MOVIE KINGDOM Ⅱ

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ポイントは★~★★★★★★

キングの名画座 第2回 「ジョーズ」

2007-03-05 01:14:06 | オールタイムベスト
監督 スティーブン・スピルバーグ
出演 ロイ・シャイダー
    リチャード・ドレイファス
    ロバート・ショー



キングの名画座第2弾は2回目にして私の生涯No.1の作品・・・

この映画が何故No.1なのかは別の掲示板やホムペなどで過去に何度か書いた事があるので、もしかしたら過去に読んで頂いた方々も居るかと思いますが、今回はブログと言うこともあり自身の思い出の記録として記憶に残ってる分だけ細部に渡って書きたいと思います(長尺ゴメン!)

私が色々と映画を見るキッカケとなったのは前にも書いた事ありますが 私の兄や姉が大の映画好きだった事とブルース・リーにハマった事が原因ですが、ホント身を持って映画の面白さや素晴らしさを体感したのがこの「ジョーズ」ですね。
1970年代中頃 私は小学校の高学年にそろそろ差しかかろうとした頃でしたが 日本ではパニック映画のブームが訪れていました

ロードショー誌で見た「ジョーズ」の特集記事で人食い鮫と人間の戦いの物語が 子供心に刺激的で(「白鯨」何て映画はまだ知らなかったし)公開前から冒頭で少女が食いちぎられるとか、少年が襲われるなどの記事を読むたびに[恐い物見たさ]からくる興味からジョーズの公開を心待ちするようになり ロードショーの別冊でジョーズの特集号が出れば即購入し、毎月に一回ある近所の夜店で鮫のゴムの玩具を見つけ それで風呂で遊ぶ毎日・・・(嫌な子供だったな・・・)
どうやって購入したか忘れたけど背中に「JAWS」の文字が入ったサメの縫いぐるみも持ってたな~

極めつけはサメの顎の骨! 何故か近鉄百貨店のペット売り場で950円で売られていたのを親に頼み込んで買ってもらいTVの上に暫く鎮座してました(劇中クイントの家にぶら下がってるようなデカイのじゃないけど)兄がふざけて顎の中に手を突っ込んで指を切ったのも今となっては良き思い出です・・・

そしていよいよ封切られた「ジョーズ」!
見に行った劇場が今は無き梅田グランド。(懐かしいな)
しかし劇場前は長蛇の行列!こんなに人が並んでるのは初めて見た・・・と真剣に思ったほどの行列だった。
しかしこの行列は当日券を求める行列で、事前に兄が前売り券を買ってくれていたおかけで 行列を作る大人たちをしり目にスンナリ館内に入れました。
子供心に「前売り券って便利やなぁ~」と思ったもんです

立ち見まで出てギッシリの超満員の場内・・・前売りのおかげで座って見ることも出来て、いよいよ場内暗くなり待ちに待った「ジョーズ」の始まり!(たしか予告編はC・イーストウッドの「アイガーサンクション」だったような気がします)

ここで私は子供心に実に後世に残る印象的な体験をすることになるのです・・・
スクリーンの中で展開される刺激的なシーンの数々に満員の場内は色々な反応を見せたことでした。
片目を食いちぎられた死体が突然ガバ~と出ればギャ~と場内に悲鳴が起こり、片足が海底に沈むシーンでも「ウァ~」と反応し、鮫がガバ~と出るたびに皆一様に驚きの声を出す・・・「な、な、何んなんやこれは・・・」
スクリーンの中の出来事に声や態度で反応する場内の異様なテンションにすっかりショックを受けてしまいました。
子供心に芝居のようなリアルタイムな物に対しての反応ならともかく、映像=フィルムで流される物にたいしてこんな反応が出るのが驚きでしたね。
そしてラスト・・・ロイ・シャイダーの「Smile.you son of a bitch!」の捨て台詞と同時にライフルで一撃・・・ドカーンと大爆発とともに鮫が吹き飛んだ瞬間に満員の場内から一斉にバチバチバチ~と割れんばかりの拍手喝采が!
これには鳥肌がたちました!「なんなんやこの雰囲気は!」
ここまで大勢の人にこんな感動を与える「映画」というものの素晴らしさと楽しさを実感した瞬間でした・・・以後この映画というものの虜になってしまいました。

