6人は下山を始めた。
ナラタケの前を通り、昼食をとった場所を通り、ミズナラの林を抜け、そして今日、最初に見た老ナメコの木の前を通り過ぎ……なかった。どうやらどこかで道を間違えたらしい。朝登ってきたのとは別の尾根筋を下ってしまったのだ。
気づいた時にはもう遅かった。後戻りするには時間と体力が足りない。横方向へ迂回しようにも、両側を谷筋に挟まれ渡るのは不可能。傾斜はだんだんときつくなり、進むのが厳しくなっていく。KとM、それにマニア組はわりと山猿なので、なんとでもなるのだが、山初心者のT夫妻の足もとがおぼつかなくなってきた。特にT夫人は登りでかなり筋力を使って、踏ん張りがきかなくなっているらしい。
「右手でその木をつかんで、そうそう、で、左足をその岩に!」
T旦那がしきりに指示をとばして誘導する。が、その足取りは遅々として進まない。Kの顔に少し焦りの色が浮かんできた。まだ3時半、日没まで時間はある。とにかくケガはしないように……
そして事態をいまひとつ把握していなかった私は、のんきにクロハナビラニカワタケを撮るのだった。
ナラタケの前を通り、昼食をとった場所を通り、ミズナラの林を抜け、そして今日、最初に見た老ナメコの木の前を通り過ぎ……なかった。どうやらどこかで道を間違えたらしい。朝登ってきたのとは別の尾根筋を下ってしまったのだ。
気づいた時にはもう遅かった。後戻りするには時間と体力が足りない。横方向へ迂回しようにも、両側を谷筋に挟まれ渡るのは不可能。傾斜はだんだんときつくなり、進むのが厳しくなっていく。KとM、それにマニア組はわりと山猿なので、なんとでもなるのだが、山初心者のT夫妻の足もとがおぼつかなくなってきた。特にT夫人は登りでかなり筋力を使って、踏ん張りがきかなくなっているらしい。
「右手でその木をつかんで、そうそう、で、左足をその岩に!」
T旦那がしきりに指示をとばして誘導する。が、その足取りは遅々として進まない。Kの顔に少し焦りの色が浮かんできた。まだ3時半、日没まで時間はある。とにかくケガはしないように……
そして事態をいまひとつ把握していなかった私は、のんきにクロハナビラニカワタケを撮るのだった。