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月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

アミガサタケ栽培は儲かるのか??

2020-04-25 21:24:12 | キノコ栽培
さて、先日に日本初のアミガサタケ栽培の記事を書いたが、商売として見た場合、アミガサタケ栽培はどうなんだろうか?検証してみよう。

まず、前回に紹介した中国のブラックモレル産地からの動画が、せっかくビジネスについての情報盛りだくさんだったので、その内容を紹介しよう。なお、金額に関しては《1元=15.5円》で換算している。

まず、気になるのがアミガサタケのお値段
アミガサタケ優良品は1本が平均10g(中身が空洞なので見た目より軽い)で、約30円。キロ当たりにすると3100円だ。
品質の劣る一般品はキロ当たり2160円の値がつく。
うまく育てれば優良品率は7割ほどなので、平均するとキロ当たり2800円ということになる。

ちなみに日本のキノコの卸価格を見ると、エノキタケはキロ当たり200円前後、シイタケは1000円前後、それ以外のキノコはキロ当たり400~500円と言ったところだから、卸価格で2000~3000円がつくアミガサタケは高価なキノコだと言っていい。

では土地あたりの生産性はどうだろうか。
中国で標準的な200坪(正方形にしたら26メートル四方、小学校の25メートルプール2つ強くらい)の畑で、うまくやれば200キロ採れるそうだから、56万円の売り上げがあることになる。あれ?意外と少ない?
中国の給与水準は近年うなぎ登りで、特に都市部の中間層では日本人の平均を上回ってきているくらいだが、農村地域はいまだ置いてけぼりで、その平均年収は100万円に届かないと言われている。
アミガサタケ栽培は、あくまで冬の裏作で、夏には夏の作物が育てられるから、それを考えれば悪くない収入なのではなかろうか。

また、アミガサタケは乾燥品として流通させられるのが強みだ。乾かすと重量が15%まで減ってしまうが、値段は10倍以上(キロあたり25000~37000円)で売れるようになる。乾燥品にすることで経費と手間はかかるが、うまくすれば売り上げを100万円近くまで伸ばすこともできる計算になる。


今度は、日本国内を見てみよう。
アミガサタケは日本国内でも採ることができるが、販売するほど採るのは難しい。仮にキノコハンターが血眼になって採ったとしても、せいぜい数十kg止まり。乾燥したら5キロくらいだ。高級料理店に直接卸すくらいはあるが、市場に出回るほどではない。市販で出回っているのはほぼすべて乾燥の輸入品だ。フランス産が多いが、フランスで袋詰めしたというだけで原産国は別だったりすることも多い。パキスタン、チリなど。
市場価格を見ると、20g入りの袋に2500円とか3000円とかいう値がついている。キロ当たりにすると、120000円~160000円ってところか。さきほどの中国の卸し価格の4~5倍。ひとつ桁が違っている。

中国で採れた200キロのアミガサタケが、もしこの値段で売れたとしたらいくらになるだろう。200キロの生アミガサタケを乾燥すると30キロになる。これをキロ当たり14万円で売ったとすると!420万円!!やったーーー!!

だが、ちょっと待ってほしい。これは、あくまでも小売り価格だ。フランスから輸入された天然モノとしてのプレミアもついている。もし国内で栽培を始めたらこの値段がつかないことは頭に入れておいた方がいい。そう考えると、中国の倍の価格・キロあたり50000~75000円くらいが妥当な線じゃないかなぁ。だとすると一回の収穫で150~225万円か。うーん、だいぶ大人しくなったな。


さてさて。ここまでこまごまと電卓を叩いてきたのだが、実はアミガサタケは、他の栽培キノコと比べると大きな足かせがあることにお気づきだろうか?

それは「畑が要る」という足かせだ。
キノコの菌床栽培では、菌床のビンやブロックを棚に並べることで何段も重ねることができる。そのおかげで、狭い土地でもたくさんの菌床が並べられるから、高い収量を上げられる。だがアミガサタケは畑でしか育てられないので、上に積み重ねることはできない。
この時点で生産効率は半分以下だ。

さらに、もう一つの足かせがある。それは「回転効率が悪い」ということである。
中国の栽培を見てわかる通り、これは冬から春にかけてしか行われない農法だ。年に一回。

一方で、日本の他の菌床栽培は、ひとつの施設で年に何回も収穫することができる。大規模な空調施設を持っているところならば、休みなし365日態勢で生産し続けている工場も多い・・・というかそれが普通だ。