終了後、兄貴が「オモロかったなぁ~もう1回見るか?」と聞いたが「いや、もうええわ・・・」と答えたのを覚えています。
期待以上に映画は面白かったですが、少なくともこの日はもう1回で充分でした。
観客の反応のせいもあったかもしれないが、これほど映画を見て怖いと思ったこともないし、また凄いとここまでも感じた映画も後にも先にも「ジョーズ」だけでした。
勿論、後に「ジョーズ」以上に面白い作品を見てると思いますし、またこれから先もっと面白い映画に出会うでしょう。
しかし私の生涯ベストワンは「ジョーズ」で変わることはないでしょうね。
それはあの年頃の、あの時の感性であの場内の雰囲気の中で「ジョーズ」を見たからで、今はもうあの年頃の感性に戻れないから・・・

こんな思い出深い「ジョーズ」ですが 映画としても当然ながらいつ見ても面白いですね。
お馴染のテーマ曲と共に冒頭での鮫目線で海底を進むカメラワークから始まり、最初の犠牲者であるクリシーが襲われ、第2の犠牲者である少年が襲われて鮫ハンターのクイントが登場、更にブロディ署長の息子が危うく襲われそうになり そして後半ついに人食い鮫と男たちとの戦いが始まる・・・
ここに至るまでの展開が快調なテンポて描かれて、まったく無駄がなく見るものをグイグイ惹き付けていく演出は当時27歳のスピルバーグ監督の若き才能のなせる技か。

とくに前半は鮫の姿を見せず その演出力とカメラワーク、音楽が一体になって鮫が出てくる以上に恐い [見えない恐怖]=[どこから出てくるか判らない不安]を見事に表現し、後の色んな映画に影響与えたのは間違いないでしょう。
鮫を直接見せない替わりに色々な手法で鮫が襲ってくるのを表現してるのも見事で、まずはカメラが鮫目線となり海中からドンドンと海面の人間に向かってカメラが近づいて行ったり、欲に目がくらんだ2人の男が深夜の桟橋でフックに分厚い肉の塊を付けて鮫を釣ろうとし、それに食いついた鮫に桟橋ごと海に引きづり込まれた男が慌てて逃げようと泳ぐと、イカダのようになった壊れた桟橋の残骸(鮫の飲み込んだ肉魂と桟橋が繋がってる)が海面で向きを変えて動き出し、男の後を桟橋が追いかけてくる・・・鮫を直接見せずにここまで鮫の襲撃を観客に印象付ける演出は凄いと思うね。

そして後半は前半とは打って代わり姿を表した鮫の執拗な攻撃とそれに応戦する男たちの攻防はまさに迫力あるスペクタルアクションとなり 前半のサスペンススリラータッチと見事なコントラストを描き出して秀逸です。

特に3人の男たちの前に初めて姿を現す場面は印象的で、俯瞰から捉えた巨大な魚影がオルカ号の脇を通り過ぎて行き、さりげなく船に対して鮫の大きさを対比させる場面はまさにこれから戦うヤツがトンデモナイ奴だと男たち並びに観客に印象づけるのに充分な効果でした。
またこの場面でのロイ・シャイダーのセリフである「船が小さすぎる」は名セリフですね(彼のアドリブらしい)
ちなみに当時はCGなどなくハリボテの模型で作られた鮫(名前がブルース君)がメイキング映像ではさすがにチャッチイんだけど本編を見るとハリボテとは思えない迫力が出ていると思います。
ま、フーパーが海底で檻ごと襲われる場面は本物の鮫らしいけど・・・(30周年記念DVDの特典メイキングによると檻に絡まって鮫が暴れる場面は演出でなく本当にアクシデントで絡まって鮫が暴れてるらしい)

