サッカー・ワールドカップが大盛上がり。侍ジャパンは初戦をものにし、南米の強豪コロンビアを初めて破った。日頃それほど見ないのだがTV観戦した。イェーイ!
ところで、北欧の小国アイスランドが出場して、アルゼンチン相手に善戦した。自国での視聴率が99.6%、世界中で話題になったらしい。その理由が、総人口が33万人だからというが、驚くべき数字である。
北緯63度~66度に位置し、年間の日照時間はどの国より少ない。サッカーする時間も限られるはずだ。ただ、火山国なので、厳寒期の2月でも平均気温は氷点下3度だという。同じ北欧のスウェーデン、緯度が低くくても、平均気温は氷点下20度近くだそうだ。
2008年のリーマンショックのときに、アイスランドは国家破綻したことでも知られた。時の政権が、世界の金融機関から投資マネーを集め、レバレッジをきかせて高金利で運用していたのだ。金融危機が起きたらいっぺんに破産。なんとも、最北端の小国にしては、やることなすことミステリアスである。
国民的な歌姫ビョークは、親しみのある東洋的な顔立(ヤップ系?)だが、不思議でミステリアスな魅力を放つ(今も!)。楽曲は強いメッセージ性をもち、世界どこにもいない音楽のアートを感じさせる。
以上はブログのマクラということで・・。そう、アイスランドはミステリアスな国だ。知人にすすめられて、この国のミステリーをはじめて読んだ。
アーナルデュル・インドリダソンの『湿地』である。いわゆる警察小説といわれるジャンルのミステリーでシリーズもの。『湿地』は日本語翻訳の第一作目。出版は5,6前だから多くの人が読んでいるだろう。未読の人にとっても、参考にはならないでしょうが、読後の印象記をまず。
遺伝子病をテーマにしたサスペンスフルな小説だが、アクションとスピード感のある場面展開はほとんどない。主人公たちが死に瀕する、危険な目にあうこともない。
せいぜいが不良娘(成人)への心労と、不摂生と過労、飲酒・煙草による内臓への負荷に伴う周期的な痛み。それが鈍い底知れない胸の痛みとなって感じている。
心で感じるネガティブな要因はいつか致命傷になる。取り返しがつかないことは、その時点で厄介な問題となる。
北欧特有の寒冷な気候のせいなのか、地球の辺境だけの厳しさというのか、じわじわと冷たさが忍びこんでくるような、緊張感が全編に張りつめる。文章は簡明で読みやすいのだけれど・・。
偶発の殺人事件が、謎の手掛かりをとっかかりに、陰惨な過去と結びつき明るみにされてゆく。
人口が極端に少ない国にもなんらかのメリットはある。国民の個人資料のアーカイブが充実していることだ。家系・親類の来歴、遺伝する病歴なども調べやすい。なのに、ホシに辿りつかない。
主人公の名前はエーレンデュル。50前後で心臓が悪いらしい。優れた何かがあるわけでもない。自分のカンを信じ、石にかじりついても諦めない、気骨だけが取り柄の風采の上がらない男といえる。
子どもは二人いるが、三十歳ころに離婚している。部下が二人いて、女性刑事のエリンボルク、シグルデュル=オーリという男性刑事。
(メンバー構成は、デンマークのユッシ・エーズラ・オールスンの「特捜部Q」シリーズと同じ。こちらのチームは、中東からの難民の人間味あふれるタフガイと、離人性か多重性人格を装う不思議な女性刑事。そして蛇のように獲物に喰らいつく、女と子どもには優しいボス。お蔵入りした事件ばかり捜査する特別チームの小説。スウェーデンの『ミレニアム・シリーズ』と同様に、北欧ミステリーはフィルム・ノワールの匂いが漂う。)
邦題『湿地(ミリ)』は直訳だが、この小説の主たる舞台が首都レイキャビクの「北の湿地」といわれる地域「ノルデュルミリ」から取られている。かつて湿地だった場所を埋め立てて、土地を拡張した開発地。じめじめした土地柄で、人が住むには適さない。つまりは場末でロアークラスが暮らすところだ。そこで起きた、孤独な老人の殺人事件。強盗犯人のしわざか。「おれはアイツだ」という謎のメモが残されていた。・・・だんだん深入りし、ネタバレしそうだ。
『湿地』の次回作が『緑衣の女』というタイトル。英国の乱歩賞にあたるゴールド・ダガー賞を獲った力作とのこと。オールスンも去年、新たな翻訳がでた。『ミレニアム』のTVドラマ、映画を見たが、北欧がちょっとしたマイブームになるかどうか。