月々に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月 (詠み人知らず)
この歌は以前にも書いたかもしれません、ただ覚えやすい歌なので名月の時にふと浮かんできます。
旧暦の8月といえば昔風に言うと秋の真ん中ですが、今の季節感では初秋ですね。確かに初秋のころは一年のうちで一番空気が澄み渡り遠くにあるものがきれいに見える時期です。写真を撮るようになってからこのことに気づきました。広い範囲の風景を撮るとこの時期に取ったものが一番遠くまできれいに映っているのです。月は遠くにあるものですからこの時期には鮮明に見えるものです。
先日あるテレビ番組を見ていると松尾芭蕉は奥の細道で東北地方にいたとき中秋の名月を見るのに月山の上で見たとありました。きっと旅の日程を合わせて月山に登ったのでしょう。私も今年の中秋の名月はどこで眺めようかと悩んでいましたが、夕方家に帰ってから海にしようと決めました。海岸で月の名所といえば「高知の桂浜」が浮かびましたがどこでもドアーでもない限り今すぐというわけにはゆきません。私が10分ほどで行ける砂浜としては片添ガ浜かなと考え出かけました。15日の満月は出るのが意外に早いのです。片添ガ浜へ着いた時には満月は海の向こうにぽっかりと浮かんでいました。残念ながら月の出を眺めることはできませんでした。初日の出を拝む行為もそうですが、暗いうちから出かけて行っていつ出るかいつ出るかと待ち焦がれるのがいいのです。名月も天中に上ったときにはもうただの月に変わりがありませんが山の端から昇って来る時の月が殊更いいのではないでしょうか。昔、京都のお公家さんたちは東山から出てくる月を待っていたのでしょうが、東山からのぞく月は時間的に少し遅いのです。そこがまた良かったのでしょうね。水平線から昇る月は時間が早くてまだ十分暮れていません。そんなこともあって満月よりも16夜のほうが昇るのが遅くて何かと都合がいいですよね。
そんなことはどうでもよいのですが、片添ガ浜で月を眺めたのは初めてです。この島に70年以上住んでいてもまだまだ初めてということはあるものですね。
リゾートホテルのあるビーチで月をみる
砂浜・歩道には誰もいません。名月を広い舞台で独り占め
ホテルの部屋に明かりがついていますが、月を愛でている人はいないようです。
月の道 おいでと誘っているような
ちょっと寝てみたかったです。どんな夢を見るでしょう。
リゾートホテルの玄関側
ホテルの中から多くの若い人たちの楽しげな声が響いていました。大型観光バスも何台も止まっていてコロナ何するものぞの様子に嬉しくもあり心配でもありました。
こんな素敵なロケーションの中でわたし独りぼっちはもったいないですね。だれか誘えばよかった。