月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

むきたけ

2017-12-10 22:45:30 | キノコ
秋の代表的食用キノコのひとつ、ムキタケ。

じつは生えてるのを見るのは初めて。さして珍しくないはずだけど、わりと高冷地が好きなので三重県ではほとんど見かけんのよ。そもそも山に登るなんておっくうでねえ。山に生えるキノコって完全に未開拓分野だわ(^-^;

ムキタケはよく水を含む肉質で、キノコ鍋などに入れるとアツアツの汁をたっぷり含んでなかなか冷めない。冷まさずに口に放り込むと火傷するので、「のどやき」という別名を持つそうな。他にも各地でいろんな呼び名があるのを見ると、古くから愛されていたキノコだということがわかる。

有毒のツキヨタケとは永遠のライバル。

きくらげ栽培の真実(後編)

2017-12-05 22:14:54 | キノコ栽培
前編はこちら

さて、データで追えるだけ追ってみたけど、実情はどうなんだろう。キノコ動向に詳しい友人に聞いてみた。

友人Nは情報収集に長けた元同僚だ。今はシイタケ栽培で独立する準備のため関西にいる。久々の電話だったが、世間話もそこそこにキクラゲ栽培について聞いてみた。

N「うん、まあまあ調子いいみたいよ?」

鳥「キクラゲ生産者って多いの?」

N「いるいる。けっこう多い。このあたりは土地柄なのか障がい者雇用施設が多いんだけど、どこもかしこもキクラゲやってる。小規模でもできるし、傷みにくいから扱いやすいんじゃない?障がい者雇用でキノコ栽培っていうビジネスの元締めを商売にしてる人がいるみたい。」

鳥「そうなんだ。でもキクラゲってあんまり一般に馴染みないよね。そんなに売れるんかな?」

N「さすがに地元の農産物直売所じゃ生キクラゲは飽和状態だねー。スーパーでも大したこと売れんらしい。でもあまった分は元締めの乾物屋がぜんぶ引き取ってくれるって。値段もまあまあみたい。だから売り先に困ることは一切ないんだって」

鳥「えー!いい商売じゃんか!そんなに需要あるとは思えんけど」

N「だよねー。でね、そのキクラゲが最終的にどこで売られてんのか気になったから聞いてみたんだけど、よくわからんって。ていうか、その人はそういうことに興味ないみたい」

鳥「確かに国産の乾燥キクラゲが市販で売られてんの見んなー。どこ行ってんだろ?そりゃそうと、この際シイタケやめてキクラゲ栽培にしたら?」

N「んー、どうだろね。生産量が増え続けてるからそのうち値崩れするんじゃないかな」

鳥「まあそれはありうるねー。調子こいて増産したら値崩れって、キノコにありがちだし」

N「やっぱりシイタケにかぎるね」

鳥「あはは、さすがのシイタケ愛だね~」

まあこんな感じのやりとりだった。


国産乾燥キクラゲの売り先に関しては自分で考えてみたが、まず業務用として流通していることが予想される。中華料理店でもグレードの高い店や、あるいはホテルなど、食材にこだわる店ならば高くても国産を仕入れるだろう。中国人観光客も増えているので、思ったより出番は多いはずだ。チェーン店としては長崎ちゃんぽんの「リンガーハット」が国産食材にこだわっており、キクラゲも国産品を用いている。

他には、輸出も考えられる。調べたところ、平成28年には6.4tを輸出している。おもな輸出先はアメリカ、香港、フィリピンなど。国内生産量が約59.5tだから、その割合は10パーセント強ということになる。日本の農産物としては決して小さくない数字だ。


他にもいくつか情報を仕入れた。まとめてみよう。

キクラゲ栽培のメリット

・初期投資がかからない
・冬がメインのシイタケの裏作としてピッタリ
・暑さに強い
・キノコが丈夫で扱いがラク
・乾燥すれば日持ちがするのでストックできる

キクラゲ栽培のデメリット
①認知度が低く、特に生キクラゲでは市場価格の安定性に欠ける
②冬場に暖房をかけて栽培しようとしても見合わない
③生産量が増え続けており、値下がりの圧力が高まっている


ざっとこんなところかな。
メリットは見ての通りとして、デメリットを検討してみよう。

①は裏返せば、今後大化けする可能性があるということ。一般家庭で生キクラゲを料理に使うのが当たり前になれば、価格も安定する。

②キクラゲの栽培には温度を保つことが欠かせないが、密閉して暖房を焚きまくると、今度は酸欠の障害がでる。もちろん燃料コストもかかるので、冬場の栽培は敬遠する人が多い。ただ、施設を巨大化して空調完備の大規模施設を作れば話は違ってくる。それに見合う利益が上げられるかがポイント。九州や沖縄など、暖かい地域は有利。

