【「風と共に去りぬ」「ロビンフッドの冒険」などで好演】
米国での白人警官による黒人男性への暴行死をきっかけに人種差別への抗議行動が広がりを見せる中、不朽の名作とされてきた映画「風と共に去りぬ」(1939年)もやり玉に挙げられ一時配信停止に追い込まれた。この映画の舞台は南北戦争時代の南部。主人公は黒人奴隷を多く使う綿花プランテーションの経営者の娘で、人種差別的な言動が含まれるというわけだ。そこでつい最近改めてDVDで視聴したばかりだった。
この映画の中で勝気な娘スカーレット・オハラ役を演じたヴィヴィアン・リーと好対照の物静かで思慮深い義妹メラニー・ハミルトン役を演じたのがオリヴィア・デ・ハヴィランド。その彼女が7月26日パリで逝去したというニュースが飛び込んできた。1916年東京生まれで享年104。1歳年下の妹ジョーン・フォンテイン(1917~2013)とともに、幼少時に日本から母親と共に米国カリフォルニアに渡った後、ハリウッドで活躍した。「風と共に去りぬ」ではアカデミー助演女優賞にノミネートされながら受賞はならなかったが、その後「遥かなる我が子」(1946年)と「女相続人」(49年)で2度主演女優賞に輝いた。初期の作品で痛快な「ロビンフッドの冒険」(1938年)ではマリアン姫役の彼女の美しさに目を奪われた。
実はハヴィランドのことを知ったのは妹のフォンテインが主演したアルフレッド・ヒッチコック監督の「レベッカ」(1940年)を見ながら経歴を検索したとき。姉妹が約100年前に日本で出生していたことを知ってより身近に感じ、一時期二人の作品を集中的に鑑賞したことがあった。「レベッカ」は英国出身のヒッチコックにとって渡米第一作。姉妹の両親も英国出身で、父親は来日後、金沢や東京で英語やサッカーなどを教えていた。母親は舞台女優をやっていたという。
フォンテインは16歳のとき再来日し東京のインターナショナルスクールに通っている。「風と共に去りぬ」のメラニー役は当初監督からフォンテインに打診があったが、彼女が姉のハヴィランドを推薦したという。フォンテインは「レベッカ」の後、「断崖」(1941年)、「ジェーンエア」(1943年)、「忘れじの面影」(1948年)など多くの作品に出演し、ヒッチコック監督の「断崖」でアカデミー主演女優賞を獲得した。アカデミー賞ではその後ヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダの父娘が主演男優賞・主演女優賞に輝いているが、姉妹で主演女優賞を獲得しているのはハヴィランドとフォンテインの二人だけだ。