『キノコ おいしい50選』 戸門秀雄
秋の風物詩、キノコ狩り。そのすそ野の広さを考えれば、もうちょっとたくさんガイドブックのようなものが出ていそうなものだが、これが意外と少ない。それもそのはず、キノコ採りにとって仲間を増やすことはすなわちライバルを増やすことに他ならないからだ。
ただ、そんな中でいきいきとした文章でキノコ狩りの雰囲気を伝える本がある。戸門秀雄 著『キノコ おいしい50選』。
著者は山菜や渓流魚の料理店を経営する、いわば職業的キノコ採り。長年の経験や多くのキノコ採りたちとのエピソードを題材に、野生キノコの中でも特においしい50種をカラー写真で紹介する。
ただの情報の寄せ集めに過ぎない並の図鑑と違って、すべて実体験にもとづくこの本のつくりは、なにやら血がかよっているように感じられ心地よい。両手にマイタケを抱えて得意げなおじさんの顔、孫を連れてナラタケを採るおばあさんの笑顔の写真などは、見ているこちらまで頬が緩む。地下たびと背負いかごのキノコ狩りルックでポーズをキメるおねーさんは、さすがに不自然すぎて私も吹きだしてしまったが、やっぱり人のぬくもりがあるというのは、いい。
文章もなかなかどうして、名文である。著者はよほどキノコ採りが好きなのだろう。ライバルを増やすという自殺行為をしてでもその楽しさを伝えたいと思うほどなのだから、文章を通してこちらにまでその喜びが伝わってくる。特に「ナメコ」や「チチタケ」「マツタケ」の項などは楽しさばかりでなく、哀愁までただよわせるみごとな出来だ。
まあ私などはキノコ狩り好適地から遠く離れたところに住んでいるうえに、撮る方がメインで採る技術がないのだから、ただもう指をくわえてうらやましがる他ない。「採る」「食べる」という、伝統あるキノコ本来の喜びを、文章を読むことでおすそ分けしてもらうってことで満足しておこう。
写真は2004年発行の新装版。2007年にこの本の増補版が発行されているらしい。同一著者による姉妹品、山菜・木の実の本もあるようだ。
秋の風物詩、キノコ狩り。そのすそ野の広さを考えれば、もうちょっとたくさんガイドブックのようなものが出ていそうなものだが、これが意外と少ない。それもそのはず、キノコ採りにとって仲間を増やすことはすなわちライバルを増やすことに他ならないからだ。
ただ、そんな中でいきいきとした文章でキノコ狩りの雰囲気を伝える本がある。戸門秀雄 著『キノコ おいしい50選』。
著者は山菜や渓流魚の料理店を経営する、いわば職業的キノコ採り。長年の経験や多くのキノコ採りたちとのエピソードを題材に、野生キノコの中でも特においしい50種をカラー写真で紹介する。
ただの情報の寄せ集めに過ぎない並の図鑑と違って、すべて実体験にもとづくこの本のつくりは、なにやら血がかよっているように感じられ心地よい。両手にマイタケを抱えて得意げなおじさんの顔、孫を連れてナラタケを採るおばあさんの笑顔の写真などは、見ているこちらまで頬が緩む。地下たびと背負いかごのキノコ狩りルックでポーズをキメるおねーさんは、さすがに不自然すぎて私も吹きだしてしまったが、やっぱり人のぬくもりがあるというのは、いい。
文章もなかなかどうして、名文である。著者はよほどキノコ採りが好きなのだろう。ライバルを増やすという自殺行為をしてでもその楽しさを伝えたいと思うほどなのだから、文章を通してこちらにまでその喜びが伝わってくる。特に「ナメコ」や「チチタケ」「マツタケ」の項などは楽しさばかりでなく、哀愁までただよわせるみごとな出来だ。
まあ私などはキノコ狩り好適地から遠く離れたところに住んでいるうえに、撮る方がメインで採る技術がないのだから、ただもう指をくわえてうらやましがる他ない。「採る」「食べる」という、伝統あるキノコ本来の喜びを、文章を読むことでおすそ分けしてもらうってことで満足しておこう。
写真は2004年発行の新装版。2007年にこの本の増補版が発行されているらしい。同一著者による姉妹品、山菜・木の実の本もあるようだ。