(引用)
【それにしても、この悪臭は何とかならぬものか。これでは、鋭敏すぎるニンジャ嗅覚が逆に仇となる。フジキドは軽い吐き気を催した。マツタケは高級食材であり、自生の大物ともなれば、ツキジに眠る旧世紀の未汚染冷凍マグロ並みの価格を誇る。だが、いかんせん臭い。腐った死体の臭いを放つとも言われる神秘的なきのこなのだ。
それでも日本人はマツタケの香りを好み、カンポと呼ばれるオリエンタル的薬効成分を珍重する。松の木の下に死体を埋めると、そのマツタケは美味くなるという伝説も古事記にある。】
……どこをどうしたらこうなっちゃうんだ!
それは近未来の退廃した日本を舞台にしたアメリカのSF小説・『ニンジャスレイヤー』の第二部・『キョート殺伐都市』編にあるうちの一話・『チューブド・マグロ・ライフサイクル』に描かれている。
≪あらすじ≫
妻子を殺され、全ニンジャに復讐を誓った「ニンジャを殺すニンジャ」・ニンジャスレイヤー(フジキド)。彼は、キョートを牛耳るニンジャ集団「ザイバツ・シャドーギルド」が、秘密裏に「バイオ鹿兵器計画」を進行させていることに気付き、その阻止を試みる。
それを迎え撃つザイバツのニンジャ・スカベンジャーはドトン・ジツを得意とするキノコニンジャ・クランのニンジャであった。彼は戦闘で傷つくと懐からあるキノコを取り出し、食べはじめる。すると、みるみる傷が治っていくではないか!
【一体何故、彼の傷は再生したのか?何らかのジツを使ったのか?……否。その答えはマツタケである。ニンジャにしか耐えられない特殊バイオ手術を受けたスカベンジャーは、マツタケと呼ばれる特殊なキノコを経口摂取することにより、脅威的速度で肉体再生を行える体を手にしたのだ。】
……紅葉舞い落ちるキョート山脈の山裾にある松林でスカベンジャーと戦うニンジャスレイヤー。その地の利によってスカベンジャーは優勢に戦う。
【「イヤーッ!」スカベンジャーは敵から追撃を受ける前に、落ち葉の山の中へ飛び込み、再びドトン・ジツで気配を消した。土中を高速で掘り進みながら、彼は松の木の下で手を伸ばし、マツタケを採取し、咀嚼するのだ。(((俺は無敵だ!永遠にでも戦えるぞ!)))破壊された肉体を再生しながら、スカベンジャーは敵を嘲笑った!】
……圧倒的なカラテを持つニンジャスレイヤーも、徐々に追い込まれ満身創痍、絶体絶命のピンチ!しかしここで彼を救ったのは、バイオ鹿兵器の実験台として捕らえられていた鹿たちであった!
【「ニィイイイイーッ!」「二ィ!ニィイイイイイーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「ニィイイイイイイイーッ!」広大な松林の全域に出現した鹿たちは、培養シャーレを汚染するジャームめいて一瞬で地面を覆いつくした。貪欲な彼らは最高級オーガニック・マツタケの臭いを嗅ぎつけ……喰らう!
「しまった!マツタケが!」狼狽するスカベンジャー!「イヤーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「イヤーッ!」「ニィイイイイイーッ!」スリケンを投擲して鹿の虐殺を試みるが、とうてい殺しきれる数ではない!イナゴの群れに抗うファラオのように無力だ!そこで生まれた一瞬の隙目掛けて、ニンジャスレイヤーは杭打ちめいた痛烈な低空トビゲリを仕掛ける!「イヤーッ!」「グワーッ!」】
……かくしてスカベンジャーを倒したニンジャスレイヤーは、ホーリーアニマルを兵器転用するという恐ろしい陰謀を阻止、このサツバツとしたキョートにはびこる悪の根をまたひとつ絶つことに成功した。しかし彼はそのことに決して満足などしない。彼の目的はたったひとつなのだ。そして今日もひとりつぶやく。「ニンジャ、殺すべし……!」
『ニンジャスレイヤー』 ブラッドレー・ボンド + フィリップ・N・モーゼス 著
アメリカ人二人組による、なんかいろいろ誤解の多すぎる日本観にくわえ、その本文が持つ世紀末的な世界観やリズムの良さ・安っぽさを際立たせる日本語訳が、ごくごく一部で話題になったサイバーパンク小説。
警官がジッテを持って捕り物をしたり、エレベーターで電子マイコ音声が「三階ドスエ」などと案内したり、あまりにふざけた荒唐無稽な設定は、デタラメに見せて実は緻密に計算しているようだ。なかなかバカにできない。
このマツタケの件も、「腐った死体の臭い」「死体を埋めると美味くなる」などとメチャクチャ言っているようでいて、キノコが死と近しい存在であることを見抜いているし、キノコニンジャの名・「スカベンジャー」(scavenger=ゴミをあさる人、清掃動物)も、キノコが生態系において分解者であることをきちんと知っていることを示している。
そして何より、鹿がマツタケを食べることを知っているとは!
