またまた、吉村昭の作品だ。
太平洋戦争前夜の攻防を描いた物語と言えば、佐々木譲の「択捉発緊急電」を思い出す。 あれは全くの創作➰アメリカのスパイの話だが、面白かった。

太平洋戦争前夜の攻防を描いた物語と言えば、佐々木譲の「択捉発緊急電」を思い出す。 あれは全くの創作➰アメリカのスパイの話だが、面白かった。
こちらは、南方作戦の指令書が事故で紛失した、という物語から始まる日本軍の大戦前夜の攻防を描いた実話の物語だ。
12月8日が開戦。12月1日にその命令書が遭難にあったという➰史実に基づく、ドキュメンタリーなのだ。
命令書の発見がどうだったは、読後に知るのだが、ともかく、12月8日の奇襲作戦は大成功なのだから、ハラハラ感は通常出ない。そこを緊迫した状況として書くのが作者の腕。まあ、主題は戦争遂行に向けて馬鹿げた行動をする天下の秀才の集合体➰大本営だよな。
遭難、敵からの逃亡は筆者の得意とする描写だ。
物語全体としては、開戦前の慌ただしい軍の動向が、いくつかのエピソードとして語られている。これら諸々の軍の工作動向が語られ、1冊の本にまとめられている。
一歩引いて考えれば、組織の目標のために現場で各自が使命感をもって創意工夫をする、そろそろ組織人から卒業する僕には、懐かしい人々の活躍でもあった。➰誤解の無いようにも