仮にアミガサタケ畑をフル稼働することを考えると、年に何回くらい栽培できるだろうか。一回の発生にかかるのが40日。でも収穫が終わるまでに少なくとも10日くらいかかるだろうし、準備や片付けも必要だから、最低でも60日は必要だろう。そうすると、最大で年6回収穫することができる。
実際には真夏の栽培は困難だし、そもそも季節外れにアミガサタケがちゃんと育つ保証はない。その上、続けて栽培し続けると病気が発生し収量が落ちていく「連作障害」が起きる心配もある。そういった技術的な困難をぜんぶクリアしたとして、それでも年4回くらいが限界じゃなかろうか。

さっきの一回当たりの売り上げを4倍してみよう・・・すると!!年商600~900万円!!
うーん、でもこれMAXうまくいった場合の、しかも売り上げだからな。この広さだと一人でやるの厳しそうだから人件費かかるし、土地やハウスはもちろん、菌床を作ろうと思ったら専用の設備もいる。菌床の殺菌や暖房には燃料が要るし、おが粉代、タネ菌代、水道代、培養施設のランニングコスト、その他諸経費を差し引いたらどのくらい残るんかな・・・。
あれ?けっこう微妙じゃないか??

ここまで計算してきて重大なことに気づいてしまった!!
アミガサタケ栽培はあんまり儲からない!(+o+)

欧米で栽培法がそれなりに確立してるっぽいのに大々的に栽培してる気配がないのは、もしかしたらこういう理由によるのかもしれない。
それでもアミガサタケ栽培がしたい!という人のために、いろいろ前提条件を考えてみよう。

①乾燥アミガサタケは高級料理店やホテルに直接ふっかけてキロ10万円で売る!
②菌床は購入する。アミガサタケを植えろといってゴリ押しできるような、とっても優しい菌床メーカーが好ましい。
③放棄された農業ハウスをタダ同然で借り受ける。だいじょうぶ、捜せば見つかる!あ、ついでに井戸がついてるといいな♡
④アミガサタケを愛でるためならボランティアで働けるという、天使のような労働力を見つける
⑤副業を持つ

どうだ!これならバリバリ儲かるぜ!!

長々と書いてきてこの結論かよ(^-^;
ハルカインターナショナル、がんばれー!
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日本初のアミガサタケ栽培!

2020-04-16 22:34:00 | キノコ栽培
先日、岐阜県に本拠をおく株式会社・ハルカインターナショナルから、センセーショナルな発表があった。

『日本初・アミガサタケ(モリーユ)の人工栽培に成功』

ハルカインターナショナルと言えば、キノコの菌床栽培として日本で初めて有機野菜規格(有機JAS認証)を得たのをはじめ、国内初のキヌガサタケ栽培、さらにそれを足がかりに循環型社会を目指す事業提案(SDGs)、おまけにクラウドファンディング募集など、旧態依然だった業界に現代的ビジネスの旋風を巻き起こしている、いま注目の企業だ。

そしてアミガサタケ。またの名をモリーユ!またはモレル!
春の訪れを告げるキノコとして広くヨーロッパで愛されており、食用キノコとして高い評価がある。
特にフランスで好まれ、キノコの王様・ヤマドリタケに匹敵する価値を持つほか、「筋金入りのキノコ後進国」とすら言われるイギリスやアメリカでさえも人気がある。アメリカには「モレル・フェスティバル」を開催する町もあるらしい。

その人気ゆえ、アミガサタケ栽培を夢見る者は多く、過去に幾人もチャレンジしてきた。しかし、そのほとんどが失敗するか、または部分的に成功するものの、安定した生産が難しく商業ベースに乗らない、などと聞いていたが・・・。

調べてみると、なんとこの10年ほどの間に、中国でアミガサタケ栽培が確立されたようで、かなりの量産に成功している、との情報があった。え?10年?けっこう前からやってるやん!聞いてへんぞ。
で、意外なことに、YouTubeで検索すると動画がたくさん落ちている。栽培技術とかさぞかし難しくて社外秘にしてるんじゃないかと思ったら、けっこうコアなことまで公開している。すげー、オープンだわ中国。

中国で栽培されているアミガサタケは、イエローとブラックの2種類ある系統のうちのブラックの方。
日本ではトガリアミガサタケに代表される、こげ茶色で先端の尖ったタイプのアミガサタケだ。

中国のアミガサタケ栽培についての論文にはMorchella importuna (モルケラ インポルトゥナ・・・学名。和名はついてない)という種類が使われると記してあるが、現地の栽培品種がすべて同種かどうかはよくわからない。

