水曜は東梅田教会の「出丸の会」へ。
この会そのものは約1年ぶり。
「近日息子」(呂好):△+
マクラで軽く初高座の話。
きっちり演っている。
少し父親やツッコむ側に間が空くこと、
父親が何か言う前に下手側に顔を向ける癖があるようで、少し気になる。
徐々に怒っていく中間部分もまあまあ。
父親にしても息子や町内の連中にしても、
軽く笑って見せる表情が良い演者だな。
最後に息子が出てきた時の挨拶、
特に何か面白いことを言う訳でもないのにウケたのは、
この人の良さが客に認識されていたからだろう。
「阿弥陀池」(出丸):○-
身の回りの話をいろいろ喋る。
「練習しない」話をするのはあまりプラスになるとは思えないのだが。
二番で笛を吹いた後で出てくるとか、
如何にも内輪の会、になるような気がする。
ネタは丁寧に喋っている訳ではないが、
勢いもあり、ニンにも合っていて面白い。
トチリやカミはあるが、それを蹴散らしていく。
それが出来るのは、若い頃からよく演って身に付いているからだろう。
間や表情、ちょっと出るギャグも自然に聞こえる。
「西宮をかわして」で「北口の方から」とか、
和光寺に入った時に尼さんが「新聞を読んでいて」から
アホに対して「読んでいないのはお前だけや」と返すとか。
二軒目は応対の男に気が入っているのが良い。
「米政に盗人が入った」と聞いた時に単に裏の店というだけでなく、
既に「親戚がいるのに心配」という気持ちが入っているし、
「米やん」を紹介する際に「自分の親しい人間」という気持ちが籠っている。
サゲは(襟元を掴む)枝雀ほどでなくても、
もっと怒りを出しても良いかも知れない。
「鹿政談」(文華):○+
GWに「遠足」に行くという話から奈良の話。
一度「奈良」の話から離れつつ、もう一度戻ってくるあたりが上手い。
少し乱暴な口調も含めて、客を味方に引き込む愛嬌がある人。
奈良名物の和歌から
「大仏は見るものにして尊ばず」、柱をくぐる話を少し膨らませて
「町の早起き」からネタへ。
「町の早起き」の中で鹿の話、石子詰めの話、三作の話をする構成も悪くない。
「十三鐘堂」で「明け七つと暮六つに打つ」は初めて聞いたが、
これは良い話だな。
文枝ラインだが、そこまで六兵衛さんを無闇に地で「良い人」と説明しない、
しかし六兵衛さんの描写で人の良さが分かる。
それでも地で「犬」と言うんだな。
すぐ後で否定するから構わない、という整理なのかも知れない。
「「から」を「きらず」と言い換える」をさらっと。
「割り木を投げる」も「虫の居所が悪かったのか」などの地もなく、
あっさりして聞き易い。
奉行の威厳、尤もらしさは特に強く出ている訳ではないが、
それはそれでも別に構わないと思う。
ただこのあたりは若干「助けてやりたい」地の説明が多いかな、と感じた。
確かに「奈良の掟を重々知っている」でウケ易くはなるだろうが。
「不憫じゃな」の言葉で気持ちは出ると思うので、
後は奉行の威厳を持ちつつ、
「生国」や「耄碌したか」といった質問と
思い通りに答えてくれない失望を見せる、でウケると良いと思う。
「鹿を犬と言う」を聞くと趙高の「馬鹿」を思い浮かべてしまう。
奉行が町役人に尋ねた時に「どちらでも宜しい」といきなり返すのではなく
町役人の間での「どちらでもいい、と答えようか」「あかんがな」といった
やりとりにするのは、
変化もありつつ六兵衛さんを助けたい気持ちも出ていて、良いテキスト。
「餌料横領」と奉行が思った部分の説明は、もう少し入れた方が良いかも知れない。
クドくなるのは嫌なのでバランスは難しいところだが。
河内播磨は少し文華らしい愛嬌が強く出過ぎている印象。
もう少し河内播磨を強く押さえ付けて
「が、よく見ると」の緩和でウケを取る方向に持っていった方が良いとは思うが、
まあ文華らしいといえば文華らしい。
「宿屋仇」(出丸):△+
袴の話から軽く文華をいじる。
気の合った者と旅に出る、という話からネタへ。
これは「阿弥陀池」と違い、
出丸の喋り方の雑さ、トチリやカミの多さで非常に聞きづらい。
三人連れは若さもあって、まあ良かったが、
何と言ってもニンでない侍がおさまっていないのが辛い。
この侍で雰囲気が変わらないから、手を叩く場面の転換も利かず、
なかなかウケに繋がらない。
人の良さは出ていて悪くないのだが。
兵庫の三人連れも、
「精進落とし」或いは「兵庫に帰って明日から仕事」といった
強烈な非日常の解放感がもっと欲しい。
「兵庫」の看板を背負っている、という
間違った自負をもっと出しても良いのかも知れない。
それがあるから「朝まで続くのでは」と侍も危惧するし、
さほど正当性があるとは言えない
(侍自身、宿屋に対して「約束と違う」「部屋を替えて欲しい」がメインであり、
三人に対して要求したいとは特に思っていないだろう)
「静かにして欲しい」という要求も仕方ない、と感じることになる訳で。
このあたりは確かにハメが拙かった点もあると思う。
ただそれは下座も良くないが、きちんと合わせずに高座に上がる側も悪いだろう。
このネタは、侍が日記を書いている内に大きくしていく必要があったり、
大小の制御や切るタイミングが演者によって違ったりするなど、
色々厄介な活け殺しのあるネタなのだから。
相撲や色事は、若い人間がパアパア言っている感じで悪くなかった。
「伊八」の直前には、もっと弾けていた方が良いのかも知れない。
「ありゃ嘘じゃ」のあたりは悪くないのだが、
これもその前の「切る」と言う侍の緊張感が弱いので、あまり転換が利かず、
充分なウケには繋がらなかった。
全体に不足感はあるが、
まあ、このネタを出丸が演ればこうなるだろう、という予想通りではあった。
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