「あなたを置いて、他に夫はいません。」と優しく呼びかけます。普通なら、これで総てが解決されて、後はめでたしめでたしとなる所ですが、スセリヒメは、さらに、これでもか、これでもかと、オホクニに愛の言葉を送ります。これが、また、何を云っているのか分からない上古之言葉で
“阿夜加岐能<アヤガキノ> 布波夜賀斯多爾<フハヤガシタニ>”
と。
「あやがき」とは「文垣」で(「綾垣」としている学者も)、今で言う「カーテン」で、太めの絹で出来た色どりを施した織物と廻らした物です。「カキ」とは周りから隔離した場所を言い、「カキ」が動詞化され「カキル」、それが「限る」と云う言葉になったのです。また、「フハヤ」とは「ふわりと揺れ動いているフ様子」を言う言葉だそうです。(広辞苑より)
そこら辺りの庭に美しい彩りのしてあるカーテンを廻らせて、そのカーテンがふんわりと揺れ動いている」”斯多爾<シタニ>”場所でと、呼びかけているのです。