現地では『羊肚菌(ようときん・イァンドゥヂィン)』・・・”羊の臓物キノコ”と呼ばれている。羊の臓物などと言われてもなんのこっちゃわからんだろうが、焼肉の『ハチノス』といったら分かる人がいるかもしれない。ちょっとマイナーな焼肉の部位で、牛の第二胃(牛は胃が四つある)の肉のことを指すが、『羊肚』もおそらくハチノスと同じ役割を持つ臓器だ。表面が蜂の巣のように多角形の凹凹で覆われており(グロテスクゆえ閲覧注意)見た目がアミガサタケに似ている。

アミガサタケは菌床をつかって栽培するが、シイタケやエノキタケのように棚にならべるのではなく、畑に埋めて育てる。アミガサタケを育てるには菌糸が菌床に蔓延するだけでは足りなくて、「菌核」という菌糸のカタマリを作らせないといけないのだが、それは土の中の微生物の力を借りないとうまくいかないようだ。

四川省の徳陽という地方で大規模栽培している産地の動画を見てみよう。

①11月ごろに菌床を仕込む。おがくずを主原料にした培地を袋詰めして殺菌したのちに菌を植えつけ、3カ月ほど培養する。
②2月ごろ、黒いビニール製資材(寒冷紗)で覆った簡易ハウスをつくり、圃場に菌床を埋める(または砕いてバラまく?)
③15℃、スプリンクラーで多湿を保ちながら約40日、圃場に菌を蔓延させる。コケが生えるような状態がベスト。
④3~4月、菜の花が咲くころに収穫

といった流れである。思ったより粗放的に栽培してる感じで、そんなに複雑なノウハウがあるようには見えない。菌糸を培養するだけならわりと簡単と聞いたことがあるし、適した品種さえ見つかれば、栽培は難しくないのかもしれない。

ちなみに、中国で標準的な200坪(正方形にしたら26メートル四方、小学校の25メートルプール2つ強くらい)の畑で、最大200kgの収量が見込めるそうだ。
なんかこの動画、アミガサタケがいくらで売れるかとかすごい細かく解説してるけど、一般向けの番組にここまで必要か?(笑)

ちなみに、先ほどの論文にはアミガサタケ栽培にENBなるものが重要と記してある。ENBとは意訳すると「ポイ置き栄養袋」と言った感じで、小麦や米ぬかを袋に詰めて殺菌しただけのものなのだが、これに穴をあけて畑の地面に置いておくと、アミガサタケの菌糸が穴から侵入して栄養源にする、という。他のキノコ栽培では目にすることがないユニークな方法だ。ただ、この四川の産地では、ENBにあたるものが使われている気配がない。


いっぽうで、イエローモレルの方も栽培に向けて研究されているようだ。
アメリカでは、イエローモレルの菌床が実際に販売されている。探してみると、自宅の庭で栽培にチャレンジしている動画もある。

ただ、これが大規模に栽培されているという話は聞かない。あるいは企業秘密として公にしていないだけかもしれないが・・・
思うに、イエローモレルはブラックモレルに比べて物質を分解する能力が弱いのかもしれない。野外で観察すると、ブラックモレルが落ち葉がたまったような肥沃な場所を好むのに比べ、イエローモレルは清潔な開けた場所を好む傾向がある。木や草の根に菌根を作ることができるそうなので、その差なのかもしれない。

・・・と思ってたらこんな記事を見つけた。これも調べないと・・・

以上、長くなったが、ビジネスとしてアミガサタケ栽培はどうなのかについても後日まとめてみようかと思う。









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キノコ界に衝撃!「バカマツタケの完全人工栽培に成功」を検証する

2018-10-11 07:01:07 | キノコ栽培
先日、多木化学株式会社が企業広報で衝撃的な発表をした。

『バカマツタケの完全人工栽培に成功 』

バカマツタケはマツタケに近縁のキノコである。松茸とは発生時期がずれていること、松じゃなくて広葉樹の下に生えることから「おかしなマツタケ」「ちょっと狂ったマツタケ」とされて、いつしか『バカマツタケ』などという残念な名前をつけられてしまったが、香りは本家マツタケをしのぐとも言われている。最近はマツタケの姿を見つけるのが難しくなったが、バカマツタケも珍しいキノコであり、私もまだ見たことがない。

