8月4日
村民一斉で、恒例の高齢による、道作りがありました。
8月の第一日曜日。道作りの日は 毎年決められています。
道作りとは、道を造ることではありません。集落の道を、整備していくことです。
草刈りと、側溝掃除がメインです。
そこで、僕が大活躍します。
そう、僕の名前は、「スコップ」
僕は、僕に触ってくれた人のココロの中の声や、人間様の様子が
全部解る 魔法のスコップです。
僕は結構、カラダはガタガタです。
それは、僕をバンバン使っている、菜菜子と言うおばさんが、乱暴に、僕を使うからです。
道作りの朝
僕は 強いチカラで、暗い車庫から お日様の中に、放り出されました。
主は 白い長袖に、ジャージ姿。 タオルを首に巻いて、麦藁帽子。
この麦藁帽子は、主様のではありません。主様の七年前まで人間だった旦那様の、麦藁帽子です。
僕の主様はオッサン化しました
ファッションとか
流行とか
全く 死語みたいです。
朝 8時前から
作業は 始まりました
おっちゃんが、いっぱい、いました。
おばちゃんは、主様と、隣の「腐った」と 自分で言っている、おばちゃんです
いっぱいいる、おっちゃんの中には、口だけを動かしながら
ただ移動しているだけのおっちゃんも、いました。
汗をかいている人。
一滴も かいていない人。
人のカラダは、いろいろです。
オッサン化した、主様は、狂ったように、必死で、僕を側溝に、叩きつけていました。
何か めちゃくちゃ 急いで 作業を終わらせたいみたいでした。
主様は 今度は 竹ほうきを握って 狂ったように、切った草を掃いていました。
僕は その間 しばらくガードレールで、もたれて休んでいました。
みんな、あんパン一個と、ジュース一本を、必死で食べていました。
半日の作業の報酬の、支給です。
暫くすると、電気屋のおっちゃんが、僕を連れて行きました。
おっちゃんは、几帳面なタイプでした。
側溝の側面の苔を、キレイに取っていました。
菜菜子さんが、おっちゃんに一喝しました。
「苔まで取らんでええよっ!そんなことに、体力使わんといて~」
おっちゃんは、
慣れない仕事のせいか、ゼェゼェ言ってました。
ドラえもんに 似ていました。
このおっちゃんの 脳内を 覗いてみました。
打ち上げの、《アルコール》のことで、溢れていました。
近所のN石土建のおっちゃんも、タオルを頭に巻いて 黙々と頑張っていました。
一輪車に側溝の泥を集めては、何回も何回も捨てにいっていました。
頭の中は、覗けなかったです。
割と 単純そうに、見えました。特に悩み事はなく…悩み事まで行き着く前に
イッパイ予定が入るから、悩んでいる暇が、ないみたいです。
菜菜子さんは、どこかで、待ち合わせがあったらしく、側溝さらいをしながら
テラオの兄さんに電話を、かけていました。
「ごめんよ~遅れる~先に行ってて~」
作業は、12時で終わりました。菜菜子さんは、それから 必死で身支度をしていました。
オッサンから
女子に 変身しなければ、いけません。
シャワーを浴びてから、独り言を 言っていました。
「時間ない~!」
「髪型、どうでもええか~」
「シャンプーする時間ない~!」
「髪の汗は、スプレーでごまかそう~」
「面倒くさ~面倒くさ~もう纏め髪にしよう~~~」
「お腹すいた~お腹すいた~~~~」
……
……
僕の主様は
きちんと身支度する時間より、集落の道作りを、第一に優先した人です
僕は そんな 主様が
一日も早く 女の子に目覚める日が来ることを、ココロから 願っています
お わ り