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前回より続き)
さて、調理。しかし、なんてマズそうなキノコなんだろう。外見で損しすぎ。
前回、オオオニテングタケを食べた時は、慎重に慎重を重ねたのだけど、今回は普通に食べてしまうことにする。それにはいちおう根拠があって。
神経毒がなければ、それはもうただのイグチである。当たっても腹を下すか嘔吐するかでたいていの場合は回復するだろう、と。たまーに毒性の強いイグチもあって、たとえばミカワクロアミアシイグチ(仮)などはなかなか強い毒性を持つ。でも実はこのミカワクロ、
一回誤食したことがあるんだよね。あれは食べた途端に舌が痺れるのですぐにわかる。
モエギさんは、形がミカワクロさんに似てるので、仮に強い毒を持っていたらやっぱり舌が痺れるであろう、だからすぐに気付く、と。ちょっと無理があるかな?
ええい、もうゴチャゴチャ言わんと食ってしまえばいいんじゃ。
幸か不幸か、山ほど採れてしまったので鍋に山盛りにしてみた。大小取り混ぜて5本くらい。
茹だった。汁が黒く濁っている。キノコから闇が染み出した、みたいな感じ。
何はなくとも味噌汁を作ってみた。食うべし!食うべし!
……うむ。なかなかいける。
キノコが黒いせいで、合わせみそを使ったのに赤だしみたいになってしまったのはご愛敬として、かなり強い旨みを持っているのは間違いない。他のダシをいっさい使わなかったのにもかかわらず、おいしい味噌汁に仕上がっている。
けっこう煮縮みをおこしたが、歯触りはコリッとした感じがあって、そこそこの食べごたえがある。これも及第点だ。
問題は風味で、これがけっこう強く、気になると言えば気になる。どんな風味かと言われるとかなり困るが、しいて言うなら、5年前に賞味期限の切れた海鮮系インスタント味噌汁の風味?
けっして悪い風味ではないのだが、さりとて良い風味ではない。ちょっと闇世界の香りがする。なにせ緑色に黒の網目模様である。バンコクの漢方薬ショップに置いてありそうだ。それが生易しい風味であるはずがない。そんなこんなで、私はこの風味をこれから「モエギ暗黒風味」と呼びたいと思う。
ちなみに、体は何ともなかった。いたって普通のあやしいイグチであった。もちろん私が大丈夫だからと言って、安全性が保証できるものではないが、神経毒がないのは間違いなさそうである。
結果。モエギアミアシイグチは
味ランク:B(どちらかといえば美味しい)
安全かはわからんが、
少なくとも神経毒はない
でございました。これで疑いは晴れましたな……
番外編