突然ガバ~と出てくる演出が実にこの作品では効果的に使われ、ブロディが不満タラタラと文句言いながら撒き餌をしてると海面に突然サメがガバ~と現れたり、樽を海面から手繰り寄せようとしたらまたガバ~とサメが顔を出したり、そして遭難した船底の穴からは突然男の死体の顔が出てきたり・・・後にこう言うパターンの演出が増えたけど、この作品が他の映画に与えた影響は大きいね。
その度に劇場は悲鳴の嵐でしたよ・・・アメリカの映画館はいつもこうなんだろうね。

全編見せ場のようなこの映画のクライマックスは沈みゆく船に一人残ったブロディが傾いたマストに腹這いになり、残り少ない銃弾の入ったライフルで迫りくる鮫の口の中に放り込んだガスボンベを狙い撃つ・・・この場面はジョン・ウィリアムスの名スコアが最高調に盛り上げる屈指の名場面ですね。「Smile.you son of a bitch!」(TV版吹き替えでは「死ね化け物!」だったか)の名セリフと共に豪快に鮫が吹き飛ぶが鮫が狂暴で強いだけに見るものの溜飲を下げる見事な結末だと思います。(でも場内あげての拍手喝采には驚いたよ)
この場面スピルバーグ監督の傑作スリラー「激突!」のトラック爆発場面と被ると言う話をよく聞くが両作を比べると海と道路の違いこそあれ 合通じる部分はあると思いますね。

またあまりにも有名なジョン・ウィリアムスの音楽がまた見事に画面とマッチして、恐怖を盛り上げてます。
あの音楽を聞くだけで鮫がやってくるのが充分伝わりますからね~サントラ史上に残る名スコアです。
特にブロディが砂浜で監視してたら、入り江に鮫が現れたという知らせを聞き段々と小走りから全力疾走になって駆け出していく場面での音楽の盛り上げ方は素晴らしいと思います。

この映画を面白くしてる要因の一つにピッタリはまったキャスティングがあります。
ロイ・シャイダーはニューヨークからやって来た生真面目で家庭的な人柄の良いブロディ署長役だが、その真面目で一生懸命さが島の役所の上層部らと軋轢を生み、深刻な事態との狭間で苦悩しながらやがて人食い鮫との戦いに挑んで行く・・・その姿は決して特殊な能力を持った元海兵隊とかハンターとかでなく、ごく普通の平凡な男って所が地味なロイ・シャイダーと重なってピッタリだと思います。

海洋学者フーパーを演じたリチャード・ドレイファスもどことなくユーモラスなキャラでユーモアの中に鮫に関しては理論的に物事を考えて行く姿は印象的で、最初の犠牲者クリシーの遺体を見て「これは船のスクリューに巻き込まれたのでもなく、異常者の仕業でもない・・・鮫だ!」と顔を洗いながら吐き捨てるように言い放つ場面はフーパーの存在価値を観客に印象づける名場面だと個人的に思ってます。

そしてもっとも異彩を放つのが漁師のクイントを演じるロバート・ショー! 圧倒的な存在感は劇中文句なしのピカイチです。
当初リー・マービンをクイント役に予定したらしいが断られたそうな・・・でもリーマービンだったら荒々しさの中にどこか優しさが出てクイントのイメージはどうかと思います。
ロバートショーは荒々しさはあっても優しさなどみじんも感じさせない、どう考えても嫌な奴・・・まさにクイント役は彼ならでは成り立たないと思います。

この3人のバラバラな個性がぶつかりながら鮫を追跡して行く後半のオルカ号の場面は、鮫が出てくる場面は緊迫した雰囲気もあるが、鮫が出てない場面は3人の個性が独特のアンサンブルをかもしだし独特の雰囲気で見るものを画面に惹き付けます。

