最近読み直している本です。
台湾で日本人として生まれながらも、敗戦後も『日本人』として台湾に居残ったために
本当に苦労された人生を歩まれた下山操子さんとその一家のお話です。
日本の敗戦に伴って中国から国民党が台湾にやってきました。
当時、下山一家が住んでいた霧社にも国民党が入りこんできて、霧社事件の犠牲者(日本人)たちのお墓も国民党たちに破壊されてしまいました。
この地に残って生活していた下山さんたちは、お墓が破壊される情報を事前に掴んでいて、破壊される前夜(深夜12時ごろだそうです)
に一家総出5人で墓標の上にある桃の様な形をした石を取り外して隠し持っていてくれました。
当時、この辺りでは深夜になると殺された日本人たちのお化けが出るなどのウワサも広まっていたので、夜中には誰も近づかなかったそうです。
そのおかげで夜中にこっそりと人目に付かずにこの頭部分の石を取り外せたと言っていました。
私の友人の下山操子さんは、懐中電灯を持っている役だったそうです(当時の様子を楽しそうに話してくれました)。
日本人たちが敗戦に伴って次々と日本に帰国する中、下山さん一家は諸事情(『故国はるか』を呼んでもらいたい)で台湾に残る決断をしました。
国民党政府の支配下、日本人家族は本当に辛い目にたくさん遭ったと言っていました。
そんな厳しい生活の中でもこの『墓石』を隠し持っていてくれました。
流石に『日本人犠牲者の墓標』があるとは公に言えないので、仲間内で石の形から『桃太郎さん』と隠語で読びあっていたそうです。
下山さんは激動の時代を生き抜いた方です。