そのバカマツタケの完全人工栽培に成功したというのである。

ここで注目すべきポイントをいくつかあげよう。
①バカマツタケは菌根菌である
バカマツタケは菌根菌、生きた木の根にとりついて樹木を助けつつ栄養をもらうキノコである。菌根菌はデリケートで栽培が非常に難しい。まずキノコを作るどころか、シャーレで菌糸を培養する段階からうまくいかないことも多く、かつて菌根菌の完全人工栽培は不可能とすら言われていた。
実際これまでも、無菌で育てた樹木の苗木に菌根菌を植えつけて植樹するタイプの不完全な人工栽培にはたくさんの前例があるものの、今回のように完全に人工的環境で育てたという例は非常に少ない。特にマツタケ近縁種としては初めてで、これは定説をくつがえす画期的な発見だ。

②バカマツタケの子実体(キノコ)を発生させるシグナルを発見した
マツタケは過去数十年にわたり栽培が試みられてきたが、ほとんどうまくいかなかった。栽培がうまくいかない最も大きな原因は「菌糸が培養できたのにキノコを作れない」ことにある。

ふつうの栽培キノコ(腐朽菌)は、ある程度の湿度や光の条件を満たしたえうえで〇〇℃を下回るとキノコが発生する、などといった簡単な条件でキノコを作るのに対し、マツタケはそんな簡単にはキノコを作ってくれない。
おそらく、温度・湿度などの条件にくわえて微量な化学物質が発生の引き金であったりするんだろうが、まだよくわかっていない。

しかし、今回のバカマツタケ報告ではそのシグナルを見つけたらしいことが書かれている。これまでに発生した数が14本ということで、まだ不完全かもしれないが、大きな壁を突破できたのは間違いない。

③菌糸の培養スピードが早い
マツタケ栽培の大きな障壁となっていたのがもうひとつある。菌糸の培養スピードが非常に遅いことである。
培養のスピードが遅いと研究がちっとも進まないのはまあ我慢するとしても、培養管理中の維持費(特に光熱費)が余分にかさんでしまうのは痛い。仮に栽培に成功したとしても、生産コストが高くついてしまうからだ。さらに、培養期間が長い分、培養施設もより広いものが必要になる。せっかく作った人工栽培マツタケが天然モノと同じ値段だったら、ちゃんと売れるだろうか?

これまでの研究で、マツタケでもさまざまな添加物をくわえることである程度のスピードアップをはかれることがわかったようだが、今回のバカマツタケは培養期間が3カ月とのこと。なんとシイタケと同じ速さである。このスピードで回転できたらかなりの効率生産が可能だ。

④東証一部上場の企業広報における発表である
今回の発表は企業の広報による。新聞や雑誌などでの発表ではない。話をふくらませたり、ねじ曲げたりすることもあるマスコミを抜きにした一次情報なので信頼がおける。
ましてや年商300憶円の、しかも上場企業である。投資家に対して責任を持たなければならない以上、そうそう出来もしない大風呂敷を広げるわけにはいかない。

ちなみに多木化学の株式は今回の発表後に買いが殺到、3日連続で値がつかなかった。株価は発表前の5150円から10月11日時点で9230円、たった4営業日で1.8倍にまで急騰した。



◎気になる今後の展開
「キノコの発生シグナル」と「培養スピード」という大きな壁をすでに突破している時点で、この研究はかなり有望と言っていい。少なくともこれまでの研究とは段違いの成果だ。数年後の食卓に栽培マツタケが上がることは充分にありうる。

さて、今後気になるのは

多木化学がどのように事業化するつもりなのか?

②バカマツタケの生態について

③他の菌根菌への応用が可能か?



については、肥料・化学品メーカーである多木化学が、キノコ生産・販売のノウハウを持っていないのが懸念される。
まず生産ラインを確立できるか、それができたとしてどれだけ生産するのか、どんな価格で売るのか。どんな形態で売るのか。
いくらマツタケが日本のキノコ界の横綱だといっても、これを収益に結びつけるまでには多くの難題がある。
それをどのようにクリアしていくのか?とても興味深い。

今回の発表から、バカマツタケが腐生性(木材などの有機物を分解して栄養にする性質)を持っていた、と考えていいように思うのだが、実際はどうなんだろうか。

マツタケ研究の権威・小川眞は、バカマツタケに多糖類を分解する力はなく、扱いも難しい、栽培はあまり有望ではない、としていた。
ただ、系統によって性質が違うともあり、個体差が大きいのかもしれない。
このあたりのバカマツ生態の解明は、キノコフリークとしてとても気になっている。今後の研究に期待したい。

