【巫女2人、鈴・扇・榊・薙刀・矛・剣などをかざして】
奈良県田原本町の村屋神社で10日秋祭り本宮が行われ、数百年前から代々受け継がれてきた「代々神楽」が巫女2人によって奉納された。奈良県中央部に残っている神楽舞のほとんどが、この代々神楽が原形になっているともいわれる。静かで素朴な巫女舞だが、薙刀(なぎなた)や剣(つるぎ)など採り物をかざして時に激しく舞った。
村屋神社は大神神社(桜井市)の別宮といわれ「縁結びの神様」として知られる。飛鳥と平城京を結ぶ古代官道の1つ「中ツ道」沿いにあり、壬申の乱の際には村屋神が大海人皇子(後の天武天皇)に神託を与えたと日本書紀に記されている。社殿の周りにはイチイガシなどの巨樹が林立し、鬱蒼とした社叢は県の天然記念物に指定されている。
代々神楽は予定の午後2時より少し早く「平神楽・三々九度」から始まった。宮司がたたく太鼓に合わせ、巫女2人が1人ずつ交互に舞を奉納。次いで「榊の舞」「扇の舞」「薙刀の舞」「矛(ほこ)の舞」「二本剣の舞」と続き、最後は「一本剣の舞」で締めくくった。この間40分余り。真夏並みの暑さとあって、巫女は舞い終わるたびに汗をぬぐっていた。
「二本剣の舞」では始まってまもなく巫女が「もう1回やっていいですか」と宮司に声を掛け、最初からやり直す場面があった。奉納神楽ではあまり目にすることがないハプニング。だが後で、舞っていたのが宮司のお孫さんとそのいとこ(2人とも高校2年生)と分かって納得。そう言えば始まる前にも、宮司に「おじいちゃん」と話しかける小さな声が聞こえていた。だから家族的な雰囲気にあふれていたわけだ。
この日の神楽はいずれも1人舞だったが、宮司の守屋広尚さん(82)=写真㊨=によると、以前は2人が一緒に舞う「銚子の舞」という神楽もあったという。ところがこの舞で使う鉄製の大釜が終戦直後、盗難に遭い、以来「銚子の舞」と1人舞の「御湯(みゆ)の舞」が奉納できずにいるという。守屋さんは「何とか早く復活させたい」と話していた。
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