秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

天女花(OOYAMARENGE)  SANE著

2007年06月04日 | Weblog
第十九章
祖谷へ
江美は、阿波池田のバス乗り物にいた。ここから、祖谷行きのバスが出ている。途中で立ち寄った、つくし園の園長さんの言葉が、嬉しかった。
「健二さんのお骨を、どこに納めれば、一番の供養になるのか、主人と悩んでいたのです。どこが、健二君の故郷なのか、解らないんです。お願いします。これは、少し気持ちです。宿代にでもして下さい」
祖谷の旅行案内は、マスターが全部揃えてくれた。健二さんが、今の私を見たら、何て言うだろう。あの泣き虫江美が、一人で?強くなったなあーなんて、少しは褒めてくれるかな。でも一緒にいてね。バスに、乗り込む。それにしても、さっきのバス券売り場の人の、機嫌が凄く悪かったことと言ったら、私がかずら橋のずっと先って、どこですか?とか、いっぱい尋ねるものだから、途中の民宿にでも泊まって、聞いたらって、神戸の人のほうが、もう少しは、きちんと対応してくれるよねー健二さん。江美の胸は、高まっていた。健二の生まれた場所に行けること。育った場所に行けることが。「江美にだけは、見せたい場所がある」健二の、あの日の言葉を、信じたい。健二に出会うまでの私に戻っただけのことなのに、今は、違う。愛されたと言う真実が、ある。心は、一人ぼっちではない。健二と、過ごした二年の日々が、これからの私の肩を、押してくれる。絆は、身体でつくれはしない。絆は、お互いの愛情のくりかえしが、重ねた時間の中で、造りあげているものなのだ。健二は、それを教えてくれた。電話でマスターが話してくれた。「瑠美ちゃん、健ちゃんに振られていたんだって。故郷のイイナズケがみつかったから、一緒に故郷に帰って、星の数数えるって」瑠美ちゃん、綺麗な女なのって、聞いたんだって。そしたら健ちゃん、何て答えたと思う?
「クシャクシャ頭の泣き虫女」