ヒメがオホクニに盃を差し出します。そこに盛られたいっぱいのお酒をオホクニは一息に飲み干します。これで二人の行く末は「何をか語らん、めでたしめでたし」でおわるのが小説の常道手段ですが、古事記は、それでも、まだまだ、この二人の行く末が、人生そのものを語るようにどのような紆余曲折を辿るか分からないかのごとくに、次のような文を付けたしております。
“宇岐由比<ウキユヒ>”
です。
広辞苑には「盞結(うきゆい)で、酒杯を取り交わして誓約すること」とあり、宣長は
「女神男神が互いに、御盞をさし交て、今よりの長<トコシナヘ>に心かわらじと、結固め賜ふ契を云なり」
と説明がしてあります。
永遠の愛を誓う合う儀式です、そのための盃でもあったのです。このように見てきますと、「さかずき」を交わすと云うことは洋の東西を問わずお互いを結びつけるための仲介の役目をしたものだったのです。大変に、人の世にはなくてはならない大切な神にも似た重要な必需品の一つだったことが分かります。
別れの盃、再会の盃、和合の盃(仲直りや友情を確かめ合う)、縁結びの盃、更に、ここにあげた盞結の盃など 沢山のお酒の盃が2000年以上の歴史のある事が分かります。