トリ

野菜などを作ることは、
他の生き物との知恵比べだ。
この小さな畑でも、
ニセモノのトリが勢いよく
風に飛び、
ホンモノの鳥たちの姿は
あまり見かけなかった。　　Y

ハナモモ

この写真ではまだ咲ききっていないが、
手前にあるのはハナモモの木。
南信州の清内路辺りはハナモモの里として
知られているが、そちらはほぼ濃いピンク
一色のもの。
それに比して、この辺りにあるのは
通称源平桃と呼ばれる、一本の木に白と
ピンクが入り混じった枝垂れ種だ。
実家にも三本ある。誰が植えたのか聞いて
みると、ネズミの仕業だという。えっ?!
あちこちにこの花が見られる頃は、
この山里もまさに桃源郷となる。
風化して色を失った防火用水の標識が
昼間の月のようにその奥に立っていた。Y

影のぶらんこ

　垂井の町を歩いた。
　小さな公園を見つけたけれども・・・
　誰もいなかった。
　明るい時間が取り残されて
　ウルトラマンのお面が
　置き忘れられていた・・　　　　　m

薫風

端午の節句は過ぎたが、
まだこいのぼりの群れが
元気に泳いでいた。
桜の若葉も風にゆれ、
一気に初夏が来た。　　Y

ガガンボ

　田舎の家の窓から見える通称「西山」は、
　福井との県境をなしている。
　油坂スキー場があり、九頭竜ダムがあり・・・
　遥か日本海へと道が伸びている。
　西を眺めるとき、
　一つの淡い夢のような思慕が湧き起こる・・
　そんなよるべない窓に
　薄い小さな「ががんぼ」がとまっていた。
　ひがな一日休んでいた。　　　　　　　　m

田舎道

連休中の１日、実家から善勝寺までの
道のりを辿ってみた。カメラを掛けて
被写体を探しながら、歩いて４０分ほどの
行程だが、緩急の差はあるものの、常に
上り勾配なので、けっこうきつかった。
それにしても在所だというのに、小中の
学校が逆方向だったこともあるが、
この道を歩いた記憶がほとんどない。
そんなわけで、小さな発見がいくつもあり、
楽しい散歩となった。
竹が一本だけ傾いて伸びている。
ここは、実家からすぐ近くで、
子供の頃はちいさな竹薮になっていて、
鬼ごっこをして遊んだことがあるのを、
今思い出した。　　Y

畑

　あははは・・・
　チューリップさんが咲いていた。
　小さな畑の片隅で、健気に勝気に
　ちょっぴり一人ぽっちで・・・
　邪魔にならないように、
　驕らないように、
　電柱さんに寄り添って・・・
　そっと生きてみる・・　　　　　　m

路地

細い路地を曲がった途端
この影が目に飛び込んできた。
実体のある周りの木ではなく
実体のない影こそが主役だ。
それは、いわば日常を切り取った
影である写真が、切り取られたがゆえに、
二次元の世界に転化し、
そこにあるものたちの存在感を際立たせるのと
似たところがあるのかも知れない。　　Y

善勝寺の桜 ライトアップ

　創造と破壊を繰り返しながら
　連続していることを「無常」というらしい。
　自覚のない透明な無常観・・・
　そういえば、随分壊されてしまった・・・
　それでも、時間は流れ、
　遅まきながら、桜が咲いた!
　ライトアップもされて、妖しく照らされた。
　「見事だねぇ。」と
　今年も同じことばを呟いてみた。
　5月3日の善勝寺の桜・・満開を少し過ぎていた。　　　　m　　　　

黄砂の落日

５月２日の黄砂は凄かった。
遠景は黄色く濁って霞み、
素粒子の印画を見るようで、
とても皐月の空とは思えない。
実家に帰って、畑仕事を終えた夕暮れ時、
西の空が黄灰色に暮れなずむ中、
色を失って墨絵のように佇む眺めの中に、
真っ白い太陽が輝いていた。
〈西山眺望シリーズ〉 Y