米国疾病予防管理センター(CDC)のMorbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)8月24日号での報告。
米国・カリフォルニア州における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染者についての分析で、ワクチン未接種者はワクチン接種完了者と比較して感染率が4.9倍高く、入院率は29.2倍高かった。
同地域ではデルタ株への感染が広がり、感染者の約9割と最も優勢となっていた。
死亡率は、未接種者(0.6%、176人)および未完了者(0.5%、7人)と比較して、完了者(0.2%、24人)で低かった(p<0.001)。
死亡例について、完了者24人のうち6人が、HIV感染、がん、肝移植などの免疫不全状態にあった。
覚えやすくまとめると、
ファイザー社、モデルナ社のワクチン接種の場合2回目投与後14日以上経過すれば感染する確率は5分の1になり、入院率(重症化率)は29分の1に低下する。
ワクチン接種すれば、よほどのことがない限り新型コロナで死亡することはない。
デルタ株に対してワクチンはどのように作用しているのであろうか。
以下は最近の論文のレビューである。
液性免疫(主としてS蛋白に対する特異的IgG抗体によって形成されるウイルス中和抗体)に関して、Wallらはファイザー社のワクチンの2回接種後28日目における変異株に対する中和抗体価は、デルタ株(インド株)で5.8倍低下していると報告した。
これらの結果は、デルタ株では強力な液性免疫回避変異が存在することから説明可能である。
ファイザー社は、ワクチンの2回接種後8ヵ月間はデルタ株に対する中和抗体価がほぼピーク値を維持するが、それ以降は低下するのでワクチン2回目接種6~12ヵ月後に、さらなるBooster効果を目指した3回目のワクチン接種が必要になると発表した(Pfizer社. 2021年7月28日報道)。
さらに、デルタ株に対する中和抗体価が3回目ワクチン接種により2回目接種後に比べ、18~55歳の対象で5倍以上、高齢者で11倍以上増強されると報告した。
中和抗体の中核を成すS蛋白に対する特異的IgG抗体を産生する形質細胞数は、2回目のワクチン接種後約1週間でピークに達し、3週間以内にその90%が消失する。
しかし、S蛋白特異的IgG抗体産生はワクチン接種後少なくとも8ヵ月にわたり持続することが判明しており、この現象は、免疫組織(脾臓、リンパ節)の胚細胞中心において形成されたS蛋白を特異的に認識する記憶B細胞に由来する長期生存形質細胞の作用だと考えられている。
現状のワクチンは、デルタ株など免疫回避作用を有する変異株に対してS蛋白特異的IgG抗体産生能力が低く、かつ、低下の速度が速いため3回目接種による抗体産生の底上げを考慮する必要がある。
ワクチンの予防効果を規定するもうひとつの重要な因子は、T細胞由来の細胞性免疫の賦活である。
ワクチン接種後の細胞性免疫の持続期間に関しては不明な点が多いが、細胞性免疫が液性免疫と同様に少なくとも8ヵ月は維持される。
以上を総括すると、デルタ株では液性免疫は著明に低下するが細胞性免疫はほぼ維持されるものと考えることができる。
乱暴に要約するとワクチン接種後8ヶ月くらいは効果が期待できるが、3回目の追加接種がどうも必要そうだということだろう。