月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

【検証】トリュフって本当に美味しいの?(高1編)

2021-12-30 12:35:57 | キノコ料理
トリュフを食べるに当たって、1つの問題があった。
家族にトリュフ嫌いがいることだ。

トリュフは冷蔵庫で保存中でも、結露などをケアしないとカビてしまうので、熟し具合の確認も含めてちょくちょく外に出す必要があるのだが、その度に「クサい!早くしまって!」と怒られる。しかもやんわりとかではない。けっこう本気の怒り方、いわゆる「マジギレ」だ。慌ててそそくさとトリュフを冷蔵庫にしまい、気まずい空気に耐えなければならない。

家族を怒らさないためにどうにかしたいが、トリュフのニオイはいかんせん強力過ぎる。せまい私の家でコトを隠密に運ぶのは困難だ。けっきょく、こそこそとひとり朝早く起きてから、換気扇を全開で回しつつ、目玉焼きの上にのせたり、卵ご飯に入れたりするのがせいぜい・・・これはかなり情けない。何が悲しくて高級食材をこんな貧乏くさい食べ方せねばならんのじゃ〜!

ここで妙案が浮かんだ。
トリュフを料理好きのキノコ先生に頼んで料理してもらおう。きのこ会の仲間も呼んでトリュフパーティーだ!(もちろんトリュフ嫌いの人は呼ばない)
確実においしいトリュフ料理が食べられるし、感想も聞ける。何より楽しそうだ。これはじつに名案。

かくして今年、再びいただくことのできたトリュフは、先生の宅に持ちこまれたのであった。【続く】

【検証】トリュフって本当に美味しいの?(中2編)

2021-12-23 16:35:12 | キノコ料理
最後の最後で何かに気づいたような気がしたものの、カビたトリュフではどうにもならない。モヤモヤとした思いだけを残して、そのままトリュフのことは忘却の中に消えていった。

再びそれが呼び起こされたのは、それから2年後のことだった。

こんどは別の菌友からトリュフが送られてきたのである。大謝謝!
小ぶりなサイズながら、今回はにおいがハンパなく強い。冷蔵庫に入れておくと庫内が佃煮臭であふれかえるほどだ。これがおそらく完熟品なのだろうと納得する。

とりあえず適当にオムレツにでもしてみた。

!!

食べてみてはっきりした。やっぱり何かが以前とは違う。
確実に「良いにおい」だと認識できるようになっているのだ。

におい自体は前回より強いものの、においの質が変わったわけではない。相変わらず佃煮臭と、ボンドっぽい化学系のにおいがする。一言で言えば「クサい」。前と同じだ。でもそれを良いにおいと感じる。その理由はおそらく・・・「自分の認識が変化したから」だろう。

たとえばウーロン茶という飲み物がある。
今でこそソフトドリンクの定番として定着しているけど、私が中学生くらいの時分には、まだ多くの人にとって未知の存在だった。私などは「お金を出してお茶を買うなんてバカバカしい」と本気で思ってたくらいだから無理もない。
それを初めて飲んだときは衝撃を受けたものだ。「ぐえ。マズいお茶!」と。
でもそれから幾度か飲むうちに、不思議と違和感がなくなり受け入れていって、今ではむしろ好きな飲み物の部類に入っている。

トリュフもこれと同じではないのだろうか。
新しい感覚を受け入れるには、ある程度の回数と時間が必要なのだ。
何回か繰り返すうちに馴染んでいき、ある時を境にして、まるでトンネルでも通じたかのようにその感覚が開発される。「慣れる」のだ。

トリュフは高級品。せいぜい祝いの席のフルコースで出てくるくらいで、普通の人はめったに口にすることがない。たまにトリュフ料理を食べるくらいでは「え、こんなもん?よくわからんわー」で終わってしまうのも無理はないかもしれない。

なるほどなー。
いや、でもこれが良いニオイだとしても、あんなに大金を積んで手に入れようとは思わんぞ。そのへんはもうちょっと掘り下げて考える必要があるかも。
【続く】

【検証】トリュフって本当に美味しいの?(中編)

2021-12-15 23:15:18 | キノコ料理
トリュフを初めて目にしたのは、4年前にさかのぼる。

菌友より贈られてきた貴重な品は、数にして4つ。サイズはなかなかの大きさだ。
まだ熟成が足りないのか、さほど香りは発していなかったので、冷蔵庫でカビないように保管しつつ熟するのを待つことにした。