これも気になるところだ。たとえば菌根菌であるホンシメジは、㈱タカラバイオにより腐生性の強い系統が発見されていて、すでに商品化している。他にも栽培可能な菌根菌があるんじゃなかろうか。
ただ、研究する価値のあるほど儲かるキノコの種類はそうそうない。ヨーロッパでスター的存在のポルチーニ(ヤマドリタケ)・トリュフ・モレル(アミガサタケ)、あとは個性の強いコウタケあたりか。


まだまだクリアしなきゃいけないことは山積みかもしれない。それでも、できたら500円くらいでバカマツタケが買える日が来たらいいなぁ、と切に願っている。






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きくらげ栽培の真実(後編)

2017-12-05 22:14:54 | キノコ栽培
前編はこちら

さて、データで追えるだけ追ってみたけど、実情はどうなんだろう。キノコ動向に詳しい友人に聞いてみた。

友人Nは情報収集に長けた元同僚だ。今はシイタケ栽培で独立する準備のため関西にいる。久々の電話だったが、世間話もそこそこにキクラゲ栽培について聞いてみた。

N「うん、まあまあ調子いいみたいよ?」

鳥「キクラゲ生産者って多いの?」

N「いるいる。けっこう多い。このあたりは土地柄なのか障がい者雇用施設が多いんだけど、どこもかしこもキクラゲやってる。小規模でもできるし、傷みにくいから扱いやすいんじゃない?障がい者雇用でキノコ栽培っていうビジネスの元締めを商売にしてる人がいるみたい。」

鳥「そうなんだ。でもキクラゲってあんまり一般に馴染みないよね。そんなに売れるんかな?」

N「さすがに地元の農産物直売所じゃ生キクラゲは飽和状態だねー。スーパーでも大したこと売れんらしい。でもあまった分は元締めの乾物屋がぜんぶ引き取ってくれるって。値段もまあまあみたい。だから売り先に困ることは一切ないんだって」

鳥「えー!いい商売じゃんか!そんなに需要あるとは思えんけど」

N「だよねー。でね、そのキクラゲが最終的にどこで売られてんのか気になったから聞いてみたんだけど、よくわからんって。ていうか、その人はそういうことに興味ないみたい」

鳥「確かに国産の乾燥キクラゲが市販で売られてんの見んなー。どこ行ってんだろ?そりゃそうと、この際シイタケやめてキクラゲ栽培にしたら?」

N「んー、どうだろね。生産量が増え続けてるからそのうち値崩れするんじゃないかな」

鳥「まあそれはありうるねー。調子こいて増産したら値崩れって、キノコにありがちだし」

N「やっぱりシイタケにかぎるね」

鳥「あはは、さすがのシイタケ愛だね~」

まあこんな感じのやりとりだった。


国産乾燥キクラゲの売り先に関しては自分で考えてみたが、まず業務用として流通していることが予想される。中華料理店でもグレードの高い店や、あるいはホテルなど、食材にこだわる店ならば高くても国産を仕入れるだろう。中国人観光客も増えているので、思ったより出番は多いはずだ。チェーン店としては長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」が国産食材にこだわっており、キクラゲも国産品を用いている。

他には、輸出も考えられる。調べたところ、平成28年には6.4tを輸出している。おもな輸出先はアメリカ、香港、フィリピンなど。国内生産量が約59.5tだから、その割合は10パーセント強ということになる。日本の農産物としては決して小さくない数字だ。


他にもいくつか情報を仕入れた。まとめてみよう。

キクラゲ栽培のメリット

・初期投資がかからない
・冬がメインのシイタケの裏作としてピッタリ
・暑さに強い
・キノコが丈夫で扱いがラク
・乾燥すれば日持ちがするのでストックできる

キクラゲ栽培のデメリット
①認知度が低く、特に生キクラゲでは市場価格の安定性に欠ける
②冬場に暖房をかけて栽培しようとしても見合わない
③生産量が増え続けており、値下がりの圧力が高まっている


ざっとこんなところかな。
メリットは見ての通りとして、デメリットを検討してみよう。

①は裏返せば、今後大化けする可能性があるということ。一般家庭で生キクラゲを料理に使うのが当たり前になれば、価格も安定する。

②キクラゲの栽培には温度を保つことが欠かせないが、密閉して暖房を焚きまくると、今度は酸欠の障害がでる。もちろん燃料コストもかかるので、冬場の栽培は敬遠する人が多い。ただ、施設を巨大化して空調完備の大規模施設を作れば話は違ってくる。それに見合う利益が上げられるかがポイント。九州や沖縄など、暖かい地域は有利。

