再入院して1週間。クスリを替えて服用する化学療法は、危惧された副作用もなく、経過は順調といえよう。
癌そのものへの薬効はいつ頃から顕れるだろうか…。とりもなおさず、体調はいたって変わりない。どういうわけか、口周りの髭がチョボチョボ伸びはじめている。去年の入院中から全く伸びなくなり、淋しい思いをしていた。
眉毛、睫毛さえも抜け落ちて、いや、さるところのOKKさえも消失して、毛無し爺になっちまった。そこにきて白くて弱々しいが、男らしさとしての口髭が生えはじめてきた。
まだしぶとく生き残れということかな。幸いかな余命告知も受けていない。
来月に予定している沖縄旅行も、このまま副作用がなければ、めでたし実現の運びとなる。
これもあれもT大病院の先生、看護士の皆さまのお陰としかいいようがない。今回の担当医も、初めて入院した時の美しい女医さんで、この上ない嬉しさ。検査結果の的確な説明はもちろん、小生の体に変わりはないか、色々と気づかってくれる(医師としては当たり前のことか…)。
理知的な瞳と、その眼差しの優しさ。見つめられる時なんざ至上の歓びであり、根性の曲がった爺がいたく畏まっちゃう、と来たもんだ。
そうなんです。この崇拝あるいは隷従ともいえる信頼はどこから来たのか。はじめて入院した時に、こんなエピソードが実はあった。
最初の入院前、2日間にわたってCTやMRI、内視鏡を使った検体(肺の細胞を検査)があり、この日を境に目まい、立ちくらみが頻繁に起きるようになった。
そんなこんなで入院したのだが、目まいなどの症状が嘘のようになくなった。自分としては、その事が不思議だったので、担当医として初めてお会いする女医さんに、「検査の時に、私の身体に何がフィットするか、その適性を見極めるようなクスリを処方して、いただいたんですかね?」と、今となれば訳のわからないことを言った。
言下に「T大病院は処方するおクスリは、患者さんには公明正大に情報のすべてを提供しています。こちらが何かを秘匿して、クスリを処方することは絶対にありません」と言われた(だいぶ前のことで、案文していす)。
その時の屹とした矜持にあふれた眼差しは忘れない。前の記事を読み返したら、「大丈夫、私を見て」なぞと彼女がさも言ったかのような、歯の浮くようなことを書いていた。いや、無言の演技であり、目そのものでそんな台詞を語る女優をイメージしたのである。
ともあれ、患者に対しては、3人の担当医が正確な情報と説明を届ける。さらに、看護士たちからの多くのフィードバックもあって、患者の医療データは、日々蓄積されているようだ。
患者をふくめ、医療スタッフの人間模様を再構成したら、面白く緊張感のある連続医療ドラマが創られるに違いない。まあ、結構あるかな…。
人の生死の間に立って、チームワークで24時間働いている医療関係者の皆さん。入院中に限っては、もはや頭を垂れるしかあり
🔺入院の前日に早稲田に近い、戸山公園に行った時に
撮った。
🔺長明寺の枝垂れ桜。もう、満開だ。転送してもらった。