「子ども食堂」を見学して
―地域の人に守られ育つ―
「子ども食堂」の様子を初めて見学させていただいた。堺市の教育審議委員会の今年度の取り組みの一つが「子どもの貧困」問題である。先日発表された調査でも子どもの貧困率は13・9%。前回より2・4ポイント下がったが、依然7人に1人の割合で深刻だ。母子家庭の場合はとりわけ深刻だ。
「子ども食堂」は2012年くらいから全国で広がり、現在、大阪府下にも30ヵ所以上運営されているようだ。月1回が多いが、週5回というところもある。
///////登校前の朝食に続々と///////
先日見学させてもらったところは、ある校区にある地域会館で月1回行われている子ども食堂だ。朝7時から登校前まで開かれている。子どもたちは、ここから直接学校へ行くというわけだ。全校120人余りの約半分が利用している。
7時開始時から子どもたちがランドセルを背負ってやって来た。色とりどりのナフキンを頭にした地域のボランティアのおばさんたちが、とびきりの笑顔で迎えてくれる。それだけで眠そうな子どもに笑顔が生まれる。バイキング方式で、野菜サラダ、パン、カレー味の豚まん、スパゲッティー、飲み物、果物とおいしそうに並んでいる。
今日は特別早起きしてきたという子、親はまだ寝ているという子もいた。母親が夜中に働くから大変だと話してくれた。いつもはパンだけの朝食だという子が結構多く、ここに来たらいろいろ食べられるから嬉しいと言う。友だちと一緒だから楽しい、100円でこんなに食べられるから得だという子もいる。
とにかく子どもたちがよく食べていて驚いた。いつもは野菜食べないけど今日は食べられたという子もいて、食べることに集中しているのがいい。
時間がたつにつれ、会場はいっぱい。異年齢の人たちとおしゃべりもすれば、放課後遊ぶ約束をしている子もいる。
//////歯磨き、読書も//////
今回の場には、校長、教頭も参加している。地域の大学の栄養学科の学生たちもボランティアで参加している。配膳を手伝ったり、一人ひとりと話をしながらアンケートをとっている学生もいる。
朝食の終わった子から2階へ上がり、一人ひとりに用意された歯ブラシで歯磨き指導が行われる。生活習慣の立て直しという要求もあってのことだそうだ。
そして、それが終わると、近隣の図書館から借りてきた図書が用意された部屋で読み聞かせや各自読書もする。もっとも、はしゃぎまわっている子どももいたが、無理やり従わせたりはしないで、ゆるやかに対応されていたのも快かった。
身体がしゃきっとしてきて、顔色もよくなり、動きに活気が出てくるのが手にとるようにわかり、学校に向かう足が軽くなっていく後姿がなんともいとおしかった。
なかには朝ごはんが食べられない、学校に行きたくないと泣き続ける一年生もいたが、教頭先生やボランティアの学生さんたちが話を聴き、粘り強く説得してやっと食事に手をつけ始め、ほっとした。4人兄弟の下から2番目、下に生まれて間もない赤ちゃんがいるようで、「お母さん、私の方も向いてよ」と必死でサインを送っているようだ。そんな子もこの子ども食堂に兄に連れられてやって来て、話を聴いてくれる大人がいるというのが、またありがたい。
初めての見学であったが、なんといっても地域の中に、食事を囲んだ人のたまり場があり、地域の人たちが子どもを守っているという姿勢がすばらしい。そして、学校と地域の連携が密になるのもすばらしい。また、生活習慣も含めた地域の子どもたちの生活の改善に何らかの力になればと期待もされている。将来、子どもたちとかかわる仕事につきたいという学生たちの参加も歓迎だ。
子どもたちがみんな登校した後、片づけを兼ね、大人たちが集まったが、なんと参加していた学生たちも先生方も、なかには今回視察にやって来た我々の中にも朝食をとっていない人が多く、苦笑い。子どもたちと同じようにバイキングで朝食をいただいていたが、朝食をとらない・個食は今日、子どもだけの問題ではなさそうだ。
今後、考えていかなきゃならない問題は山積みだが、とにもかくにも「子ども食堂」という取り組みが広がっていることは、一つの明かりだ。
(とさ・いくこ和歌山大学講師)