相当のキノコ通じゃないと知らないことを知っている時点で、著者のなまなかではない知識がうかがわれる。アメリカニンジャ小説、おそるべし!
そして魅力的なキャラクター設定とリズミカルなストーリー展開!小説としてのクオリティ・完成度も予想以上に高い。映画化大希望。
ただ、第一部だけで1冊500ページ×4巻組、それが三部構成というすさまじい分量なのと、やたら残虐シーンが多いのがタマに傷。わざわざ買ってまで読むべきかというとそれは……「イヤーッ!」地中からドトン・ニンジャの奇襲攻撃!「グワーッ!」連続投擲したスリケン八枚が次々と急所に突き刺さる!そしてニンジャは灯籠の上に降り立つとアイサツを決めた。
「ドーモ、キノコスレイヤーです。トリイ=サン、ハイクを詠め!」
「アバッ、ニンジャナンデ?・・・香りマツタケ、マギ・シンジ、種も仕掛けもない、胞子ならアリマス・・・」
「イヤーッ!」「グワーッ!」ナムアミダブツ!今宵はここまで!サヨナラ!
【それにしても、この悪臭は何とかならぬものか。これでは、鋭敏すぎるニンジャ嗅覚が逆に仇となる。フジキドは軽い吐き気を催した。マツタケは高級食材であり、自生の大物ともなれば、ツキジに眠る旧世紀の未汚染冷凍マグロ並みの価格を誇る。だが、いかんせん臭い。腐った死体の臭いを放つとも言われる神秘的なきのこなのだ。
それでも日本人はマツタケの香りを好み、カンポと呼ばれるオリエンタル的薬効成分を珍重する。松の木の下に死体を埋めると、そのマツタケは美味くなるという伝説も古事記にある。】
……どこをどうしたらこうなっちゃうんだ!
それは近未来の退廃した日本を舞台にしたアメリカのSF小説・『ニンジャスレイヤー』の第二部・『キョート殺伐都市』編にあるうちの一話・『チューブド・マグロ・ライフサイクル』に描かれている。
≪あらすじ≫
妻子を殺され、全ニンジャに復讐を誓った「ニンジャを殺すニンジャ」・ニンジャスレイヤー(フジキド)。彼は、キョートを牛耳るニンジャ集団「ザイバツ・シャドーギルド」が、秘密裏に「バイオ鹿兵器計画」を進行させていることに気付き、その阻止を試みる。
それを迎え撃つザイバツのニンジャ・スカベンジャーはドトン・ジツを得意とするキノコニンジャ・クランのニンジャであった。彼は戦闘で傷つくと懐からあるキノコを取り出し、食べはじめる。すると、みるみる傷が治っていくではないか!
