【贅を尽くした華麗な世界 絵画・装飾品・装身具・工芸品など120点】
「輝ける皇妃エリザベート展」が京都市の美術館「えき」KYOTOで開かれている。エリザベートは1837年生まれで今年は生誕175年目。僅か16歳でハプスブルク家のオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に嫁ぐが、厳格な宮廷生活になじめず、贅の限りを尽くして自由と自らの美を追い続けた。同展ではお気に入りだった絵画や遺品の装飾品、工芸品など約120点を展示している。会期は10月28日まで。
目玉は本邦初公開というダイヤモンドの「星の髪飾り」。ヴィンターハルター作の肖像画「星の髪飾りをつけた皇妃エリザベート」(写真㊤)に描かれている。エリザベートはモーツァルトの歌劇「魔笛」を鑑賞した際、「夜の女王」が着けていた星の髪飾りに大感激。その妻のため皇帝が宮廷御用達の宝石店にそっくりな髪飾りを作らせた。星型の十角形と八角形が作られたが、展示中のものは八角形。これもエリザベートが実際に身に着けていたものという。
結婚式でエリザベートの頭を飾った黄金のティアラ(下の写真㊧)はまばゆいばかり。ネックレスの中には珍しいハエをモチーフにしたものもあった。このほか金のブレスレットや机、椅子、宝石箱、旅行用の時計、螺鈿細工のキャビネット、家族写真を貼った衝立、結婚アルバムなど、いずれも超一級品ばかり。(写真㊨の絵は「シェーンライトナー通りのスープ・キッチンを訪れる皇后エリザベート」)
エリザベートは172cmの長身で、体重50kg、ウエスト50cmを維持するためダイエットに励んだ。オレンジ以外は口にしないオレンジ・ダイエットは有名。馬術やフェンシングをはじめ、重量挙げ、平行棒や吊り輪、鉄アレイを使った体操など、運動も毎日欠かさなかった。遠出する時には必ず体重計を持参したそうだ。夜は枕を使わず、腰に濡れた布を巻いて寝た。エリザベートの一番の誇りは膝まである豊かな髪。毎日侍女に2時間もとかせ、2週間に1回、1日がかりで卵とコニャック、整髪料を使って洗髪したという。ウエスト50cmを証明するように、展示品の中には銀製のベルト(ウエストの長さ52cm)やコルセット型ベルト(51cm)もあった。
「シシィ」の愛称で国民に愛されたエリザベートだが、1898年9月10日、ジュネーブの船着き場でイタリア人の無政府主義者に胸を一突きされ、悲劇的な最期を遂げる。享年60歳。会場にはエリザベートのデスマスクや葬式を飾った花のドライフラワー入り盾、当時の模様を伝える新聞記事、暗殺者ルケーニ直筆の書類と写真などが展示されていた。エリザベートの生涯を描いたミュージカルは宝塚歌劇などで繰り返し上演され、女性に大人気。それだけに同展も来場者の大半を女性が占めているようだ。
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【羽扇で意中の相手にさりげなく合図!】
ヨーロッパの社交界で淑女にとって欠かせなかったのが扇。会場の一角にも豪華な羽扇が飾られていた。単なる飾りの小道具かと思ったら、とんでもない。扇の動きで「恋愛対象の男性にモールス信号のように合図していた」という。例えば「扇を左手で顔の前に持つ→あなたとお知り合いになりたい」「扇で頬をなでる→愛しています」「ゆっくり扇ぐ→結婚しています」「すばやく扇ぐ→婚約しています」「閉じた扇を右目に当てる→いつ会えますか」「指で特定の数の扇の骨や折り目をなでる→会う時刻の指定」――といった具合。その読み取り方を教えるアカデミーまであったそうだ。エリザベートもそんなふうに扇を使ったのだろうか。
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