普通な生活 普通な人々

日々の何気ない出来事や、何気ない出会いなどを書いていきます。時には昔の原稿を掲載するなど、自分の宣伝もさせてもらいます。

ちょっと怖い話⑨ あるアパートで

2010-12-14 13:48:52 | 超常現象<的>な
 これは自分のアパートの話ではなく、25歳当時仲の良かった友人が引っ越そうと見つけたアパートの話。

 若い頃、杉並区に住んでいた。実家が荻窪だったこともあり、阿佐ヶ谷、荻窪周辺にアパートを借りて住んでいた時期が結構あった。

 友人が、「どうせ一緒に遊ぶんだし、出来ることなら杉並で、お前のアパートに近いところで借りる」とアパートを見つけてきた。杉並区の清水の方だった。

 ところが一度下見に行った友人が「一緒に行って下見してくれ」という。なにがどうということもないのだが、なにか違和感があるのだという。

 そのアパートは、昭和30年代に建てられた古いタイプで、廊下の両側にまるでハモニカのように部屋が並んでいた。共同炊事場、共同便所、風呂なしという、まあ安い一般的なモルタル2階建てのアパート。部屋数は上下で16室。

 そこの2階の端の部屋を借りようとしていたのだが、ボクは友人とそのアパートの入り口までいって、即座に契約するなと言った。

 周囲は住宅街で、アパートは木に囲まれ、一見静謐としたいい環境の中にあった。

 だが、入り口を見るなり友人が感じた違和感の正体が分った。

 不動産屋の言うには住人の大多数は「学生さん」だそうで、一緒に行ったときも、入り口には10足ほどの靴があり、明らかに、少なくとも10人は人がいるはずなのだが、あまりにも静かなのだ。人がいることで感じる空気の揺らぎのようなものがまったくない。

 背中がゾクゾクした。なによりボクが違和感を感じたのは、脱がれた靴だった。10足ほどの靴が、きれいに並んでいるのだ。軍隊でもこうはいかないというぐらい、きれいに並んでいるのだ。大家でも近くにいるのかと思ったが、そうではないらしい。

 ただキレイ好きの住人がいるだけかもしれないが、この生活感の無さと、靴の並びは異常だ。それでボクは「止めろ」と言った。
 少なくとも、友人を訪ねてこのアパートに遊びに来たくはなかったから。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