月刊 きのこ人

【ゲッカン・キノコビト】キノコ栽培しながらキノコ撮影を趣味とする、きのこ人のキノコな日常

『散歩道の図鑑 あした出会えるきのこ100』

2022-07-19 02:05:04 | キノコ本
『散歩道の図鑑 あした出会えるきのこ100』新井文彦 著
 
写真図鑑の老舗、山と渓谷社から新シリーズがリリース!『散歩道の図鑑』登場!
 
図鑑のシリーズとなれば、王道としては虫・鳥・魚・獣、野草に樹木と来て、あとは貝とか海洋生物、爬虫類両生類あたりが出る頃にようやくキノコも出るかな〜って感じなんだけど。
 
このシリーズでは『鳥』と『雑草の花』に次ぐ、堂々3冊目での刊行でアリマス!バチパチパチ。
 
まあ『散歩道で出会える』と銘打つ以上、海洋生物は除外だし、獣はそもそも出会わないし、って事情はあるとしても、虫や樹木に先んじての刊行はちょっと嬉しい(^_^)
 
さて、『あしたの散歩が、今日よりもっと楽しくなる』がキャッチフレーズのこのシリーズは、もっとも身近な100種類をよりすぐって掲載する、初心者専用がモットーだ。
 
右も左も分からない初心者にとっては、例えば1000種類載ってる大図鑑よりも、身近な種類にしぼりこんだ100種類の方がずっと手頃で扱いやすい。目のつけどころがさすがヤマケイやね。
 
さて内容はというと。
 
文章はキノコ写真家の新井文彦さん。
新井さんと言えば『ほぼ日』での軽妙なきのこコラムのイメージがあるんだけど、今回は意外に硬派。種類の見分け方や学術的な話などに多く紙面が割かれている。
 
これはもしかしたらシリーズ図鑑としての統一方針なのかも。しかし、説明がややこしいキノコを『初心者にわかるように、ソフトに正しく、450文字くらいで書いて!あ、もちろん面白くねっ!』って、かなりの無茶ぶりである。
 
1種類につき見開き2ページの紙幅があるとは言え、これは欲張り。新井さんも「え〜、窮屈すぎる!」とか思ったかもしれない。文章はことごとくカツカツのピッチピチだ。
 
それにしても100種類のセレクションが良い。自分が選んでも近いものになるだろうという定番のメンツばかりだ。
 
欲を言えば公園キノコのチチアワタケニオイワチチタケニョロニョロや、芝生キノコのキコガサタケシバフタケスミレホコリタケあたりが欲しかった(などと無理を言ってみる)。
それらとは別に、話題になるような派手なキノコやおいしいキノコはコラムで取り上げるなどしてバランスを取っているようだ。
 
全体として、写真の質が高いのは言うに及ばず、文章もいい。ポップな軽さこそ無いものの、初心者に理解できるように努めていることが感じられ、好感が持てる内容だ。
 
「時々キノコを見かけて気になってるんだけど、わざわざ図鑑買ってまで調べるのはちょっと・・・」という人でも、この本なら薦められるかもしれない。
 
図鑑とも言えるし読み物とも言える、その良い意味での中途半端さが取り柄の一冊だと思う。

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