③これが一番のリスク要因。需要と供給のバランスで価格は決まるから、供給量が増えれば価格は下がることになる。消費量が急激に増えることは考えづらいので将来的に価格が下がるのは間違いないだろう。零細生産者にとっては厳しい。しかし……

現在キクラゲは中国からの輸入に頼り切っている。もし何かがあって中国からのキクラゲが高騰したら、あるいは輸入がストップしてしまったら。国産キクラゲは一気に檜舞台に駆け上がることになるだろう。そしてもうひとつ、キクラゲには輸出の道がある。海外という広大な消費市場が開ければ、キクラゲ栽培の未来は明るいだろう。

【結論】
キクラゲ栽培は今後儲かる気もするし、儲からん気もする


って、何も言ってへんのと同じやんけ(´・ω・`)
でも……大規模化が進み、販売価格が低下、零細が淘汰されていく将来は見える気がする。




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きくらげ栽培の真実(前編)

2017-12-02 22:14:51 | キノコ栽培
先日11月30日、NHKの番組『所さん!大変ですよ』でキクラゲの特集を放送していた。

キクラゲ栽培キットで楽しみつつ健康生活、栄養満点・ダイエットにもキクラゲが効果的、キクラゲ栽培で窮地を脱したシイタケ農家、など、最近、じわじわとキクラゲの注目度が高まっているというような内容だった。

さてここで気になったのが「キクラゲ栽培」は儲かる!という話。

番組では脱サラして菌床キクラゲ栽培を始め、今や年商一億円をあげる人の紹介があった。番組内では、キクラゲを作って売るだけではなく、キクラゲ菌床を他のキクラゲ生産者に販売したり、あるいはノウハウや施設なども提供したりすることで大きな売り上げを出している、とのことだった。

私もきのこ生産者の端くれでありながら、うかつにも最近のキクラゲ動向をぜんぜん把握してなかったので、ちょっと調べてみた。


◎キクラゲとは?
ここで言うキクラゲは主にアラゲキクラゲのことを指す。中華料理によく入っているコリコリするタイプのキクラゲだ。肉質が硬く丈夫なので、栽培から出荷まで扱いやすいのが特徴。他にもアラゲキクラゲの白色変異タイプが『白きくらげ』として売られている。また、『本きくらげ』の名でアラゲとは別種の(ノーマル)キクラゲを栽培している生産者もわずかながら存在しているようだ。こちらはプルプルとした食感を楽しむことができる。

ちなみにシロキクラゲというキノコも存在する。これはさっき出た「白きくらげ」とはまったく違い、アラゲ&ノーマルとはちょっと縁が遠い別の種類のキノコだ。こちらも栽培もできるらしいが、どのレベルまで実用化してるかは不明。さらについでに言うと中国産シロキクラゲ(銀耳)として出回ってるものはアレきっとシロキクラゲじゃないよな。ハナビラニカワタケの白いヤツって感じ。

◎アラゲキクラゲの栽培特性
ここは最も生産量の多いアラゲキクラゲ菌床栽培に的をしぼって話す。
・培養日数が短い(種菌を植えつけてから60日ほど。ちなみにシイタケだと90日以上)
・暑さに強い
・発生には高い湿度が必要

特に「暑さに強い」という強みを生かして、夏に栽培するのが一般的。秋から春までしか収穫しないシイタケ農家の裏作としてピッタリだというのが普及の大きな要因になったと思う。わりと簡単なハウスでも水をビシバシかけまくればなんとか栽培できてしまうので、初期投資にお金もかからない。

◎キクラゲの生産状況
近年、生産量を急速に伸ばしている。農水省の統計を見ると、平成22年に14.67tだった乾物キクラゲの生産量は6年後の平成28年に59.57tに、155.3tだった生キクラゲの生産量は682tに達している。いずれも4倍以上という急増ぶりだ。ただし、国内のキクラゲ供給は大半をいまだ中国からの輸入に頼っていて、その量は乾物で2350t(平成28年)と圧倒的。日本のキクラゲ消費に占める国産品の割合はいまだ5%にすぎない。

