Kuniのウィンディ・シティへの手紙

シカゴ駐在生活を振り返りながら、帰国子女動向、日本の教育、アート、音楽、芸能、社会問題、日常生活等の情報を発信。

酒田市美術館収蔵品展にて早川俊二3作品公開中!

2019-12-07 | アート
山形県の酒田市美術館の収蔵品展が今月より始まり、パリ在住画家早川俊二氏の3作品が公開中だ。
2015年から2016年にかけての国内の巡回展のカタログの表紙にもなった代表作、「まどろむAmery-2」(2008年)と「眠るtoto-2」(2006年)「錆びた機械油差しと貝、砂糖壷」(2008年)で、早川氏の妻の早川結子氏からの寄贈。

2016年1月に酒田市美術館で開催された「早川俊二の世界 遥かな風景への旅」展は好評を博し、その縁でこの美術館に寄贈されたという。
「末永く一般の方々に観て頂きたい」という結子氏の強い希望で寄贈され、今回の作品公開が叶い、夫婦共に喜ばれている。

早川氏の作品が公開されるのは、巡回展最後の酒田展以来約4年ぶりである。
ぜひこの機会に重厚で幻想的な早川絵画の世界に足を踏み入れて、忙しい年末の中、ホッとするひと時を過ごされるのもいいのではないでしょうか。


「酒田市美術館収蔵作品展 I 新収蔵品 高橋剛・早川俊二の作品を中心に」
会期:2019年12月3日〜2020年1月24日
開館時間:9:00〜17:00 (最終入館は16:30)
休館日:月曜日 (但し祝日の場合は翌日)、12月29日〜1月3日
酒田市美術館
〒998−0055 山形県酒田市飯森山3−17−95
TEL: 0234-31-0095












パリ在住画家早川俊二氏からの近況報告〜早川氏のメールより

2019-09-03 | アート
このブログで前回早川俊二さんの近況報告を書いたら、すぐに早川さんからメールが届いたので、本人の許可を得て紹介します。

ブログ拝読しました。
僕の近況を皆様にお知らせいただきありがとうございました。
前立腺癌が発現してから、メールをお持ちの方々には随時今年の6月初めのMRI検査までお知らせをしましたが、2017年の2回目の検査で少々縮小してから、そのまま大きくならずに2年間くらい変化しませんでしたので、最後のお知らせということにさせていただきました。

実はその後8月半ばに総合血液検査がありまして、前立腺のPSA値が2ポイント下がっており、いよいよ食事療法の影響が出てきたかなと夫婦で喜び合いました。他の検査値はすこぶる良くなり、薬のたぐいはビタミンD3以外は処方されていませんでしたので、食養の影響以外に考えられません。体調の方もパリの2回の猛暑で少々夏バテになったかなという以外、ここ10数年来の中で一番良いように思います。3月に馬場さんにお会いしたとき撮ってもらった写真を見ると、どこかしらまだ病み上がりの顔をしているなと自分では思いますが、その頃に比べると体調がよく力も出てきて、一段と健康に食い込んでいると思います。

酒田市美術館に絵を所蔵していただいて、不特定多数の人々に絵を観てもらえるのは大変嬉しいことでした。
4箇所の早川俊二展の期間中に、どこの美術館で絵が見られるのかという質問がありましたので、今回それが酒田市美術館で実現でき、また札幌のHOKUBU記念絵画館に2点すでに所蔵していただいているので、少しずつですが早川絵画が知られる機会が増えて大変嬉しく思います。


「女性の像-1」(2008年)HOKUBU記念絵画館所蔵


「茶色のピッシェ」(2008年)HOKUBU記念絵画館所蔵

『月刊美術』7月号の特集も内容が良かったですね。療養中の掲載でしたので、読むと何か焦る気持ちが湧いてきますが、次回の発表を待っていただけると嬉しく思います。

さて、馬場さんの文中にある、新年に観た「ルーブル美術館のギリシャの壺」のことを少々語りたいと思いますが、何しろ文才から遠いこの頭には、言葉での表現は難しいものがあります。あのときは、「僕の残る人生はこの受けた感覚を実現できれば良いな」といたく感動をしたのです。ルーブルに行くたびに観ている壺でしたが、その時は何か天からの啓示のような衝撃的な感動でした。この感動を絵で表すのは並大抵のことでは表現出来ないだろうと思えましたが、多分この2年間の体質改造で、感受性そのものが新たな世界に入り始めたかもしれません。この世に生まれて生きている、この生命(いのち)という不思議な現象がとてつもなく尊く、そして更に何かを創造する(生みだす)という芸術の世界は、またとてつもなく不可思議ですね。 永遠の波動エネルギーを発し続けられるような絵を創造したいと強く思います。

長くなりましたが、ブログに紹介していただき感謝!

