月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

【検証】トリュフって本当に美味しいの?(大学入試編)

2022-04-27 06:52:22 | キノコ料理
トリュフの評価をまとめてみたい。

やはりトリュフの真価はそのニオイにある。味とか歯ごたえとかを楽しむキノコではない。
え?トリュフをまるまる使ったアヒージョはゴリゴリ食感が美味いって??そんなの無視!無視!

そのニオイというのは、人によって感じ方が異なるが、日本で一番ふつうに見るイボセイヨウショウロの場合
①のりの佃煮のニオイ
②ボンドのようなニオイ
③キノコっぽいニオイ

の大きく3つに分かれると思う。
①と②は料理する前から強く感じるが、スライスして実際に食べるとき強く感じるのは③である気がする。
この③のニオイが食べるときに「鼻腔をくすぐる」っていうんだろうか、鼻の裏側を通っていくのを強く感じ、これが食欲を促しているように思う。

ここで思い出してほしいのは「良いニオイも強すぎれば悪臭に感じる」ということ。これは裏返せば「悪臭も薄めれば良いニオイ」ということでもある。①のニオイはともかく、あまり良いニオイとは言えない②ですら、適度に薄まることで料理の味を高めているかもしれない。
まあ、これは良くも悪くも紙一重なので、トリュフの評価に個人差が大きいのも、このへんが1枚噛んでいる気がする。

さて今度は食材としての特徴を見てみよう。
①油や卵、チーズ、パスタ、米、みそ醤油、白身魚、豆腐、アイスなど、さまざまな食材と相性がいい
②ニオイが揮発性なので、高温調理はダメ
③ニオイが長所で、それ自体は味があまりない

②はさておき、ありふれた食材で①と③に当てはまるものが1つある。

ニンニクだ。

国籍を問わず、ありとあらゆる食材にマッチする。さほどニンニクが好きではない日本人ですら、餃子や焼肉、パスタなんかにニンニクがないとどうにも物足りないと感じてしまう。ニオイが強すぎると悪臭と感じてしまう点でもトリュフと共通だ。

だからトリュフを『キノコ界のニンニク』と考えると分かりやすいかもしれない。

料理の食味そのものを向上させるというよりは、食欲をかき立てる。味覚を狂わすと言ってもいいかも知れない。空腹が料理を美味しくするように、ニオイが料理を美味しく「感じさせる」のだ。もしかしたら一種の中毒性もあるかも知れない。
人の心を惑わすという意の言葉で「蠱惑的(こわくてき)」というのがあるが、まさしくそれにあたると思う。

ただ、ニンニクとトリュフには決定的な違いがある。

値段である。
ニンニクはスーパーで簡単に買えるし、なんなら自分で栽培だってできるが、トリュフはそうもいかない。ずっと高価だ。
もしトリュフとニンニクに同じような効果があると考えるなら、いくら希少とはいえ、トリュフに大枚をはたくのはバカバカしいことだと思う。

でも、とあるトリュフ愛好者がこう言っていた。
「われわれは、高価な食材を食べている、というその事自体にも高揚感を感じる。この高揚感、快感こそがトリュフに欠かせない、いわば最高のスパイスなのだ」と。

なるほどな・・・。
とことん「蠱惑的」な食材だねぇ、トリュフって。



【検証】トリュフって本当に美味しいの?(高3編)

2022-04-24 23:56:58 | キノコ料理
そして当日。テーブルには想像を超えた豪華なメニューが並んだ。

○ポタージュ(おろしトリュフ入り)
○冷や奴(トリュフオイル&岩塩)
○タコとホタテのカルパッチョ(トリュフオイル入り)
○チーズのトリュフ入りガレット
○トリュフ卵のスクランブルエッグ
○バターライス
○トリュフ醤油の焼きおにぎり
○バニラアイス(トリュフオイルがけ)

前菜からメイン、デザートまで、トリュフ尽くし!
和洋取り混ぜて、これは研究のしがいがあるぜ!!

さて、料理はどれも美味しかったのだけど、全部を取り上げると長くなるので、トリュフ的にインパクトのあったものを順にピックアップすることにしよう。

①トリュフ卵のスクランブルエッグ
素材にトリュフ臭が染み込んでる分、いちばんトリュフのにおいを強烈に感じたのはこれだった。卵や油と相性がいいので味も間違いがない。ただ、人によってはトリュフ臭がきつすぎるという意見もあった。良いにおいも強すぎれば悪臭と感じる。好みに合わせて卵とトリュフを閉じこめる時間を調節したほうがいいのかも。

②トリュフ醤油の焼きおにぎり
これは日本人殺しのレシピである。無意識のうちにガッツリ醤油中毒、かつダシ中毒になっているというのに、そこにさらにトリュフが加勢するのだ。まさしく邪悪と言えよう。
イメージとしてはトリュフがだし醤油の旨味や香り、ご飯の甘みやモチモチとした歯ざわりを掩護射撃する感じ。主役の能力を引き出すのがトリュフの役目だ。焼きおにぎりのような温かいメニューの方がトリュフ臭が引き立ちやすい。

③バニラアイス(トリュフオイルがけ)
冷製メニューではややトリュフの香りが後退して感じるため、どうしても温かいメニューの方が評価が高くなるが、バニラアイスは面白かった。アイスが冷たいせいで、常温のトリュフオイルが押し出されて上に立ち昇るのかもしれない。豆腐もそうだが、素材がシンプルなのでトリュフの効果がわかりやすい。
ただのアイスに較べると、味に変化と奥行きが加わるような気がする。

【検証】トリュフって本当に美味しいの??(高2編)

2022-04-12 11:30:05 | キノコ料理
トリュフパーティー開催に先立って、時短も兼ねて、いくつか簡単な仕込みをするよう指示を受けた。

1つ目はトリュフオイル。
オリーブオイルにトリュフ香りを移したものだ。
鍋にオリーブオイルとスライスしたトリュフを入れ、弱火で加熱するだけ。今回はその後に加熱していない生のトリュフとオリーブオイルを追加して、瓶に3日ほど寝かせた。作った直後はさほどでもなかったが、三日寝かせるとかなり香りが強く漂うものになった。

2つ目はトリュフ醤油。
市販の麺つゆにスライスしたトリュフを加えて香りを移しただけのもの。
トリュフと言えば洋食と考えがちだけど、じつは味噌や醤油とも相性がいい。旨みの源、アミノ酸を豊富に含むこれらの調味料は、トリュフの香りでさらに潜在能力が引き出される。
しかも今回使うのはダシたっぷりの麵つゆである。これぞキングオブ邪道。鬼に金棒。弁慶にスティンガーミサイル。

3つ目はトリュフ卵だ。
卵は殻を通して呼吸しているのをご存知だろうか。この性質と、匂いを吸着しやすいたんぱく質の性質も利用して、トリュフの香りを移した卵を作る。
作り方はとても簡単。生卵を割らずにそのままトリュフと同じ入れ物に入れて数日放置するだけ。大量生産してもトリュフが目減りしないので、コストパフォーマンスがハンパない。


ただし、生卵の表面はサルモネラ菌がついている可能性があるので、衛生面には配慮が必要だ。

トリュフは熟するにしたがって香りが変わっていく。ベストな状態で利用できるといいのだが、ケチってちまちま使っていくうちにピークを過ぎれば香りは弱くなるし、最終的にカビてダメになってしまうことも多い。こうやって香りを他の物に移すことで保存性が良くなるし、調理するときも便利で使い方の幅が広がる。

ただし、加工しても香りはやはりだんだん弱くなるし、ものによってはカビが生えたりもするので、できるだけ早めに使いきりたい。