ちなみに生産地域は暑い地域が目立ち、とくに九州で多い。

◎キクラゲの消費
従来はほとんどを乾燥品に頼っていたが、近年は生キクラゲとしての流通も目立つようになり、スーパーの店頭でもよく見かける。ただ、扱いがメジャーになったかと言えば、それはやや微妙かもしれない。平成25年から27年までのわずか2年で生キクラゲの生産量が倍増しているが、翌28年に頭打ちになっているところを見ると、ひとまず落ち着いたと見るべきではなかろうか。キクラゲは生で売った方が利益率が高いけど、パッケージと販路をどうするかが悩むところだろう。

一方で乾燥品は業務用としても使われるために根強い人気。中国産は常々安全性を疑問視されているが、なにせ安いからねぇ。末端価格はネット上で調べるかぎり中国産が100gあたり200~500円、国産が1300~3000円くらい。やはり歴然とした差がある。

……後編はこちら

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もし栽培できたら儲かりそうなキノコを考えてみる その②

2017-01-13 23:49:20 | キノコ栽培
あけましておめでとうございます(遅っ!!)

とりあえず個人的大本命のカンゾウタケが紹介できたので、そこで燃え尽きてしまいました(笑)

今年はぼちぼちしか更新できんかもしれんけど、気長によろしくっ!


……さて、「栽培できたらいけそうなキノコ」だが、続き行ってみよう。

その②トリュフ  味 ★★★  栽培の容易さ ★★★  注目度 ★★★★★

国内栽培に高い可能性
世界三大珍味とも呼ばれているトリュフ!
フランスやイタリアなどで特に好まれ、その高級さゆえに「黒いダイヤ」との異名を持つ高級食材である。
トリュフ(セイヨウショウロの仲間)には、食用・非食用を含め、たくさんの種類があり、そのうちのいくつかは日本にも産する。地下に生えるキノコであるため、これまでキノコ好きですら注目していなかったが、近年、そういった地下生菌を積極的に探す人が増え、各地で発見の報告が相次いでいる。地域によってはごく当たり前に発生するようだ。

栽培は古くからなされていて、かつてフランスでは広大なトリュフ園があったという。
トリュフは基本的に木の根にとりつく菌根菌であるため、シイタケやエノキタケを育てるような菌床栽培とは違い、露地で行う「林地栽培」が基本らしい。木の苗の根っこにトリュフの菌を感染させ、それを植え付ける。栽培には時間がかかるが、決して難しい方法ではない。現在でも世界各地で栽培されている。


日本に産する食用トリュフは、イボセイヨウショウロ、クロアミメセイヨウショウロ、ホンセイヨウショウロなど。
種類にもよるだろうが、トリュフは基本的にアルカリ土壌、高温・乾燥を好むといわれる。アルカリ土壌は別として、近年の日本は異常ともいえるほど高温・乾燥の時期が増えているから……さっき発見の報告が増えてるって言ったけど、もしかしたら発生数が実際に増えているのかもしれない。そういう点でも今はチャンスだ。

ただ、「トリュフっておいしいの?」って声も聞く。確かに、アレは日本人の口には合ってないような気もする。が、そんなことはいいのだ、儲かりさえすれば! ひっへっへっへ^q^

日本には本格フランス料理やイタリアンの店が大量にあるので、ビジネスとしては非常に可能性のある話だ。国内での栽培ノウハウはおそらく皆無だが、海外でできて日本でできないということはないはず。もし時間と土地があるのならば、ぜひチャレンジしてほしい。


※トリュフに詳しい最新の記事リンクしておく。
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もし栽培できたら儲かりそうなキノコを考えてみる その①

2016-12-30 01:25:49 | キノコ栽培
エリンギ、ホンシメジ、タモギタケ、ハナビラタケ、ササクレヒトヨタケ・・・

いま、かつて見ることのなかったいろいろなキノコが栽培可能になり、市場に出回っている。
たとえばキノコ最大手のホクトは、新品種『霜降りヒラタケ』を開発し、テレビCMをうって市場にアピールしている。

同業の私から見ても、日持ち・味・ボリュームの点で、3拍子揃ったいい商品として目に映る。でも、売れているかというと、うーん。
データがあるわけじゃなく、ただのイメージでこう言ってしまうのも良くないんだけど、「人気がある」って感じには見えない。「なんか他のキノコとシェア食い合ってんなぁ」ってのが正直な印象だ。

栽培キノコは工場の大規模化により、年々生産量を拡大し続けていたが、それもつい5年前くらいに頭打ちになった。そもそも消費量はこの15年くらいあまり変わっていないのだ。この状況でさらに新しいキノコ栽培を始めたとしても、けっきょく他のキノコと競合してしまうので「大ブレイク」みたいのはなかなか期待できない。

じゃあどうすればいいか。流通量の多い、ふつーのキノコ栽培を続けてコストカットに努めましょ!ってのが正論。でもねぇ。

・・・やっぱ栽培キノコの新規開拓ってのは夢とロマンがあるのよ!