早川俊二 2019年9月2日 気持ちの良いパリの夜に

パリ在住画家早川俊二氏近況〜酒田市美術館が作品3点所蔵、『月刊美術』7月号作品掲載

2019-09-01 | アート
皆さま、大変ご無沙汰しております。少しずつ暑さが和らいでいく中、いかがお過ごしですか?こちらは夏休み3週間ほどアメリカへ行ってまいりました。またこの旅行については詳しくご報告できればと思っています。さて、久しぶりにパリ在住画家早川俊二氏の最近の動向をご報告いたします。このブログが早川さんの広報活動の一環ということで、ご本人からも了承を得て書いています。

まず、早川さんのお母様が亡くなられたため今年の3月日本に帰国されたおりに、奥様の結子さんとともに早川さんにお会いしたときのことです。 早川さんとは、2015〜16年の日本国内での巡回展以来なので、3年ぶりでした。びっくりしたのは、食事療法のため体重がかなり落ちて、顔も体もほっそり若々しくなられたことです。日本で普段会えない人々に出来るだけ多く会うため、相変らず精力的に動いていらっしゃるようでしたが、疲れを見せず、生き生きとされていました。体調が良いせいか、今後の作品への創作意欲に溢れているようでした。


銀座でのショットで『月刊美術』7月号にも掲載された。3年前の展覧会の時の重圧に満ちた暗い表情と打って変わって、明るく軽やかな表情。

2つ目の報告は早川関係者、ファンにとって嬉しいビッグニュースです。2016年の巡回展の最後の舞台となった酒田市美術館が早川作品を3点所蔵しました。結子さんが自身所蔵の3点を美術館に寄贈されたそうです。石川好館長のお話では、おりをみて展示できるようにしてくださるとのこと。2015年6月の長野展を皮切りに札幌、新潟、そして酒田へと回った「早川俊二 遥かな風景への旅」展での代表作、「まどろむAméry-2」(2008年)と早川夫妻の愛ネコを描いた「眠るtoto-2 」(2006年)と「錆びた機械油差しと貝、砂糖壷」(2008年)です。展覧会カタログの表紙にも「まどろむAméry-2」は使われています。今までは早川さんの数年おきの個展でしか作品を観れなかったのが、東北の美術館に行けば毎年あの神々しいAméryに会えるかと思うと、心踊りますね。








3つ目の報告は『月刊美術』7月号の巻頭特集「ベテラン・個性派洋画との再会 心で集める絵」で早川作品が紹介されています。代表作の「まどろむAméry-1」(2008年)が1ページにわたって大きく出ていて、最初の各作品の紹介ページには、「風景へ(コーヒー挽き、砂糖壷)」(2004年)が掲載されています。個人的に「まどろむAméry-1」は、2009年の個展でのデビューの時からお気に入りだったので、正直「やっとか!」という感じです。『月刊美術』の2011年12月号、2013年7月号、2015年6月号と、酒田市美術館所蔵の「まどろむAméry-2」が繰り返し掲載されていました。





「まどろむAméry」シリーズのこの2作はタッチが違います。「Améry-1」の方は何層にも塗り込められて生み出された独特のマチエール画面からAméryがすくっと浮かび上がってきます。Améryの顔の向かって左側の影から頭にかけて放たれる幻想的な淡いパープルの光の中で、強烈な存在感と生のエネルギーを感じます。一方「Améry-2」は、Améryがあたかも朝もやの自然の中で横たわっているかのような印象・・・・・・Améryの体全体の内から放たれる心地いい柔らかな光からゆらゆらとしたまどろみが伝わってきます。こちらはバックと同化している感じを受けます。過去あちこちで専門家によって評論・紹介されている作品二つですが、ここであえて自分の印象を再び書いてみました。   

この7月号の特集の最後の早川さんの手記には、「ヨーロッパ絵画(油彩)の膨大な量と高い質を観て、東洋人である自分に何ができるかという問題と平面絵画における時間と空間性を問い続け現在に至ります」と書かれています。

