柄で、学識に富んだ男性チョン・ヤクチョンが、キリスト教を信仰したがために官職を剥奪され、遠島に流される。当時の韓国は儒教、中でも朱子学が重んじられていた。

★ 流浪の地でも男性の好奇心は衰えず、漁師たちから魚の生態のことを聞き、本を書こうとしていた。そこで一人の青年と出会う。彼の身分は卑しく漁労で生計を得ていたが、向学心豊かで読書を喜びとしていた。特に魚や海の生物についての知識は豊富であった。

★ チョンは青年に漢籍を教え、青年はチョンに海の生き物のことを教えた。月日を経て、二人の間に師弟の関係そして友情が育まれていった。

★ 学問を学んだ青年は、立身出世を志し、師チョンのもとを離れる。しかし、立身栄達の中で彼が目にしたものは、清廉な学問の教えとは縁遠い、官僚たちの腐敗とそのため重税に悩む庶民の姿であった。あまりの理不尽にチョンは上司に暴行をふるい、出世の道を絶たれる。

★ 一方、島ではチョンが赦免されることなく、筆を握りながら生涯を終えていた。師弟の関係、そして師弟を超えた友情に感動した。

★ 日本はパッチワークを繰り返しながら社会主義化が進んでいる。重税に見合うだけの安心感があれば良いのだが、頑張ったものが損をするようで不公平感が漂う。背景には超少子高齢化。ジリ貧化する経済。1970年代、80年代の高揚期を見てきただけに、寂しい気分になってくる。

★ 「良い時代に生きたなぁ」と思えばよいことなのだが。

★ 恩田陸さんの「図書室の海」(新潮文庫)から「ノスタルジア」を読んだ。幻想的な作品だった。「懐かしさ、それだけが僕たちの短い人生の証拠だ」「僕たちは懐かしさについて語り続けなければならない。それだけが僕たちの存在を証明する手がかりなのだから」という文章に引き付けられる。

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