ということで。これから栽培を始めたら有望なキノコは何かをキノコマニアの立場で考えてみた!

考察:おいしいだけじゃダメ
結論から言おう。「おいしいだけじゃ広まらない」!
ずば抜けておいしいはずのホンシメジやハタケシメジのシェアがあまり広がらないのがいい証拠である。かと言って価格競争では今のエノキ、ブナシメジ、エリンギあたりに勝てるわけがないので、いま目指すべきは「個性」。これに尽きる。

マツタケを見ればわかる通り、個性のあるキノコは、オンリーワンとして他のキノコとシェアを食い合わない。


その①カンゾウタケ   味★★  栽培の容易さ★★★★  注目度★★★★
栽培キノコ界の超ダークホース
すでに栽培が可能とされていて全く流通していないものとしてカンゾウタケをあげたい。赤い!酸っぱい!なんかキモい!!ということで、個性的であることに異論をはさむ余地はまったくない。問題は、その赤さと酸っぱさにあまりにも馴染みがなさすぎるということ。キノコが赤い時点でドン引きなのに、なおかつ酸っぱいとか、明らかにやりすぎである。なお、大多数のキノコファンのあいだでも「マズい」というのが共通認識のようだ。

しかし!マズいからこそ誰も注目していない。そこにこそチャンスがあるともいえる。
本当はマズいのではないのだ。まだおいしい食べ方がきちんと研究されていないだけ!この日本の高い調理技術にかかれば、きっと「日本人の口に合うおいしいカンゾウタケ料理」が見つかるであろう。そのとき、カンゾウタケは未曽有のブレイクスルーを迎えるだ!グワハハハハ!


毎度、口をすっぱくして言っている(カンゾウタケだけに)が、塩をしっかり効かせてソテーするとかなり旨い。生でも食えるという触れ込みだが、味的には論外。
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逆立ちシイタケ

2012-06-03 17:27:28 | キノコ栽培
伝説の逆立ちシイタケ再び!
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ゴミは各自持ち帰ろぅ

2011-07-01 19:22:07 | キノコ栽培
しりきれトンボみっけー!

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おじょーちゃん

2011-06-02 19:48:51 | キノコ栽培
がんばるぞーっ!

ってゴメン、意味不明。
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珍品・逆立ちシイタケ

2011-05-02 19:57:56 | キノコ栽培
珍品発見!



逆さに生えとる……

栽培してるとどうしても奇形が出る。その中でも「逆立ちシイタケ」はかなり珍しい部類だけど、ここまで美しいのは初めて見る。

悲しいかな、採っちゃうとただのシイタケなんだけどね。

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秋深し

2009-10-25 21:36:16 | キノコ栽培
もう10月もあとわずか。もう少し寒くなればいよいよ鍋シーズンの到来、シイタケの出番だ。寒い日の夜はナベで決まり、さあみなさん、どんどんシイタケを召し上がれ……と大いに宣伝したいところだが、あいにく生産量が需要に追いつかないのがこの時期の常。年末まで注文や在庫とにらめっこしながらの日々が続く。個人的には1年で一番しんどいところだけど……そんでも売れなくて困っている自動車や家電なんかの業界に比べれば恵まれてるよねー。ここへ来たかいがあるってもんだ。

最近はキノコの仕事が忙しくて、趣味のキノコまでは手が回らない。

ジレンマっていうか、必然的っていうか……ま、ぼちぼちやっていきましょ。
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秋の気配

2009-08-21 21:52:31 | キノコ栽培
盆が過ぎた頃になって、ようやく夏らしい日差しが見られるようになった。とはいえ、去年のような殺人的な暑さには遠くおよばない。夕暮れ時などには、そこかしこに秋の気配を感じる。

スーパーではいそいそと秋モノの売り場作りがはじまった。栽培キノコの出番だ。

今年は日照不足のせいで野菜が全般的に高い。スーパーで安売りの主力とも言えるジャガイモや玉ネギなどは特に影響を受けたようだ。このあたりの穴を埋めるべく、天候の影響を受けづらいキノコに目をつける店も多いのかもしれない。売れ行きは上々だ。

さーて、これから忙しいぞー。


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