【一体何故、彼の傷は再生したのか?何らかのジツを使ったのか?……否。その答えはマツタケである。ニンジャにしか耐えられない特殊バイオ手術を受けたスカベンジャーは、マツタケと呼ばれる特殊なキノコを経口摂取することにより、脅威的速度で肉体再生を行える体を手にしたのだ。】
……紅葉舞い落ちるキョート山脈の山裾にある松林でスカベンジャーと戦うニンジャスレイヤー。その地の利によってスカベンジャーは優勢に戦う。
【「イヤーッ!」スカベンジャーは敵から追撃を受ける前に、落ち葉の山の中へ飛び込み、再びドトン・ジツで気配を消した。土中を高速で掘り進みながら、彼は松の木の下で手を伸ばし、マツタケを採取し、咀嚼するのだ。(((俺は無敵だ!永遠にでも戦えるぞ!)))破壊された肉体を再生しながら、スカベンジャーは敵を嘲笑った!】
……圧倒的なカラテを持つニンジャスレイヤーも、徐々に追い込まれ満身創痍、絶体絶命のピンチ!しかしここで彼を救ったのは、バイオ鹿兵器の実験台として捕らえられていた鹿たちであった!
【「ニィイイイイーッ!」「二ィ!ニィイイイイイーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「ニィイイイイイイイーッ!」広大な松林の全域に出現した鹿たちは、培養シャーレを汚染するジャームめいて一瞬で地面を覆いつくした。貪欲な彼らは最高級オーガニック・マツタケの臭いを嗅ぎつけ……喰らう!
「しまった!マツタケが!」狼狽するスカベンジャー!「イヤーッ!」「ニィイイイイイーッ!」「イヤーッ!」「ニィイイイイイーッ!」スリケンを投擲して鹿の虐殺を試みるが、とうてい殺しきれる数ではない!イナゴの群れに抗うファラオのように無力だ!そこで生まれた一瞬の隙目掛けて、ニンジャスレイヤーは杭打ちめいた痛烈な低空トビゲリを仕掛ける!「イヤーッ!」「グワーッ!」】
……かくしてスカベンジャーを倒したニンジャスレイヤーは、ホーリーアニマルを兵器転用するという恐ろしい陰謀を阻止、このサツバツとしたキョートにはびこる悪の根をまたひとつ絶つことに成功した。しかし彼はそのことに決して満足などしない。彼の目的はたったひとつなのだ。そして今日もひとりつぶやく。「ニンジャ、殺すべし……!」
『ニンジャスレイヤー』 ブラッドレー・ボンド + フィリップ・N・モーゼス 著
アメリカ人二人組による、なんかいろいろ誤解の多すぎる日本観にくわえ、その本文が持つ世紀末的な世界観やリズムの良さ・安っぽさを際立たせる日本語訳が、ごくごく一部で話題になったサイバーパンク小説。
警官がジッテを持って捕り物をしたり、エレベーターで電子マイコ音声が「三階ドスエ」などと案内したり、あまりにふざけた荒唐無稽な設定は、デタラメに見せて実は緻密に計算しているようだ。なかなかバカにできない。
このマツタケの件も、「腐った死体の臭い」「死体を埋めると美味くなる」などとメチャクチャ言っているようでいて、キノコが死と近しい存在であることを見抜いているし、キノコニンジャの名・「スカベンジャー」(scavenger=ゴミをあさる人、清掃動物)も、キノコが生態系において分解者であることをきちんと知っていることを示している。
そして何より、鹿がマツタケを食べることを知っているとは!
相当のキノコ通じゃないと知らないことを知っている時点で、著者のなまなかではない知識がうかがわれる。アメリカニンジャ小説、おそるべし!
そして魅力的なキャラクター設定とリズミカルなストーリー展開!小説としてのクオリティ・完成度も予想以上に高い。映画化大希望。
ただ、第一部だけで1冊500ページ×4巻組、それが三部構成というすさまじい分量なのと、やたら残虐シーンが多いのがタマに傷。わざわざ買ってまで読むべきかというとそれは……「イヤーッ!」地中からドトン・ニンジャの奇襲攻撃!「グワーッ!」連続投擲したスリケン八枚が次々と急所に突き刺さる!そしてニンジャは灯籠の上に降り立つとアイサツを決めた。
「ドーモ、キノコスレイヤーです。トリイ=サン、ハイクを詠め!」
「アバッ、ニンジャナンデ?・・・香りマツタケ、マギ・シンジ、種も仕掛けもない、胞子ならアリマス・・・」
「イヤーッ!」「グワーッ!」ナムアミダブツ!今宵はここまで!サヨナラ!