③これが一番のリスク要因。需要と供給のバランスで価格は決まるから、供給量が増えれば価格は下がることになる。消費量が急激に増えることは考えづらいので将来的に価格が下がるのは間違いないだろう。零細生産者にとっては厳しい。しかし……

現在キクラゲは中国からの輸入に頼り切っている。もし何かがあって中国からのキクラゲが高騰したら、あるいは輸入がストップしてしまったら。国産キクラゲは一気に檜舞台に駆け上がることになるだろう。そしてもうひとつ、キクラゲには輸出の道がある。海外という広大な消費市場が開ければ、キクラゲ栽培の未来は明るいだろう。

【結論】
キクラゲ栽培は今後儲かる気もするし、儲からん気もする


って、何も言ってへんのと同じやんけ(´・ω・`)
でも……大規模化が進み、販売価格が低下、零細が淘汰されていく将来は見える気がする。





きくらげ栽培の真実(前編)

2017-12-02 22:14:51 | キノコ栽培
先日11月30日、NHKの番組『所さん!大変ですよ』でキクラゲの特集を放送していた。

キクラゲ栽培キットで楽しみつつ健康生活、栄養満点・ダイエットにもキクラゲが効果的、キクラゲ栽培で窮地を脱したシイタケ農家、など、最近、じわじわとキクラゲの注目度が高まっているというような内容だった。

さてここで気になったのが「キクラゲ栽培」は儲かる!という話。

番組では脱サラして菌床キクラゲ栽培を始め、今や年商一億円をあげる人の紹介があった。番組内では、キクラゲを作って売るだけではなく、キクラゲ菌床を他のキクラゲ生産者に販売したり、あるいはノウハウや施設なども提供したりすることで大きな売り上げを出している、とのことだった。

私もきのこ生産者の端くれでありながら、うかつにも最近のキクラゲ動向をぜんぜん把握してなかったので、ちょっと調べてみた。


◎キクラゲとは?
ここで言うキクラゲは主にアラゲキクラゲのことを指す。中華料理によく入っているコリコリするタイプのキクラゲだ。肉質が硬く丈夫なので、栽培から出荷まで扱いやすいのが特徴。他にもアラゲキクラゲの白色変異タイプが『白きくらげ』として売られている。また、『本きくらげ』の名でアラゲとは別種の(ノーマル)キクラゲを栽培している生産者もわずかながら存在しているようだ。こちらはプルプルとした食感を楽しむことができる。

ちなみにシロキクラゲというキノコも存在する。これはさっき出た「白きくらげ」とはまったく違い、アラゲ&ノーマルとはちょっと縁が遠い別の種類のキノコだ。こちらも栽培もできるらしいが、どのレベルまで実用化してるかは不明。さらについでに言うと中国産シロキクラゲ(銀耳)として出回ってるものはアレきっとシロキクラゲじゃないよな。ハナビラニカワタケの白いヤツって感じ。

◎アラゲキクラゲの栽培特性
ここは最も生産量の多いアラゲキクラゲ菌床栽培に的をしぼって話す。
・培養日数が短い(種菌を植えつけてから60日ほど。ちなみにシイタケだと90日以上)
・暑さに強い
・発生には高い湿度が必要

特に「暑さに強い」という強みを生かして、夏に栽培するのが一般的。秋から春までしか収穫しないシイタケ農家の裏作としてピッタリだというのが普及の大きな要因になったと思う。わりと簡単なハウスでも水をビシバシかけまくればなんとか栽培できてしまうので、初期投資にお金もかからない。

◎キクラゲの生産状況
近年、生産量を急速に伸ばしている。農水省の統計を見ると、平成22年に14.67tだった乾物キクラゲの生産量は6年後の平成28年に59.57tに、155.3tだった生キクラゲの生産量は682tに達している。いずれも4倍以上という急増ぶりだ。ただし、国内のキクラゲ供給は大半をいまだ中国からの輸入に頼っていて、その量は乾物で2350t(平成28年)と圧倒的。日本のキクラゲ消費に占める国産品の割合はいまだ5%にすぎない。

ちなみに生産地域は暑い地域が目立ち、とくに九州で多い。

◎キクラゲの消費
従来はほとんどを乾燥品に頼っていたが、近年は生キクラゲとしての流通も目立つようになり、スーパーの店頭でもよく見かける。ただ、扱いがメジャーになったかと言えば、それはやや微妙かもしれない。平成25年から27年までのわずか2年で生キクラゲの生産量が倍増しているが、翌28年に頭打ちになっているところを見ると、ひとまず落ち着いたと見るべきではなかろうか。キクラゲは生で売った方が利益率が高いけど、パッケージと販路をどうするかが悩むところだろう。

一方で乾燥品は業務用としても使われるために根強い人気。中国産は常々安全性を疑問視されているが、なにせ安いからねぇ。末端価格はネット上で調べるかぎり中国産が100gあたり200~500円、国産が1300~3000円くらい。やはり歴然とした差がある。

……後編はこちら