私は古い本を集めております、今、私が持っている一番古い時代の本は、元禄時代(1697年)に出版された本で、
・貝原好古著 「大和事始」
という本です。
この本に我が国の「酒」の事始が書いてあります。それを少々ご紹介します。
この本によると『日本で最初に造られた「酒」は』
”素戔烏尊、脚摩乳、手麻乳をして、八醞八甕<ヤシホ ヤハラ>の酒を醸さしむと
あれば、是酒の始也。"
と出ております。
しかしながら、ここにある”是酒の始也”と昨日書いた「二千年袖鑑」にある「酒の始め」とを比べてみますと、そは内容も年代も随分の差異があります。
ここにある貝原好古の「大和事始」の酒は黍などから作られたお酒ですから、その種類やアルコール分等には聊か違いがあるようです。この酒のアルコール分も「袖鑑」にある酒より随分と薄く、沢山の飲まなくては酔いが早く回りません。その為に製法が改善された製法によって作りだされたのが
”八醞<ヤシオ>”
の酒です。この「八醞<ヤシホ>」は、古事記では
”八塩折之酒<ヤシホオリノシホ>
と書かれております。
この酒は、一度醸し熟成させ、それを絞り、出来た糟をすてて、その汁を、再び、醸す。これを八回繰り返して酒にするので、此の時出来たお酒を「八塩折之酒」といったのだと宣長は説明しております。現在でも、にごり酒のことを「おり」と言っているのも其の名残なのかもしれませんよね。
なお、宣長は続けて、この「シホ」について、布を染める時に言う『一しほ』『二しほ』 も、また「シボル」という言葉も、此の酒造り(八塩折之酒)の生成過程から生まれた言葉だと説明がしてあります。
「折る」というのは酒を作る時の事を云う言葉で、「しぼる」も「しおおる」から生まれた言葉だとも
まあ、何回ともなく書きますが、宣長のすごさが今更のように感じます。