3月末の帰国の際に少しお話を伺ったので、その時の心境も報告いたします。
まず、「共生共存の豊かな意識を持つ縄文時代の心を持つ日本人として、その心をヨーロッパ的な手法の上に絵画を通して伝えたい」と強調されていました。
そして、今年1月末にルーブル美術館で見た古代ギリシャの小さな壺にも同じような共存共栄のような暖かさを感じられたそうです。「ミケランジェロもセザンヌもレンブラントもそれは時代を超えて、非常にすごいエネルギーを持っているもんです。湧き上がってくるように。それこそ僕の先生ジリが言ったように、芸術というのは太陽のように常にエネルギーを発散するものでなければいけない」と力を込めて言われました。
「時代の流れの中でモードに流れるんじゃなくて、時代を作っていくという意識でもってやっていく」ときっぱりと誇り高く言われました。
2016年の展覧会後、前立腺癌を患い、2年間絵を描くことを意識的に辞めたそうです。日々の食事療法で体調を少しずつ少しずつ時間をかけて整えていかれたそうです。「絵を描きながら病気を治すことができないことがわかっていて、体に力が入らない。前立腺癌で意識的に2年間筆を止めてた。(しかし)この2年間僕の次のステップに行くためのエネルギーを貯める時間でちょうどいい。非常にいい感じで溜まってきた。だから体の方は俄然パワーアップしてきたしね。一応70才で再出発ぐらいでいいんじゃないですかね」と楽観的に言われました。今までここまで長い間絵を描かなかったのは初めてだそうです。

3年前の日本での大きな展覧会で得た早川ファンの大きな支援を心の糧に、今後早川絵画がどのように変化して、ますます大きく開花していくのか楽しみです。


早川俊二酒田展終了!早川氏からのメールと石川館長のコラム記事から

2016-01-28 | アート
早川俊二酒田展は26日に終了。
厳しい寒さの季節にもかかわらず、地元はもとより、他県からも鑑賞者は訪れ、大成功の展覧会だったようだ。
昨日早川氏より総括メールが届いたので、お知らせします。
これで、去年の6月長野から始まり、札幌、新潟をへて、最後は雪積もる東北の酒田まで来た早川作品の日本での遥かな旅は終わったことになる。





奥様の結子さんと鑑賞者の質問に気さくに答える早川氏


皆様

昨日(1月26日)午後、羽越線で電気故障の為に20分遅れて酒田に
着きましたが、一昨日は大雪で全線運休だったと聞き驚きました。
大雪のことを知らずに、数日前は一日早めて最終日はゆっくり楽しもうかと
話していたので、来れなかったことに何か運命じみたものを感じました。

美術館にはすでに酒田展開催のきっかけを作ってくれた俵谷裕子さんが
先に来ており、飛行機でやってきたゴトウギャラリーの後藤さんと合流、
しばし展覧会の感想などを聞き、改めて長野展から始まった4箇所の
早川展は美術史上珍しいまれな展覧会であったことを確認、長野展を
立ち上げてくれた級友たちに感謝しました。

僕の絵画人生の大きなターニングポイントを作って頂き、これから更に
期待に応えられるように上り詰めるよう頑張りたいと思います。

今朝から日通の絵画専門の方の作業が流れるように運んで2時間で終わり、
後は東京からのトラックを待つだけになり、ホッとしているところです。

酒田展の入館者は1143人です。3週間の展示で実質18日間、例年のこの
季節の入場者に比べると沢山の入館者で、関係者も喜んでおられるとのこと。
担当学芸員熱海熱氏に「絵を見たくて訪れた方がほとんどなので、大成功だったと
思う」と言われました。

実際会場を訪れてみると皆さんの真剣な質問に驚き、酒田市民の民度の
高さに大変驚きました。10万強の市民に本間美術館、土門拳記念館、
酒田市美術館と「大きな美術館を維持できる酒田市民はさすが!」と思いました。
僕は入館者は600人位かなと想像していたので大変驚き、嬉しくなりました。



皆さんの応援、協賛で立ち上がった早川展ですが、早川俊二の展覧会と
いうよりも500余名の協賛者の皆様の早川展だったと思います。
本当に素晴らしい展覧会を開催して頂き有難うございました。
感謝!

