蒲子<エビカズラノミ>を食べた鬼たちは元気百倍です。たちまちのうちに逃げるイザナギに
”猶追<ナオ オイシカバ>”
猛追してきます。そこで、今度は、イザナギは自分の右の美豆良<ミズラ>に挿してある
”湯津々間櫛<ユツツマグシ>”
を投げ捨てます。左にあった湯津々間櫛は、既に、あのイザナギの姿を見る時の灯に使っておりますので残っていた右手に挿していた櫛です。念のために。・・・・・・・
その棄てた櫛から、今度は、
”笋”
が生え出ます。この「笋」の字を、宣長は
「字鏡に、筍笋太加牟奈<タカムナ>、和名抄にも、筍亦笋ニ作ル、和名太加無奈<タカムナ>とあり・・・名の意は竹芽菜<タカメナ>なり。かかれば笋も、菜にするときの名を、たかむなといひ、ただには竹子<タケノコ>と云・・・・・・」
と、説明があります。それも櫛ですから一本ではなく沢山の竹子がそこら辺りに生え、それを予母都志許売<ヨモツシコメ>が抜き食べている間にイザナミは迫りきた危険から
”逃行<ニゲイデマシキ>”
その様子を見ていたのでしょうかイザナミは、このシコメたちでは、到底、にっくきイザナギを捉えることはできぬと思ったのでしょうか、なおも逃げていくイザナギを、今度は、追っ手を変えて追わすことにしたのです。