コロナ危機と全力でたたかいながら、コロナ危機克服後の人間社会のあり方に関する発言が続いています。「毎日」紙12日付には、経済学者で、2006年ノーベル平和賞を受賞したバングラディシュ生まれのムハマド・ユヌス氏(79)の発言が「シリーズ 疫病と人間」欄に掲載されました。大胆な発言であり、示唆に富んだ内容に触発されています。
以下、一部紹介させていただきます。
「新型コロナウイルスの大流行が世界に与える打撃を考えると、たまらない気持ちになる。しかし、この危機は比類ないチャンスも与えてくれる。まさにいま、全世界に重要な問いが提起されている。どうやって経済を回復するかではない。この世界を、新型コロナに襲われる以前に戻すのか、それとも、新しく設計し直すのか、という問いだ。決定は完全に私たちに任されている」
「新型コロナが登場する以前の世界は、言うまでもないが良いものではなかった。気候変動が引き起す大災害によって、全人類がお脅かされるまでの残り時間を数えていた。人口知能(AI)によって膨大な雇用が失われ、富の集中は爆発的レベルに達していた」
「新型コロナは突然、世界の分脈と計算式を変え、存在しなかった大胆な可能性の扉を開いた。私たちはまっさらな白紙の状態に戻り、どんな方向へも行ける。信じられないはど自由に、未来を選択できるのだ」
~(中略)~
こうした立場から、経済学者として、次ぎのように述べています。
「経済学では、『経済的人間』という考え方がある。これは、人間は自己の利益を最大化するために行動するという考え方だ。経済的人間は集団の利益などを考慮しないが、現実の人間は自分のコミュ二ティーや仲間など集団の利益を考える」
「人間は本来、思いやりがあるにもかかわらず、経済理論によってわがままな存在にゆがめられている。経済理論がすべてのビジネスのゴールを利潤の最大化だと設定し、どれだけ富を蓄積したかで成功の度合いを判断するからだ。この圧力の下で、人は強欲な存在に変貌するしか選択肢がない」
「強欲な人を封じ込めたいのなら、問題の根を探らなくてはいけない。教育を含むすべての制度が、私たちを強欲になるように仕向ける理論に基づいてできている。若者が学校を出るころには経済理論を究極の真実と受け入れるようになり、人間は社会問題を気にする存在だと思うこともなくなっている」
~(中略)~
【経済理論は、本当の人間に基づいて最構築をー世界は変わる】
「経済理論は『経済的人間』ではなく、本当の人間に基づいて再構築されるべきだ。そうすれば世界は変わる。人間が経済理論を作るのだ。私たちは理論の産物であり続けることをやめ、新たな理論を作る役割を取り戻さなくてはならない」
~以下(略)~