【栄養価高い〝最強の健康野菜〟】
ヨーロッパ原産のアブラナ科オランダガラシ属の香辛野菜。日本には明治時代の初め、1870~71年ごろ在留外国人向けとして入ってきた。クレソンはフランス語の「cresson」から。英名では「ウォータークレス」と呼ばれる。葉や茎などにピリッとした辛味と苦味があるのが特徴。標準和名の「オランダガラシ(和蘭辛子)」も外国から渡ってきたカラシを意味する。別名に「ミズガラシ(水辛子)」や「セイヨウセリ(西洋芹)」など。日当たりのいい水辺に生え、枝先の総状花序に白くて小さな4弁の花を密に付ける。
カルシウム、ビタミン、鉄分、カリウムなど多くの栄養素を豊富に含む。ある米国の大学が主な野菜・果実について17種の必須栄養素の含有量を調べてランク付けし、2014年に米疾病予防管理センターの機関誌上で発表した。そのランキングでクレソンは堂々の第1位に輝いた。以来、クレソンは〝最強の健康野菜〟ともてはやされている。日本国内の主産地は山梨県と栃木県で、この2県で全国の約75%を占める。肉料理の付け合わせに欠かせないクレソンだが、サラダやおひたし、和え物、天ぷらなどにも。粉末を練り合わせたうどんや煎餅、飴玉、アイス、ジュースなど様々な加工品も生まれている。
学名は「Nasturtium officinale(ナスタチウム・オフィシナーレ)」。属名はラテン語の「鼻」と「捩る」の合成で「鼻が捩れるほど刺激的な香辛料」であることを表す。種小名オフィシナーレは「薬効/薬用の」。ナスタチウムといえば、鮮やかな黄や赤の花色とハスのような丸い葉から「キンレンカ(金蓮花)」という和名を持つナスタチウムが思い浮かぶ。ただ、こちらは南米原産でノウゼンハレン科の全く別属の植物。食用のエディブルフラワーとしても栽培され、葉や花にクレソンに似た辛みがあることからクレソンの属名が転用されたという。
クレソンは繁殖力旺盛で、切り取った茎や葉、地下茎などでもすぐ根付く。しかも清流だけでなく溝や用水路、水深の浅い池などでも増殖するため、全国各地で野生化している。このため環境省は在来種との競合の恐れから、外来生物法に基づき「生態系被害防止外来種」(旧要注意外来生物)に指定。水路を塞ぐこともあって防除に取り組む地域も少なくない。一方でクレソンは水質汚染の原因となる窒素などの吸収効果が高いことが明らかになっており、水質浄化のため試験栽培する動きも。さらにホタルの幼虫の餌となるカワニナ飼育のためクレソンを栽培するところもあるようだ。「クレソンに水うなづきて流れゆく」(山田みづえ)