月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

べにやまたけ

2022-05-08 08:41:23 | キノコ創作

春山に

おき火の如し赤茸(あかなば)の

花に負けじともゆる思いは


《春の林にベニヤマタケを見つけた。その赤さは、炎をあげぬまま煌々と燃える炭のおき火のように、同じ季節に咲き誇る花たちに負けないほどの気持ちをあらわにしているものであろう。》


ベニヤマタケは鮮やかな色のものが多いアカヤマタケ属の仲間。

春から秋まで、わりと季節を選ばず発生するキノコだが、ことに九州や山口県において、春、野焼きの跡地に生えてくるものが「あかなば」と呼ばれ、古くから食卓にも饗されたようだ。

特段に美味しいというわけでもないが、長い冬を耐えた者だけがわかる喜びを味わうといった意味で、山辺に暮らすものにささやかとは言え特別な幸せを感じさせるものであったことだろう。

火のような鮮やかな赤さを食することで、我が身のうちの命の火を新たにした、そんな思いを抱かせるキノコだったかもしれない。




【検証】トリュフって本当に美味しいの?(浪人編)

2022-05-01 11:11:37 | キノコ料理
最後に、オリジナルのトリュフレシピを。

って言っても、難しいのはムリなので、可能な限り簡単なやつでいこう。
それは『目玉焼きトリュフご飯』

実はトリュフ料理の裏メニューとして「卵かけトリュフご飯」というのが有名なんだけど、これの発展版にあたる。でも侮るなかれ、卵かけご飯より断然うまいことは保証する。
ていうか、トリュフがあろうがなかろうが、普通にうまいんだよね、目玉焼きご飯。


卵かけご飯では、どうしても白身が余分な水分を運んで水っぽくなる上に、歯ごたえはないし、味の変化に乏しく、生臭さも気になる。
火を使わないで作れるのはありがたいけど、トリュフにはもったいないなぁ、というのが私の個人的な評価だ。

その点、目玉焼きは白身を固めて水っぽさを解消するのみならず、プルプルの弾力や焦げ目の香りをプラスして生臭さを軽減、さらに黄身も半熟になって味を濃厚にするメリットがある。単純に油も食味をアップさせるしね。
たったひと手間かけるだけで、ただの卵ご飯がトリュフを味わうのにふさわしい料理へと変貌を遂げるのだ。

ただし!焼き方に失敗は許されない。確実な目玉焼きを伝授しよう。

①フライパンに油をひいて中火でよく熱し、卵を落とす。
②火を弱火にして少し待つ。白身に軽く焼き目がつき、箸でつかめそうな固さになった頃合いで裏返す。
③裏返したら火を消し、そのまま少し放置する。(もし黄身をつぶしてしまったら白身が固まり次第すぐに引き上げる)
④黄身のあたりを押さえてみて、好みの硬さに仕上がったと思ったら完成。

日本では裏返すのは邪道だけど、海外ではふつうらしい。
フタが不要で時短ができる、焼き加減のコントロールもしやすく、見た目は悪いけど味がいいので両面焼きをオススメしたい。

これをご飯に乗っけて、卵が熱いうちに黄身を少しつぶしたら、その上にトリュフ醤油をかけて完成。
混ぜすぎないように混ぜながらスプーンでいただく。

もちろんトリュフ卵+しょう油で調理しても可。目玉焼きのわきで野菜を炒めて付け合わせるのもいいね。

白身のプリッとした歯ざわりや黄身のトロリとした濃厚な味をトリュフの香りが膨らませて、口の中に多様なグラデーションが広がるのを堪能できるはずだ。

シンプルの中にも奥行きを生む、これぞトリュフ料理の真骨頂と言えよう。

ニオイに慣れが必要・好みに個人差あり・ムダに高価・・・食べるにはハードルの多すぎる謎に満ちたきのこ・トリュフ。
もし運良く入手できた方は、この数々の難関をも楽しみつつ、いろいろとお試しいただきたい。