【ならPHOTO CONTEST 作品展も】
奈良市写真美術館(高畑町)で「第5回入江泰吉記念写真賞」(日本経済新聞社協力)の受賞作品展が開かれている。若手写真家の発掘を目的に2014年にスタートし2年ごとに作品を公募してきたが、第5回は新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となった。今回は全国から61点の応募があり、その中から東京在住の眞岡綺音(あやね)さんの作品『陸の珊瑚』が大賞に当たる記念写真賞に選ばれた。
眞岡さんは大阪府出身の23歳。日本写真映像専門学校を卒業し、これまでに読売写真大賞中高生部門大賞、御苗場2018年間最優秀賞なども受賞している。今回の受賞作品(48枚組み)では祖父母が経営する牧場を舞台に、4~5年間にわたって家族や環境の変化を追い続けた。作品の中には病床にあった祖父の最期の姿やお墓の周りで明るくはしゃぐ男女児の写真などもある。
審査員の写真家百々俊二氏は「家族の日常を丹念に生き生きと記録し、そこに生と死が織り成す。祖父の死を経て家族関係の再生、乳牛を育てる労働を明るく柔軟な眼差しで表現している」と評価。菅谷富夫氏(大阪中之島美術館館長)は「写真から伝わってくるのは、時にはグロテスクなまでの生々しい生命感である」と評している。一連の作品は写真集として出版された。
「第5回ならPHOTO CONTEST 」の受賞作品展も同時に開催中。「ならを視る」をテーマに掲げたこのコンテストには全国から548点の応募があった。その中から「なら賞」には二川和歩さん(愛媛県在住)の『佇む』が選ばれた。東大寺南大門で巨大な金剛力士像に対面する二人の女性の姿をモノクロでとらえた。「日本経済新聞社賞」の受賞作は若井芳昭さん(三重県在住)の『ならが視る』。奈良公園名物のシカが大きな切り株の向こう側から耳をそばだてじっとこちら側を凝視する。
入江泰吉の作品展も開かれている。今回は春を告げる花として「梅⋅桃⋅桜」にスポットを当て、大和路や吉野など花のある風景写真30点余を紹介している。会期はいずれも3月17日まで。