特にクイントとフーパーが互いに鮫に襲われた傷を自慢し合う場面はいいシーンですね。傷を見せながら武勇伝を語る二人のそばで大都会からやって来たブロディがそっと腹部の盲腸の傷らしき部分を撫でる場面は三人のキャラを明確に出してますね。
やはり「ジョーズ」はこの役者たちでないと成り立たないと思います。

またサスペンスな展開の中にブロディの家族との愛情を感じさす場面も随所に盛り込まれ人間ドラマもキッチリと描写されて、ただのパニック映画になっていませんね。

スリルと恐怖、家族愛などの人間ドラマ、そしてスペクタルなアクション・・・完璧なカメラワークに見事な音楽、そして全編無駄のないストーリー展開が見事なテンポでアッと言う間に「ジョーズ」の世界に引きずりこまれてしまう。
これぞまさに映画という娯楽の真髄といえましょう。

この後、「ジョーズ2」や3D映画「ジョーズ3」「ジョーズ4 虐殺編」などシリーズ化されたけど「2」はまだ見れるけど後は全然ダメでしたね。
勿論、似たような作品がこれ以降次々と製作され、同時期に公開された「シャークトレジャー」てのもありました(未見!)鮫映画は今だにビデオスルーながらどんどんとリリースされていますね。(「ジョーズ」の影響で「シャーク」という映画もTV放映されてたな・・・実際に鮫に襲われる場面があったような・・・)
また鮫以外でも大ダコが襲いかかる「テンタクルズ」、巨大シャチが襲う「オルカ」、人食い熊の「グリズリー」、殺人蜂「スウォーム」タイトルそのまんま「ピラニア」etc・・・まさに動物パニック映画ブームを巻き起こしましたね。

「ジョーズ」のおかげでいつしか「サメ」って聞いただけでついつい興味を持ってしまうようになりました。
何年か前に慰安旅行で和歌山方面に行ったとき、漁港付近をバスで通過した時、バスの車窓から道端にずらっ~と水揚げされた大きなサメが並べられてたけど・・・あのサメと一緒に写真を撮りたいと真剣に思ったよ(嫌な大人だよ・・・)
友人たちと旅行に行けばたまたまそこで「シャーク展」のようなイベントが行われていて、誰も興味なさそうだから、単独行動で見に行ったり・・・(ここで「JAWS」の撮影に使われたレプリカの頭が展示されていた)
フーパーほどではないにしろサメの虜ですね~

勿論、「ジョーズ」関連の品物も今でも持ってますが、当時のサントラLPレコードも擦り切れて針飛びしまくるけど押入れに眠ってるし、25周年記念のサントラ完全版CDも持ってます。
またVHSのビデオテープ1本にDVDが通常版と30周年記念盤の2本と、ついでに「ジョーズ2」のDVDもあります。
劇場パンフレットが公開当時購入(ボロボロ!)したものと古本屋で見つけたもん(保存状態いいので購入した)と2冊あり、そしてつい先日に大阪 日本橋のお宝グッズ店で見つけた公開当時の劇場宣伝チラシ(¥210-)もコレクションに加わりました。

今でもレンタルで鮫の映画がどんどん出てますが、いつも気になりますね~
最近の鮫映画と言えば「オープンウォーター」という沖のど真ん中に置き去りにされた夫婦に鮫たちが忍び寄ってくるシュチュエーションムービーがあったけど、この作品を見に行った劇場で小学3~4年生ぐらいの男の子がお母さんと一緒に見に来ていた。
何となく昔の自分にダブらせて見てしまいました。
私もこの男の子と同じような頃は母親に連れてってもらって映画館によく行ったもんでしよ・・・きっとこの男の子の家にはロードショーとかスクリーンが何冊もあるんやろうな~
そしてこんなミニシアターの鮫映画にわざわざ来てるって事は・・・・・・この子も鮫ファンなんやろな・・・



(1975年 アメリカ映画 124分 シネマスコープサイズ)