早川俊二    1月27日 午後

なお、酒田市美術館の石川好館長が1月20日の荘内日報のご自身のコラムで書かれた記事で、酒田市の文化土壌の深さを語られているので、美術館の許可を得た上で写メで紹介します。もちろん早川展にも言及されています。




石川館長、1月10日竹田博志氏講演会後の懇親会にて




竹田博志氏の講演会「早川絵画にみる東洋性」~酒田市美術館にて

2016-01-12 | アート
1月10日、元日経新聞美術記者の竹田博志氏による記念講演会「早川絵画にみる東洋性」が酒田市美術館で開催された。



竹田氏は日経新聞に早川俊二氏の個展記事を1999年から5回も書いていて、同じ画家の個展記事をこんなに書くのはないんだそうだ。
最初に日経に記事がでたとき、個展会場のアスクエア神田ギャラリーの電話は1日中鳴りっぱなしだったそうで、「バイトを雇わなければならなくなったほど」と当時を振り返って、ギャラリーのオーナーの伊藤厚美氏は苦笑しながら言う。
白黒ながら、早川氏の絵力と竹田氏の惹きつける文章力とで、一気に多くの全国の読者を早川ワールドへ誘ったというわけだ。

私も若い頃アメリカの通信社の金融記者をしていたとき、日経は毎日読んでいたが、文化面もとても充実していて、いつもこちらを読むのを楽しみにしていた。恐るべし、日経新聞!

竹田氏は、今回の巡回展の契機となる長野展を開催した、早川氏の同級生による実行委員会とファンを中心とした周辺の人々の力をたたえた。
「展覧会の実行委員会は、新聞業界などが絡むのが普通で、素人の人たちが立派な展覧会をしたことに感心しています。人々を動かした早川絵画の力に感心します」と語った。


長野から駆けつけた早川氏の同級生で実行委員会のメンバーたち、コレクターでサポーターの方々、酒田市美術館関係者など



まず、自身の日経新聞の展覧会レビュー記事を紹介しながら、早川絵画の魅力を分析した。
そして、謝赫(しゃかく)という古代中国の画家が説いた絵画制作の6つの規範を紹介した。

その最初の重要な規範が「気韻生動 (きいんせいどう)」で、作品に潜んでいる「気」、つまり精神的生命感で生き生き描かれていることなんだそうだ。
はっきり断言されなかったが、「早川作品も人の心を静かに引き込んでいく」ということで、この規範を満たしていると言いたかったのかもしれない。
有名な葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」、范寛の山水画などもスライドで紹介しながら、絵から発する「気韻生動」というものを私たちに伝えた。



写真撮影もしていたので、メモを取れなくて、詳しく講演内容を伝えられないが、鑑賞者が早川絵画にスッと入っていけるのはこの「気韻」というものに関係しているんだということがわかった。

最後に竹田氏が紹介したのは、イギリスの作家オスカー・ワイルドの言葉で、「自然が芸術を模倣する」という逆説的で面白い表現。
今ちょうどイギリス文学史を大学で聴講していて、ワイルドの代表作「ドリアン・グレイの肖像」を読みながら、同性愛者だったワイルドの破滅的な生涯もたどっているので、心に刻む。




最後の部屋は白い壁で!

今回の講演会を振り返ると、竹田氏は直接的な表現はされなかったが、早川作品を観るヒントが散りばめられていたようだ。

それにしても、作品だけを真摯に観て、現存作家のしかも日本で賞など受賞していないパリ在住の作家の個展を開催した酒田市美術館の石川好館長の英断に敬服する。










林に囲まれた山形県酒田市美術館で早川俊二展を観る

2016-01-11 | アート
1月9日新幹線ときで新潟まで行き、特急いなほで日本海を眺めながら酒田へ北上する。
庄内平野の所々の田んぼに白いサギのような鳥が数十羽かたまっている。
何の鳥かと目をこらして見ると…白鳥だ!
日本にこの時期こんなに多くの白鳥が東北にとどまっているんだと感心する。

家をでて、約4時間後に酒田駅に到着し、無料の観光周遊バスで酒田市美術館へ向かう。
途中映画「おくりびと」のロケ地や酒田海鮮市場、土門拳記念館などを経由して、森林に囲まれた高台に位置する酒田市美術館に到着。

柔らかなコンクリートの1階建ての横長の建物で、正面入り口に銀色のキャノピーが風を誘い入れるように出迎え、暖かい木の塀が建物を包む。



敷地面積約3万平方メートル、施設面積約3千平方メートルという広大な敷地。



平成9年に開館した酒田市美術館は、鳥海山、最上川、市街地を一望できる小高い丘に建つので、真冬でもロビーのガラスごしに自然と調和したアートの世界に浸れる贅沢な空間を作り上げている。


