小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

『木菟(みみずく)』という古書店、見つけた。

2019年02月01日 | まち歩き

リハビリから帰る途中、石材店があったところに見慣れない看板が掲げてあった。『木菟』なる漢字が彫られた趣向ある一枚板で、どうやら古本屋さんらしい。営業は木曜日から日曜日とあり、その日は休みであったが、ちょっと覗くと奥行きがあり本がずらりと並んでいた。このわくわく感は本好きでないと分からない。

というわけで昨日、行ってきたのだが、期待以上の品揃えであった。学術書・専門書はないものの、人文社会、歴史、政治思想、文学の和洋の良書が充実している。神保町にあってもおかしくない、マニアックな垂涎の書も結構ある。新書、文庫本の類がないのは店の方針だろうが、そのぶん敷居が高くなりはしないか心配だ。

さて、アナール派の歴史書、海外文学ではみすず書房の叢書、現代企画室のラテンアメリカ文学叢書、ホロコースト・ポストコロニアル関係の翻訳書も多く、なかなか秀逸のものが揃う。日本の現代文学はというと、大江健三郎、古井由吉、中上健次はじめ60年代から80年代に旺盛だった頃の作家が多いが、その周辺の評論書も多い。辻まことや杉浦民平、武田泰淳、島尾敏雄らの家族の著作、兎にも角にも小生が関心のある作品、目を引く書籍が目白押しであった。

驚いたのは吉本隆明と村上一郎がたち上げた雑誌『試行』が創刊号から70号ぐらいまで揃いで売っていた。季刊『磁場』も・・。フェンテス、ブランショ、クレジオなどの作品も、長期に亘っての蒐集のようだ。

▲入ってすぐの棚、了解を得て写真を撮らせていただく。海外の外交・政治、社会歴史、ドキュメンタリの書籍がずらり。ナチス・ホロコースト関係の良書多し。

▲ポンティやフーコー、ポストモダンの哲学・思想家、アナール派ブローデル、コルバン、社会学のブルデュー他、壮観だ。

以上、ほんの一部でしかない。近頃ではめずらしい網羅的な古本の品揃えであり、店番をしていた奥様に話をきいたら、ご主人との蔵書を合せての店開き。弥生町から「終の棲家」を目的に、『木菟』なる古書店を昨年12月から始めたとのこと。年齢的に同世代であることがわかり、やはり読書体験や関心の領域は重なっている。

ま、しかし、谷根千エリアだけでも知っている古本屋は10店舗ほどあり、それぞれ特色はあるものの、激戦区といってもいいだろう。先日、閉店することになった『信天翁』さんのことを書いたが、本読みが少なくなりつつある今、古本の良書を求めに全国から集まる街、地域になればと願う。昔から文豪や芸術家が好んだ街だから、本を求める街散策も一興であろう。年に一度の、『一箱古本市』は今年も開催されるだろう。古本屋の各店も刺激しあって繁盛し、長く続いてほしいものだ。


『木菟』さんは、上野桜木のカヤバ珈琲、愛玉子(オーギョーチィ)という店がある通りから昔銭湯があったスカイ・バスハウスというギャラリーがある道を入った直ぐの所にある。この周辺界隈は古い木造家屋をリノベーションして、お洒落な店が次々と生まれている。

▲『バテレンの世紀』を読んだばかり。渡辺京二も揃っていた。泰淳の娘、写真家の花さんの本が10冊近くあり驚く、これは奥様の蔵書であろうか。






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