▲約4分ほどの縮尺版。 馬小屋の前からの公式会見、歩さんらしい。女優・木内みどりさん いい役どころです。
このブログに再三ご登場ねがっている女装の東京大学教授安冨歩さんが東松山市の市長選に立候補した。一年ほど前から市民になったという。
というより、馬と人間との共生によって、より人間的な暮らしと自然あふれる環境をつくるという運動を続けていた。筆者は一傍観者であるので、この表現が的確でふさわしいかどうかわからない。
女装する以前から、彼の思想やものの見方に共感し、敬意を懐いていた。だから、東松山市という埼玉の小さな地方都市から、市長として立候補するというのは驚きであったし、その動機や目的はたいへん気になった。
ネットの動画で、その記者会見(1時間20分ほど)を見たが、彼女(?)の真摯な発言をきいて納得し、胸を打つことばにも感動した。
子供を中心に、弱者、性的マイノリティへの差別、暴力をくわえるもの対してたたかい対話し、東松山らしい自然豊かな環境、地元の人も気づかない伝統ある暮らしをみつめたい。そんな身近なコミュニティから、新たな市政を一から創りだしていきたい。と、力の入った所信演説ではなく、ごく普通のことばで、淡々とかたっていた。
そして、差別すること、暴力をふるうものには、絶対にノーを出していく市政をめざすという。安冨は、スイスの心理学者アリス・ミラーの考え方を紹介し、
「暴力の最高権化、その象徴としてナチスのヒットラーがいました。彼は幼児期からひどい暴力と虐待をうけていた。ドイツには、体罰を有効とする厳しい教育環境が平然としてありました。ヒットラーはまさに幼少期の暴力体験をかかえて成長した。ナチスの人種差別、暴力、侵略・戦争は、その幼児体験から育まれたものだと、ミラーは分析したそうです。それが正解ではないが、幼少期における差別・暴力は、それを受けた人間もまた繰りかえすことが知られています。そうした環境を根絶する市政をはじめたい」
と、安富歩さんは語っていた。要約だし、もっと素晴らしいことはあったのだが、この辺にしておく。
ともかく、頑張ってとエールをおくりたい。
追記:安富歩さんは残念ながら落選した。7154票を得票したとのこと。支持母体もないのに、彼の考え方に共鳴した東松山市民がこの数ほどいた。「この社会というシステムがなぜ生き辛いのか」という彼の普遍的な思想を、自分が棲む地元の市民に問いかけた。コミュニティという地場を手掛かりに行動した。それが彼らしく、独創的なところだ。まあ有給をとっての出馬だったから、当選できるとは彼自身にも確信なんてなかったのではないか。(2018・7・10記)