ここで早川俊二にとって、初めて公共の美術館で68点もの作品が展示された大回顧展が開催している。


左から早川氏、奥様の早川結子さん、この展覧会を思い立ち、酒田市美術館に持ちかけた俵谷裕子さん

最初の入り口の廊下に初期の作品が並ぶ。
茶の模様が混じった上品なベージュの大理石の壁と、大きな石を組み合わせたような床に何層も何層も塗り重ねた分厚い硬派なマチエールをかかえる早川絵画はよく合う。

そして、水色が基調である代表作「アフリカの壺」や、同じく水色が基調の1992年の初個展に出展された「横向きのアトランティック」のように、対象の輪郭から柔らかな光を放ち、鑑賞者を優しく包み込む作品群に、何とも言えない柔らかなグレーの木の壁が向かい合い、豊かなハーモニーを成している。







「これはいいスタート!」と直感し、人物画の代表作が並ぶ第一展示室へ進み、全体を見渡す。


天井から透けて入る自然光のようなグレーの光。(自然光なのかなー)
照明によって表れる白い壁がボワ~ッとした黄色に見え、こちらも光を放つ。
グレーの床と共に作品と呼応しながら、この部屋の隅々に光が満ちていた。







2014年の最近の作品が4点並び、これらが削り取られたキャンバスの端が茶色で彩られているのを知る。
早川氏によると、理由なくわざとそうしているとか。



「透明感が一段と出たと思うんだよね。物質っていうより空気の粒子をとらえたかった。透明ながら存在感のあるのを狙ってる。普通は透明な世界って存在感ないけど…まだ(そこにいく)過程なんだ」といつになく自信たっぷりの表情で語る。
画風が変わりつつあるのはわかるが、もう一段階上がった完成作が待ち遠しい。

この部屋の向かいの廊下には、選びぬかれた人気の静物画群。
西洋の巨匠たちの静物画を思い起こすかのような気配さえ感じる。



過去の作品ながら、強靭なペインティングナイフのタッチに、相反する全体的には柔らかで透明な感覚を呼び起こし、先ほどの早川氏のコメントに納得する。

基調の茶とグレーが入り混じった地肌に、長年の努力で創り上げた独特のハヤカワホワイトや一筋のグリーンが抜群に生きている。
基調である茶とグレーに関して、「茶に代わるものはないんだよ。他の色ではいくらやってもうまくいかない。(早川絵画の) ポイントは白。白はこういう土台があるから生きる。質感の違いを利用してできている。この白は練り具合が違うから、他の人にはでないだろう」と答える。

ここまで帰りの新幹線で書いているので、ちょっと休憩します。 ~続く









パリ在住画家早川俊二酒田展へ

2016-01-09 | アート
新幹線で新潟で乗り換えて、特急いなほに乗り、山形県の酒田へ向かっています。
東北へは小さい頃仙台に住んだとき以来。
日本海見ながら、新潟で買ったイクラが大きいはらこ弁当食べてる。

昨日酒田に着いた早川さんからの連絡で、酒田は雪とのこと。
雪におおわれた酒田市美術館での早川俊二展を想像して、東北の地に足を踏み入れるのにワクワク。

年末早川俊二さんからの酒田展に向けてのメッセージがメールで届いてますので、紹介します。


皆様

昨日早川俊二酒田展の展示が無事終わりました。
6月の同級生が立ち上げてくれた長野展から企業美術館での札幌展、
由緒ある日本家屋で特殊な展示の新潟展、そしてファイナル展にふさわしい
公共美術館で初めて開催される早川俊二酒田展になりました。

4つの会場の展示がそれぞれ趣が変わっており、絵の様子がどうなるかなと
始まる前は不安でしたが、一番難しそうだった砂丘館の展示が僕の予想を
遥かに超え豊かな日本家屋に馴染んでいた作品があり感激しました。

酒田市美術館は自然に馴染むような設計になっており環境も良いし、
素晴らしい美術館です。僕の作品もそれに応えるように展示をして頂き、
ほとんど完璧な早川展になりました。

長野展が始まった時に「早川展は一つのドラマのようだ」と複数の方から
聞き、当初その意味が分かりませんでしたが、ここまで走り抜けてみると
その意味を何となく納得できるようになってきました。

酒田市は若干遠くて関東圏、関西圏にお住まいの方々には勧めにくい
のですが、お時間など余裕がある方はぜひお出でになって
早川俊二ファイナル展を観ていただきたく思います。
新潟からのローカルな羽越線がなかなか良くて汽車の旅が満喫できます。
また新鮮なお魚類がとても美味しいです。

僕らは1月8日から12日の朝まで酒田に滞在しております。
1月10日の竹田博志氏の講演にもご参加していただけると嬉しく思います。
では良いお年をお迎えください。
感謝!

