
有効打突の条件は下記の6項目である。
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1)充実した気勢
2)適正な姿勢
3)竹刀の打突部で
4)打突部位を
5)刃筋正しく打突
6)残心あるもの
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これらのうちの一つでも欠けていれば有効打突にならない。
つまり、打って当たっただけでは一本にはならず、
ゆえに審査で「何本も入ったのに受からない」という人は何かが欠けている。
残心が下手なばかりに審査で不合格になる者も多い。
特に三段~五段では、面を打った勢いのまま、
相手とすれ違い、相手を見ずに背を向けて去っていくことがある。
あるいは相手とぶつかり、鍔迫り合いになって時間の浪費をしてしまう。
振り返って、あるいは下がって構えるまでが残心である。
相手からは常に目を離さないのが正しい。
有効打突は、打って、気勢のあるまま、抜けて振り返って構えて完結する。
打ってから構えるまでが残心。気が抜けてしまっては試合も審査も駄目である。
木曜会(誠先生の剣道教室)では特に残心に気をつけている。
以下は、面打ちの場合の残心を(私個人の理解として)説明する。
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面を打ったあと、
肩残心:肩がすれ違う際に横目で相手を見ながらクルリと回って引き残心。
引き残心:相手とぶつかったあと、正対したまま後ろに下がって残心。
乗り残心:打った勢いのまま真っすぐ相手に乗っていく残心。(手を上げ胴で押す)
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初心者でありがちなのは、相手とすれ違う事を意識するあまりに、
面を打つ時に、右前に出ながら打ってしまうことが多いことだ。
この場合、打った時に、やや右に逸れているため、
右手を左方向に伸ばして相手の面を捉えようとしてしまい、
少し身体が捻じれてしまっていることが多い。
初心者は、相手にぶつかる事を恐れず、真っすぐに打ち込むように。
以下、詳細。
---肩残心---
打つ瞬間までは真っすぐ打ち込む。逸らして打たない。
打った瞬間に右方向に進路を逸らし相手の左肩とすれ違う。横目で相手をとらえている。
肩がすれ違った瞬間に、右足を軸にくるりと瞬時に回って、相手と正対しながら下がる。
遠間まで下がったら、左足荷重のまま、右足を引いて正しい構えを取り、
そこから半歩前に出て遠間、触刃の間となる。
---引き残心---
真っすぐ打ち込む。
相手とぶつかったら腕を引いての体当りはしない。
打ったそのままの姿勢でぶつかって行き(腕が上がるのでバンザイ姿勢)、
相手と触れた瞬間に相手と正対しながら下がる。
遠間まで下がったら、左足荷重のまま、右足を引いて正しい構えを取り、
そこから半歩前に出て遠間、触刃の間となる。
相手とぶつかる角度によって、右方向や左方向の引き残心になる場合もある。
(これは肩残心の変形で、相手とすれ違いが出来ない場合がこれになる)
---乗り残心---
真っすぐ打ち込む。
相手とぶつかったら腕を引いての体当りはしない。
打ったそのままの姿勢でぶつかって行き(腕が上がるのでバンザイ姿勢)、
相手の体格が小さい、あるいは精神的に萎縮していた場合、そのまま前に進み乗っていく。
乗りきったら気位を見せて静かに下がって間合いを取る。

(打ったあとは、そのままの勢いで乗ってしまう乗り残心)
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試合や審査は、普段の基本稽古と違って相手は避けてくれない。
このため、鍔迫り合いばかりしている試合や審査風景も珍しくは無い。
特に昇段審査での鍔迫り合いは時間の無駄である。何の評価も受けない。
普段の稽古の中で、上の者に懸かる稽古ばかりしていると、
たいていの場合は上の者はよけてくれるので、
なかなか、打ったあとの体捌きがうまくならないものである。
どの残心を取るかはその時の状況次第で、
こういう時はこうすると言葉では言えないものだ。
瞬時に判断、対応出来るように身体で覚えるほかは無い。
同段や、近い段同士の場合は、積極的に上記の残心を稽古して欲しい。
残心が上手くなれば、緊迫感のある良い稽古になるはずである。
以下余談
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初心者に真っすぐ打ちこませて、ぶつかると「ぶつからずに避けなさい」と指導する先生がいる。
初心者は避けることを意識すると、避けながら打突するようになってしまう。
指導者は、相手の技量を見て、相手が未熟であれば自分から避けるか引いてあげましょう。
また、真っすぐ打ち込ませて体当りばかりの稽古も技が小さくなり好ましくありません。
初心者には伸び伸びと真っすぐに打ち込ませるようにしたいものです。
体当りは剣道の大切な動作(技)の一つですが、
体当りそのものは残心にならないため、
また体当り自体も、そして体当りからの技も美しくもないため、
特に昇段審査では体当りはしないほうが良いと思います。
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(この項、追記、訂正する場合があります)