すると程なくして、独特の香りを発するようになった。
一般に言われるように「海苔の佃煮」に似たにおい。それに加えて、ちょっとボンドにも似た化学薬品っぽいにおいも混ざっている。佃煮臭に比べるとこちらはあまりいいにおいとは言えず、本当にトリュフってこのにおいでいいんだろうな??食べていいのか??それともまだ熟成が足りんのか?などと疑心暗鬼にとらわれる。

ともかく、試してみることにしよう。
あまり複雑な料理はできないので、できるだけシンプルなレシピから挑戦してみた。
目玉焼き、ポテトフライ、卵かけご飯、リゾット・・・

さて、その感想は
「うーーーん??こんなもんか・・・??」

佃煮臭とボンドぽいにおいに加えて、菌臭というのか、キノコっぽい少し土くさいにおいがスライスしたことで加わった。トリュフ自体はゴリゴリした食感で、この歯ざわりに良さがあるとは思えないので、やっぱり香りがトリュフの真骨頂のはずなんだけど・・・その価値がさっぱりわからない。

熟成が足りんかったんだろうか。あるいは調理の仕方がまずいのか?それとも自分の味覚がおかしい??
SNS上で絶賛してやまない声を聞くので、そのギャップに謎は深まるばかり。

そうこうしてるうちにこの年のチャレンジは終了する。
もっと熟成したら違うのかもしれんと最後の1つを保管しつづけていたが、大して変化のないうちにカビが生えてきてしまったのだ。泣く泣く廃棄することに。あ〜あ、もったいない。

でもせめて捨てるのならと思い、トリュフが生えそうな環境の所に行って不法投棄することにした。どのみちカビてからじゃ手遅れだけどな(^_^;)

捨てる前に最後のお別れのつもりで、においを嗅いでみた。
あれ?なんか今までとは違う感覚にとらわれた。
これって・・・いいにおい??

カビがいいにおいを出してる?いや、そんな事はない。熟成してにおいが変化した?いや、それもない。でも、なんだか突然に空腹を感じてご飯が食べたくなってしまったのだ。

変化したのはトリュフのにおいじゃない。
だとしたら変わったのは・・・自分の鼻??
【続く】

【検証】トリュフって本当に美味しいの??(前編)

2021-12-09 00:01:39 | キノコ料理
長らく書こうと思って書けなかったトリュフの話。

トリュフとは、世界三大珍味の1つとされ、ヨーロッパでは日本における松茸のごとく高値で取引きされるという、アレのことだ。
ただ、日本では名前こそ知られるものの、その存在が一般に浸透しているとは言いがたかった。しかしである。黒トリュフの一種であるイボセイヨウショウロを始め、いくつかの種類がじつは日本でも産することがテレビで報じられたため、ひそかなるトリュフブームが今、静かに燃え上がり始めている、というのがキノコ界でのもっぱらのウワサなのだ。

実際にトリュフは日本でも、そこまで珍しくない、というレベルで採れるらしい。ただその分布には偏りがあって、どこでも採れるというわけではなく、それにも増して、地下に生えるという特性から、採集にはそれなりの経験と勘と根気が必要になる。私も折にふれて怪しい場所を探してはいるものの、三重はトリュフに向いた地ではないせいもあってか、まだ見つけられないでいる。

ところが!!
世の中は良くしたもので、稀にトリュフをおすそ分けしてくださる神様のような方が現れることがある。おお、はるか遠い地から後光がさしている。ありがたやありがたや・・・

さて、長い前フリはこのくらいにしておいて、本題に入ろう。

私には、素朴な疑問がある。それは、あまり大っぴらに言いづらいんだが、誰かが問わないといけない疑問だ。そう、それは・・・「トリュフって本当に美味しいの??」

たとえば、かのマツタケは日本でこそ褒め称えられて高値がついているが、欧米では「クサい」と一蹴されてしまうという。トリュフも日本人にとっては同じようなものなのではあるまいか?「高級」という言葉に踊らされているだけで、実はその価値が分からない「猫に小判」「豚にティファニー」「馬の寝床にトゥルースリーパー」なのではあるまいか??

足かけ数年にわたる検証を経て、真相がいまここに明かされる!!
【続く】