流れる車窓の景色に目を向けたり、R君とおしゃべりしたり、読書をしたり、と気ままに過ごす内に、いよいよ広島駅到着の時間に。
降車の準備を始めると、R君が
「まだ時間は十分あるよ」
と。
またまたの私です。
娘時代は、家族の中でも一番暢気で、悠然と構えているほうでした。
今のR君のように。
でも年を重ねた今、自分に自信が持てなくなり、このようなせっかちに。
早めに行えば、失敗が少なくなるといった思いからです。
駅について最初に向かったのは、ホテルの和食処。
数日前に、シェラトンホテルの「雅庭」のお昼会席を予約しておきました。
前もってR君に好みを訊いたところ、和食がいいとのこと。
若いのに、意外な返事でしたが、私は嬉しい限りです。
混んでいて、カウンター席しか取れませんでしたが、前面は総ガラスになっていて、とても見晴らしがよく、心地よい空間でした。
この時に、私はお祝儀袋に収めた大学進学のお祝い金を手渡しました。
未亡人の私にしては、精一杯の奮発。
R君は、ちょっと驚きの表情。
でも、とても嬉しそうでした。
「有意義に使用してね」と言うと、大きく頷いたR君です。
新幹線を降りてからのR君のエスコートの、なんと行き届いたこと。
本当に心優しいR君。
ママのことをとても尊敬しているのが、言葉の端々から伺えます。
「優しい人」と言いますが、R君の優しさはママ以上。
荷物はすべて持ってくれる気配り。
遠慮したのだけれど、「いいよ、いいよ」と言って。
お陰で、私は実に身軽な状態で、終始行動させてもらいました。
お寺につき、夫のお墓の前に二人で佇みました。
夫が、どんなに喜んでいるだろうと思うと、感極まってしまった私です。
その後、R君が率先して、お墓を隅々まで磨いてくれました。
そんな姿に、いよいよ大学生になるR君の成長を思わないではいられなかった私です。
日帰りのため、お彼岸法要に参列する時間的余裕はありません。
お玄関先でご挨拶のみして、お寺を去る予定にしていましたが、チャイムを押してもどなたも出ていらっしゃらなくて。
やむを得ず、すぐ退席するつもりで、法要が営まれている本堂に二人で入りました。
横浜から来た、というとたいそう驚かれ、名前を名乗ると、受付のおじいさんが、またびっくりされた表情に。
「~さんのご身内ですか」
と。
三十数年前に亡くなった義父は、このお寺さんのかかりつけ医をしていました。
恐らくそのために、割とご存知の方が多いのかもしれません。
お布施を私は手渡し、ご住職様にもご挨拶をして、30分位で本堂を後にしました。
R君が手を合わせて佇む時間の長いこと。
おじいちゃまにどんな言葉をかけたのでしょう。
新幹線の乗車時間は、五時過ぎです。
まだしばらく時間があります。
お土産を数点と駅弁も買い、カフェで一服。
新幹線に乗車しました。
R君のお陰でいつもと違い、安心して事をスムーズに運ぶことができました。
とても頼もしく感じたR君。
年を重ね、次第に自信がなくなりつつある私ですが、R君が私に感じた思いは、
「おばあちゃんは、元気だよ。頭もしっかりしている」
でした。
お世辞でも嬉しくて、認知症はまだ恐れる必要はないのかもしれない、と自分の元気を再認識させてもらえました。
R君の温かな励ましの言葉にも感謝です。
新幹線を降りると、ホームは同じながら逆方向の電車。
電車を待っている間も、R君が、幾度も幾度も手を振ってくれ、その優しさが切なくなってしまうほどでした。
R君、素敵な思い出を本当にありがとう。
ライフスタイルとシニアブログのランキングに参加しています。
下のバナーに応援のポチッをいただけますと、励みになり、大変嬉しいです。
にほんブログ村
ありがとうございました。
花のように泉のように