早川俊二   12月28日 酒田より




肉筆浮世絵展~シカゴのウエストンコレクションが上野の森美術館で日本初公開!

2016-01-09 | アート
2016年最初の投稿です。
喪中なので新年のご挨拶は差し控えさせていただきます。
皆さま、今年もどうぞよろしくお願いします。

12月は上野の森美術館で開催中の肉筆浮世絵展に、US新聞の取材で展示替えをはさんで2回観に行ってきて、これでもかこれでもかというくらい艶やかな美人画を堪能した。





シカゴの実業家ロジャー・ウエストン氏が収集した大規模な世界有数の肉筆浮世絵コレクションが日本初公開ということで、シカゴ発のニュースとしてUS新聞の自分のコラムに書いた。
詳しくは記事を読んでください。http://usshimbun.com/column/Baba2/Baba2-7.html

この展覧会は1月17日まで開催中。
北斎、歌麿などの名作がずらり壮観な眺めだが、自分の気に入った江戸美人はこれ。


左端の藤麿の気品漂う美女と右端の岸駒のふくよかな美女

展覧会のサイトでも美人画のコンテストをやっていて、このこの2人はトップの人気。http://nikkei.exhn.jp/weston/index.php

1月前半は上野で古風な日本美人を堪能されてはいかがでしょう。

砂丘館早川俊二展記事とギャラリートークDVD

2015-12-01 | アート
新潟の砂丘館での早川俊二展は他県からもたくさんの人が観に来て、関連グッズもかなり売れたそうだ。

US新聞に新潟砂丘館での早川俊二展の記事が掲載されたので、お知らせします。
http://usshimbun.com/column/Baba2/Baba2-6.html

日本家屋に現代美術を工夫して飾るとどうなるかというところを書いた。
砂丘館を運営しているギャラリー新潟絵屋も大正時代の町屋を改装しているので、こちらも紹介。

なお、砂丘館の館長で美術評論家の大倉宏氏も早川俊二展を砂丘館のブログで紹介している。
なぜ早川作品が日本家屋の砂丘館に馴染んでいるか分析しているので、ぜひ読んでみてください。
学芸員側からの飾り方の説明も興味深い。
http://niigataeya.exblog.jp/23911532/

砂丘館が早川氏のギャラリートークのDVDを作成したので、ほしい方は購入してください。
1500円+送料だそうです。砂丘館のHPでお知らせするそうです。
砂丘館 TEL & FAX 025-222-2676 E-mail sakyukan@bz03.plala.or.jp



また、来年度の早川作品のカレンダー等もまだ購入できるそうです。
申し込みは、ブンゲイ印刷 TEL & FAX 026-268-0333








「放浪の画家ピロスマニ」の孤独~グルジア映画再公開

2015-11-22 | アート
「放浪の画家ピロスマニ」という1969年グルジアで製作された映画が岩波ホールで再公開されている。
監督はギオルギ・シャンゲラヤで、グルジア人の魂を象徴する国民的な画家を静かに描いた映画ということで国際的に高い評価を得た。



19世紀末から20世紀初頭、ピロスマニは生きている間は人とうまく折り合いをつけられず、人々からその芸術世界を理解されず、貧しく孤独のうちに亡くなった孤高の画家。
どの映画のシーンも当時のグルジアの風土や生活文化をまるでピロスマニの素朴な絵画と重なるかのように絵画のようなスケールで切り取られ、思わずショット全体を隈なく鑑賞してしまう。
ピロスマニは猫背でゆっくり歩きながら孤独の痛みを全身で表現し、カメラは真横から撮影し、一緒に動きながらその思いに静かに寄り添う。
1シーンごとの映像の残像がフラッシュバックしながら、そのたびに胸がヒリヒリして、感動の波は穏やかだ。
長い孤独な時間が独学でも国民的天才画家を生んだという皮肉。

「私の絵はグルジアには必要ない。なぜならピロスマニがいるからだ」とまでピカソに言わしめたほど、死後に評価される。
200点あまりがグルジアの国立美術館で展示され、日本では1986年に西武美術館で展覧会が開かれた。
再び展覧会が開かれたら、静かにピロスマニの心の闇を感じてみたい。