【かつては花より葉の文様に人気 「番付表」まで登場】
和名を「天竺葵」というが、原産地は南アフリカ。日本には江戸時代末期にオランダから長崎の出島に入ってきた。中国よりさらに遠い国からやって来たということで頭に「天竺」(今のインド)が付いたらしい。天竺を冠した植物にはこのほか天竺豆(ソラマメ)、天竺牡丹(ダリア)などがある。和名の下の「葵」は葉が徳川家の紋所にもなっているアオイに似ているから付いたそうだ。
葉に斑(ふ)や珍しい文様が入ったものを錦葉ゼラニウムと呼ぶ。長く花より錦葉に人気が集まり、1900年代半ばごろまで「葉変葵銘鑑」という番付まで発行されていた。「○○山」「○○錦」といった名前が多く、まるで相撲の番付。かつて万年青(オモト)、春蘭、桜草、菊、変化朝顔などにも番付があったが、その多くは日本在来の〝古典園芸植物〟。外来なのに番付まであったことが、ゼラニウムの当時の人気ぶりを示す。
日本でゼラニウムというと、一般的にフウロソウ(風露草)科ペラルゴニウム属のうちゾナール種を指す。葉や茎から特有の香りを放つのが特徴で、そのにおいを嫌がる虫も多いためコンパニオンプランツ(随伴植物)の一つに挙げられる。コンパニオンプランツは一緒に植えたり、そばに置いておくと、害虫や病気を防いでくれたり、生育を促してくれたりする植物。花の色は赤、白、ピンクなど多彩で、乾燥に強く5月ごろから晩秋まで咲き続ける。
ゼラニウムは窓辺を飾る花として西洋でも古くから人気を集めてきた。中でも英国では19世紀に大流行したという。ゼラニウムの仲間には葉に芳香を持つセンティッド・ゼラニウム(匂い天竺葵)、葉がツタに似て吊り鉢に適したアイビーゼラニウム(蔦葉天竺葵)、パンジーに似た花を付けるパンジーゼラニウムなどがある。さらにセンティッドは香りによってローズゼラニウムをはじめペパーミント、グレープフルーツなど様々な品種が作り出されている。
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