月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

『カッパときのこ』

2011-02-18 20:35:39 | キノコ本
『カッパときのこ』  魔神ぐり子 著

クールなカッパとノータリンなきのこがドタバタ漫才を繰り広げるギャグ漫画。

一言で言って駄本。(ああ、言っちまったよ)

というか、この程度のマンガが単行本化されたことにもっとも疑問を持っているのが作者自身で、そのこと自体をネタにしているあたり、もはや救いがないと言うべきか、それともしたたかというべきか。やる気のない装丁(これ自体もネタ)が全てを物語っている。

女性作者とは思えない下ネタの嵐&過激ドツキ漫才は『サイバラ茸』の西原理恵子の系譜か(そんな系譜があればの話だけど)。毎回ひどい目に遭い、血まみれになって倒れているきのこが哀れ……

ゴメンナサイ、けなしてから言うのもなんだけど、こういうしょーもないマンガ、私大好きです。

さすがにこれじゃまずいと思ったのか、描き下ろし四コマ漫画2作品を追加収録。それにしてもブックオフでこの本が一冊だけ棚から引き抜かれて置いてあったのを見つけた時は運命を感じたよ……ホンマしょんない運命だけど。


※サービス:カッパときのこの表紙でのやりとり

きのこ「単行本になるのはいいけどさ まずはこのタイトルはダメだろって マンガのタイトルってものすごく重要だぜ?読者が興味をいだいて本を手に取るかどうかが売上げを左右するんだし」「そんなワケでタイトルをいじるべきだと思う 今のままじゃ極一部のマニアが買うだけだ!!」「飽和状態の出版業界で手を抜いてはいかんのだよ!!」

カッパ「糞偉そうに言うからには読者の食指を刺激するタイトルを考えられるんだろうな?ええ? 言ってみろよホラ」

きのこ「…えーと」「『カッパときのこと辛そうで辛くない少し辛いラー油』?」

カッパ「表紙で時事ネタとは冒険するにもほどがあるぞ」

『キノコの魅力と不思議』

2011-02-09 20:57:54 | キノコ本
『キノコの魅力と不思議』 小宮山勝司 著

「21世紀を賢く生きるための科学の力を培う」というポリシーの下、創刊された『サイエンス・アイ新書』の一冊。
近年のブーム(といっても消費者のではなく出版サイドでのブーム)で、新書の創刊が相次ぎ、新書という枠組みが随分拡張された感があるが、この本も新書でありながらオールカラーで画質のいいキノコ写真をバリバリ載せており、ヘタなハンディ図鑑ならばビジュアル勝負でも負けそうなシロモノ。ひと昔前から見れば隔世の感、といったところか。

さて本書、サブタイトルに『見た目の特徴・発生時期・場所から食感・毒の有無・中毒症状まで』などとやたらと長い能書きがついており、「お、硬派。やる気マンマンじゃないの」と思いながらページを繰ってみると

ちょっと待てー、中身めっちゃ軟派やん。

一種類ごとにキノコを紹介していく、という体裁をとっているものの、内容はぶっちゃけ、きのこエピソード集。『ペンションきのこ』のオーナーであり、名だたるキノコ人とも古くから親交のある著者の多彩な経験談が、軽妙、というかザクザクポワッというか(意味不明)、まあそんな感じで語られていく。『見た目の特徴・発生時期…云々』は写真の下にチョロっと。これでよかったのか?ソフトバンク編集部。

ひとつひとつのエピソードもかなり内容が濃く、特にキノコ中毒体験談はゲリベンなどの描写が妙にリアル過ぎて、凄い内容となっておりますです。他にもゲロが飛び散ったり、女性にタケリタケ持たせたり、しまいには「ボクのキノコ」などと言いだしたり…もはや、やりたい放題。これでよかったのか?ソフトバンク編集部。

この本がこのようになってしまったいきさつは、前書きのところに丁寧過ぎるほどことわってあり、まあ私個人としては大いにうなずけることではあるのだが……いたずらっぽそうな笑顔の著者近影が「してやったり」という顔に見えて、妙に合点がいくのだった。

ということで、タイトルで買ってしまった人は「なんじゃこりゃー」となること請け合いの、素晴らしいきのこエッセイ集というのが偽らざるこの本の評価かと。どんな知識も経験の厚みには勝てませんなー。