小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

トランプという言葉の響き

2017年02月01日 | 日記

 

トランプ、トランプ。右を見ても、左を向いてもトランプ。明けても、暮れてもトランプ。

見たら忘れられない、あの庇(ひさし)のような板状の金髪。怒っているのか、笑っているのか。それとも不貞腐れているのか・・。表情だけではうかがい知れない、強面の風貌。前回、トランプの就任式を絵空事として書いたが、なにか現実感が薄いのだ。私にとっては、トランプが絵空事の世界に留まってくれないかと願う。いっそのこと「不思議の国のアリス」に出てくるような、悪役の王様がいい。悪態ばかりつくが、すべてが空回りするナンセンスな王様だったらな・・。

          


しかしながら、このトランプ王は確実に世界を掻き回すに違いない。実際、100日間のハネムーンに発布できる大統領令では、早くも実害が出始めている。これからのアメリカ、日本のこと、未来を案じてしまう。言い知れない不安をおぼえるものの、どこか滑稽で異次元の出来事にもおもえる。

ひとしきり世界を撹乱し破壊し、疾風怒濤のように去ってくれないか。その後に、新たな世界が生まれる。雨降って地固まるようなブレイクスルーが来る。こんな奇妙な期待はなんだ。トランプに対して、不思議な感覚を抱くのは、どうしてだ。ある種の認知的不協和なのか、たんに私の脳が劣化したせいなのか。

そう、名前だ。トランプという名前の響きだ。この響きが耳にこびりつく。

日本ではいわゆる、トランプは遊戯・手品のカードのことをいう。

英語では単にカード。或いはプレーイング・カード。トランプという言葉の軽い響きが、遊びとか楽しさに連想されてしまう。私だけの妄想だろう。と思いながらも、アメリカの新大統領・トランプを、無知蒙昧、無教養、非常識、短絡直情型の男だと簡単に切り捨てたところで何にもならない。諦める以前に、どうにもならない。実際の彼は強かなディールで相手を打ち負かす、抜け目のない不動産王なのだ。

さて、「trump」という英語の意味には、なんと「切り札、奥の手、最後の手段、素晴らしい人、好漢」という良い意味がある。

「ほんとかっ」と思う。英語を母語とする人だったら、言葉そのものに悪い感じは持たないのではないだろうか・・。

特に、自動車や鉄鋼などの製造業で働き、過去の偉大なアメリカを築いてきた男たちにとって・・。いまや、職を失い、家屋を失い、家族が去り、手持ちの現金もなくプアホワイトと呼ばれている男たちにとって、「trump」という言葉の響きは、どんなふうに聞こえるんだろうか。無理難題を乗りこえるヒーローに想えるとしたら・・。

現実にニューヨークでは、行政の不手際で滞っていた工事や案件も、トランプが乗り込んできて、短期間・低予算でゴリゴリと解決したそうだ。「トランプは、問題を解決する切り札のような男」だという評判もあるんだそうな。「trump」という言葉の響きは、アメリカ人にどんなふうに聞こえるんだろうか。

▲「不思議の国のアリス」の8章「女王様のクロケー場」には、トランプカードを擬人化したナンセンスな世界が繰り広げられる。


さて、トランプのカードそのものは、中世のヨーロッパ世界をあらわしているという。スペードは統治者、ハートは聖職者、ダイヤは商人、クラブは農民である。それぞれの役割と徳を発揮して、国家を統治する王の元で幸せに暮らす、そんな世界を再現したプレーイング・カード。つまり、「トランプ」は切り札としてのジョーカーだろう。使い方を間違うととんでもない目に合う。

そのジョーカーが「俺がやる、俺を使え、俺を見ろ、なんとかしてやるぞ!」と言っている気がする。

さてさて、安倍首相と今月に会うらしいが、本物のトランプ大統領はどんなカードを切ってくるのだろうか。アメ車を年間で1万台買えとか、アメリカ国内での設備投資・雇用促進を何兆円規模で要求するとか。或いは、例の大統領令のパイプライン設置を、日本製品(これしかない)で無償でやってくれとか・・・。

安全保障では、思いやり予算の50%増を要求される。米軍はもう引き上げるから、防衛は勝手にやってくれ、とか(日本人が平和を真剣に考える、凄いチャンス)。

安倍首相は、毅然としたカウンタースピーチができるか。トランプが狼狽えるようなエビデンスが出せるか。言いなりになれば、それはそれで支持率は上がるだろうな。


悪い夢を見ている。なんも言えない。


▲かつらではない。正真正銘の地毛だ。彼の名誉のために。



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